■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2006/08/31


私が「ザ・ビートルズ」というロックグループを意識し始めたのはいつごろだっただろう? 先日、受信料問題で揺れる某テレビ局のドキュメンタリーで、『ビートルズの103時間』というタイトルの40年前の1966年の来日公演の大騒動を目撃者と体験者の証言をもとに振り返る番組をたまたま観たのだが、武道館でのコンサートのシーンはニュース番組などで結構観ているが、さすがに来日公演の当時の状況までは記憶がない。小学生だった私には、「隠密剣士」や「少年ケニヤ」の方がよほど印象が残っている。その番組で知ったのだが、その当時、ビートルズは世界的に見ても常識はずれのアウトサイダーで、日本ではほとんどの大人たちからブーイングを受けていたならず者グループ(?)だったことが証言されている。今からはとても信じられないことだが、右翼の凱旋車が武道館周辺を回り、ビートルズに帰れコールをしていたわけで、時代と文化がいかに多様に変化していくものなのかが分かる。ビートルズのメンバーは厳戒態勢の中、空港からホテルへ直行し、ほとんどどこにも動けない状態で、武道館のコンサートだけで帰国したのであり、当時の日本全国の熱狂ぶりは驚くばかりだ。このような集団ヒステリー的な現象はかつてなかったし、これからもありえないだろう。それだけ、当時の若者たちは、このビートルズに大人たちには決して理解できない新しい時代の潮流のようなものを敏感に察知したのかもしれない。自分のことを振り返ってみると、私がビートルズを本当に自分のものにしたのは、皮肉にもビートルズが解散するとかしないとか、ポールとジョンの不仲説が隠しようもなくなった1969年だった。中学生になった頃にはビートルズはすでに超がつく人気バンドで、近くに住む高校のお兄ちゃんが一日中、「I WANT TO HOLD YOUR HAND (抱きしめたい)」のシングルレコードをかけまくり、近所迷惑なんのその叫ぶように歌い続けていたり、ビートルズの曲は自然と耳に入ってきていた。しかし、それほど熱狂的なファンでもなく、どちらかというと人気がありすぎて素直に好きだと言えない雰囲気があったように思える。それが、アルバム『ABBEY ROAD』(アビイ・ロード)を耳にしたとき、自分の中にあったビートルズのイメージが360度転換した。思春期の多感な少年が初めて音楽というアートに開眼した瞬間だったのかもしれない。どう表現してよいのか言葉が見つからないが、まさに稲妻に打たれた感じだった。すぐにレコード屋に直行して手に入れ、毎晩のようにヘッドフォンで夜遅くまで聴いたものだ。そこから私のロック人生が始まったようにも思える。特に、当時としては画期的だったノンストップのB面が好きだった。やっとビートルズという音楽の偉大さが分かり、その卓越された才能を理解できたときには、すでにビートルズ自体が終焉を迎えようとしていた。その後、「クリーム」や「サンタナ」、そして「ピンク・フロイド」など、多くのロックグループへ傾倒していくのだが、私にとってのロックの原点はこの衝撃を受けた『ABBEY ROAD』かもしれない。(K

 

 

■ABBEY ROAD ~1969年9月26日発売
【A面】
Come Together(カム・トゥゲザー) Something(サムシング) Maxwell's Silver Hammer(マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー) Oh! Darling(オー!ダーリン) Octopus's Garden (オクトパス・ガーデン) I Want You(She's So Heavy)(アイ・ウォント・ユー)
【B面】
Here Comes The Sun(ヒア・カムズ・ザ・サン) Because(ビコーズ) You Never Give Me Your Money(ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー) Sun King(サン・キング) Mean Mr. Mustard(ミーン・ミスター・マスタード) Polythene Pam(ポリシーン・パン) She Came In Through The Bathroom Window(シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドー)   Golden Slumbers(ゴールデン・スランバー) Carry That Weight(キャリー・ザット・ウェイト) The End(ジ・エンド) Her Majesty(ハー・マジェスティ)

 

 

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