■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2006/08/17


2001年の< 9.11>を振り返る映画作品が、あれから5年が経過した今年の夏から解禁されたように公開されている。そのうちの1本、ポール・グリーングラス監督作品「ユナイテッド93」を観てきた。あの9.11に起こった4番目のハイジャック機が墜落するまでをドキュメンタリー・タッチで描いた作品である。この機だけが目標の建物ではないペンシルバニア州のシャンクスヴィルに墜落したことを誰もが不思議に思っていたが、その後、乗客がテロリストと闘って、その目的を阻止したことを報道で知った。墜落で乗客、乗員とも全員が死亡したので実際にどのような状況でその場所に落ちたのか分からなかったのだが、今回の作品は、乗客と家族が携帯電話などで交信した記録をすべて収集し、綿密な調査によって、実際にどのような状況で墜落に至ったのかを忠実に再現しようとした作品だった。淡々とまるで本物のドキュメントのようなカメラワークで撮影されており、2001年のあの悪夢の一日のことを、あのショッキングで緊迫した時間の流れを我々に再現してくれる。我々はテレビに釘付けにされたわけだが、一方では実際にハイジャック機には乗客が乗っており、管制室や空軍の司令室にはそれを見守る係官や司令官がいたわけで、その現場にいた人たちの緊迫感が再現され、どれほど現場の人間がうろたえ、なすすべのない恐怖を味わっていたかが描かれ、二度と起きてはならない9.11事件を再確認させてくれる。もし自分がハイジャック機に乗り合わせていたなら、ユナイテッド93便の乗客のようにテロリストに立ち向かう勇気を持ち合わせていただろうか、この飛行機が自爆に利用されると分かっていても、爆弾を身体に巻きつけ、ナイフを振り回している決死の覚悟のテロリストに跳びかかることができたかなど、いろいろと考えさせられた。究極の選択を短時間で決断し、それを実行したユナイテッド93便の乗客たちに素直に賛辞を贈りたい。墜落による全員死亡という最悪の結果にはなったが、テロリストたちの本来の目的を阻止した功績はとてつもなく大きいと思える。それにしてもアルカイーダの兵士たちの自爆テロという行為は、宗教の教えというものの「危うさ」を感じる。かつての日本空軍による「神風特攻隊」と行為自体は同じなのだが、武士道的な精神とイスラム原理主義者的なジハード(聖戦)の精神とは全く違うものだと思える。なにも神風特攻隊を美化するつもりはないが、自爆した者が殉教者として天国行きが約束されているという教えは特攻隊にはなかったはずだ。但し、共通していることは「洗脳教育」であり、この手法はかなり近いようにも思える…。(

 

 

 

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