■よりみち~編集後記

■更新予定日:毎週木曜日

更新日2002/08/08

連載中の中井クニヒコ『拳銃稼業』が、サンフランシスコにたどり着いて佳境に入った。中井がシスコで修行していたGUNショップは、レイモンド・チャウの工房だったところだ。だいぶ昔の話だが、ある時、「店の大家さんは中国人の爺さんで、45.オートのシューティングコンテストに優勝したこともあるらしい」と聞き捨てならないことを彼が言うので、「名前なんていうんだッ?」と即座に聞き返した。すごい剣幕だったかもしれない。一瞬、さすがの中井もたじろいでいた。シスコで45.オートを操る中国人、そして高齢といえば「それってレイモンド・チャウじゃないの!?」と思わず叫んでしまった。 レイモンド・チャウは、西海岸で45.オートのコンテストシューターなら、知らない者はないというガン・スミス。往年には、シューティングコンテストで、何年にもわたる連続優勝を成し遂げた伝説のチャンピオンである。とはいえ若い世代は知らないかもしれない。今から20年以上は昔の話である。 彼は、素早い精密な射手というだけでなく、45.オートのカスタマイズの職人でもあった。その手にかかった無骨な軍用銃は、角という角、でっぱりというでっぱりを丸ぁるく削り取られて、軍需工場の量産品だったとは信じられないほど、美しく、優しいシルエットのチャウ・スペシャルに生まれ変わる。 クイック・ドロゥのスピードを上げるために抵抗部分を削り取るのだが、角張った部分は銃の後部に多く、角だけを均一に削ると全体の重心バランスが崩れる。そんなことにはならないチャウの技術は、神の技と呼ばれた。美しいだけでなく、銃の動作も計算されているのだという。もちろん実際に見たわけではない。大昔に雑誌でカラー特集されていたのを読んだだけなのだ。できることなら、あの美しいフォルムとガンブルーに妖しく光るチャウ・スペシャルの実物にお目にかかってみたいものだ。(KOM


やって来ました、打ち上げ花火の季節! あのドカンと腹の底まで響くような音を聞くと、小躍りしたいくらい、たまらなくワクワクしてしまう。7月末の隅田川に続いて、先週末、江戸川の花火大会を見に行った。あの「たまや~! かぎや~!」の掛け声でお馴染みの老舗・鍵屋が打ち上げを担当する本大会。メイン会場のすぐ近くに陣取っていたので、音楽や放送も楽しめた。プログラムを読み上げるアナウンスは「さあみなさん、次は毎年恒例のぶんぶんカーニバルで~す!」ってな具合で威勢がいい(しかし、ぶんぶんカーニバルってすごいネーミング…)。翌朝の首の痛みを心配しつつも、このままずーっと見ていたい、そんな気持ちになった真夏の夜だった。(瀬尾