■よりみち~編集後記

 


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更新日2008/07/31


群集心理とはよく言われることだが、マーケティングの世界ではこの群集心理をいかにうまく使うかが成否を分けるということが最近よく分かった。今人気沸騰中の『花畑牧場 生キャラメル』が正にそれなのだ。この花畑牧場は北海道十勝管内にあるタレントの田中義剛氏が牛一頭からスタートさせた観光牧場なのだが、最初は地元の役場からも、酪農をやるつもりなのか単なるペットなのかはっきりして欲しいと冗談を言われるほど、採算性の乏しい観光牧場だったそうだ。最初の10年間は赤字続きでかなり厳しい現実を味わったようだが、彼の「少なく作って高く売れ」というビジネスセオリー(ソニー・マガジンズ新書『田中義剛の足し算経営革命』という本まで出版している)を忠実に守り通した結果、手作りオリジナル商品がヒットを連発し始めたのだ。その筆頭が『花畑牧場 生キャラメル』である。産地偽装問題が追い風になっていることも事実で、“手作りの安心感”を求める消費者心理にもピッタリとマッチして、さらにプレミア感を出すために販売する場所を限定していることも群集心理に火をつけたわけだ。直売するのは本拠地の花畑牧場と地元釧路のデパート、そして新千歳空港の土産物売り場、さらに今年6月からは札幌駅にある大丸デパートの地下売店を増やしたが、その4箇所でしか買えないというプレミア感を出すことに成功している。それも一人につき5個までの数量限定販売なので、先を争って行列に並ぶしか購入することができないシステムである。楽天のモールでの通販も行っているが、これまた注文時間を午前10時と午後15時、そして夜の21時の3回に分けて注文数限定、一人一日5個組1セット限定で注文を受け付けているが、ものの数分で完売となっている。
行列に並ぶのも大変だと思い、私もネットでの注文にトライしてみたが、午後21時と同時にアクセスしても、アクセスが集中してなかなかつながらず、5分後やっと注文ができたと思って購入ボタンを押すが、すでに時遅し、赤い文字で「在庫なし」がむなしく表示された。こうなると、意地でも買いたくなってくるものである。何度かトライしてやっとオンラインで注文が受け付けられ、2日後「代引き」のクール宅急便で到着(今のところ代引き注文のみで、これも売れているからリスクは引き受けないということか…)。5箱4,250円+代引手数料315円+送料700円(道内)=5,265円。早速、生キャラメルを一個口の中に放り込んでみた。「う~む、確かにうまい!」のだ。口の中で解け出す感覚が普通ではない。あっと言う間に口の中から消えて濃厚なキャラメルの余韻だけが残される。だが、送料も含めて計算してみると、1個の値段が87円を超えるのだ。1個80円以上と考えると微妙な気分になる。明治製菓の「チェルシー」をかなり濃厚にさらに柔らかく解けやすくした感覚なので、自分としてはどこでも買える「チェルシー」1箱を選ぶのかなと思える。こういう言い方は失礼なのだろうが、たかがキャラメルである。でも群集心理には逆らえない魔力があるようだ。そのたかがキャラメルでも一度は自分の舌で味わってみたくなるから怖いのだ。
この大成功によって花畑牧場の年間売上が40億円という予想から一気に60億円まで数値を伸ばしているというから、しばらくは笑いが止まらないだろう。私も含め、日本人はどうも群集心理に陥りやすい国民のように思える。特に“行列”にめっぽう弱いのである。行列ができていたら、何の行列かも知らないのに、とりあえず並んでみたくなるのはなぜなんだろう。おまけにできるだけ前の方に行きたくなるから、開店前から一番乗りを目指す人がでてくる。別に買えるなら順番など関係ないはずなのだが、早く並ぶことを目標にする人までいるようだ。今日も札幌駅の地下街入口には「生キャラメル」の行列が開店2時間前からできていることだろう。朝からホントご苦労様です。(

 

 

 

 


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