■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2005/08/25


アスベストが最近注目の的となっている。アスベストと肺がんの因果関係がニュース報道などで解説されているのを繰り返し聞かされるのだが、私にはどうしても違和感が残る。その違和感とは、「何を今さら言い始めたのか?」「なぜ今究明されたように言うのか?」ということで、正直言ってアスベスト被害の報道に愕然とした。マスメディアはなぜ今初めて分かったように報道するのか、それが違和感の一番大きい部分だ。これはたぶん医療従事者や労働衛生関連の仕事をしていた人の共通の反応ではないかと思える。実際、私の中ではアスベストのことはすでに解決済みとなっていて、過去の産物と思っていたのだ。それほど昔から騒がれていた危険物質だったわけで、はるか昔に対策が講じられているものと思っていたのである。今から20年ほど前に縁があって医療検査機関の広報セクションで仕事をしていたことがあるが、その当時、労働衛生の分野で最も深刻な話題となっていたのがこのアスベストの健康被害であり、その当時からすでに肺がんとの相関関係が指摘され、アスベストの使用禁止の活動がかなり活発に行われていたことを思い出す。過去の文献を調べてみたが、アスベストの問題はすでに昭和30年頃から指摘されており、政府系の文書でも、アスベストに関する過去の通知・通達、行政文書、研究結果として212件が記録されているほどである。特に1985年ころから国会でも政府の対応の遅れが指摘されており、当時の厚生省の反応として、「適切に対応する」という、まるで現在の小泉総理の靖国参拝問題のように、のらりくらり戦法でタライ回しにしてきたわけだ。ここまでアスベストを野放しにしてきた日本政府の責任は実に重い。アスベスト業界と政界との癒着でもあったからこれほどまでに対応が遅れたのではないかと疑ってしまう。20年も30年も対策も練らずに放置してきたことを思うと、政治家と官僚の無責任さに憤りを覚える。今ごろになって、アスベスト対策だとか健康被害だとか検診をしましょうだとか騒いで何になろうか。何の対策も練られず、20年以上の間、原因不明の肺がんで亡くなった人が不憫でならない。ところで、不憫と言えば、57年ぶりに夏の甲子園連覇を成し遂げた北海道の駒大付属苫小牧高校の野球部員である。部長が部員を数発殴った、いや何十発殴ってあごの骨がおかしくなったとかで、部員にとっては、せっかくの優勝の思い出が悪夢のようなトラウマになりそうで、将来のある彼らをなんとか救済する方法を大人どもは知恵を出し合ってなんとかよい方向にもっていくべきだと思う。間違っても優勝旗返還だとか、来年度の出場辞退だとか、馬鹿なご都合主義に振り回されない対応をしてもらいたいものである。個人的な意見としては、高校生にもなって、それも甲子園優勝校の野球部員でありながら、親がでしゃばるのを許すこの被害者である部員が一番情けなく、またいくら殴っても理解できない奴であることを見抜けなかったこの部長の責任もやはり大きいと思う。高校野球連盟の本当の意味での「適切な対応」に期待したい。(K

 

 

 

 


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