■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2005/09/22


話題作「シンデレラマン」(ロン・ハワード監督作品)を観てきた。すごい映画で感動したことは確かだが、ショックを受けたのは1929年から始まったアメリカの大恐慌の悲惨な光景のことだった。奇跡のボクサー、ジム・ブラドックの実話を再現した感動のドラマなのだが、ストーリ-には1929年からアメリカでスタートし1933年にピークに達した世界大恐慌が絡んでくるので、その当時の惨状がかなり忠実に描かれていて、どちらかというとそちらの方に驚かされた。高校の歴史の時間などで、この「世界大恐慌」のことを勉強したはずで、1929年というのも受験用にしっかりと覚えているし、ニューヨーク、ウォール街での「暗黒の木曜日(ブラック・サースデイ)」の株式市場の大暴落のことや、1,200万人の失業者を生み出し、その失業対策として1933年にルーズヴェルト大統領のニューディール政策が開始されたことなど、歴史の教科書的には認知しているのだが、実際の惨状というのは分かっていなかったのだ。阪神大震災もTVで知っているのと、実際に現場で体験して知っているのとは大違いのように、「世界大恐慌」という言葉を知っていただけに過ぎなかったことが分かった。アメリカで1929年から1933年の4年間近くは地獄のような状態だったのだ。全労働者の4分の1の1,200万人が職を失い(失業率はなんと25%という数字である)。1万近い銀行が閉鎖され、1933年2月には全銀行が業務を停止したというから、まさにカオスの状態である。たぶん今回のハリケーン騒ぎのニューオリンズのような無政府状態が4年間以上続いていたのかもしれない。この状況を見せられると、不景気だと言って嘆く日本人は黙ってしまうだろうし、まだ電気が止められないから大丈夫という感覚は、今のアメリカ人が観てもショックを受けるはずだ。ただ、この大恐慌が第二次世界大戦など、国際紛争の火種になっていったわけで、人間本当に貧しくなれば戦争を起こしてでも豊かになろうとする生き物のようで、大不況の次にやってくるのは世界大戦という図式だけは過去の遺物にして欲しいものだ。ニューヨークのセントラルパークが大恐慌時代には失業者の掘立小屋で占拠されたフーヴァー村になっていたというすごい光景にもショックを受けた。ジム・ブラドック役のラッセル・クロウは、文句なく素晴らしい演技だったのだが、「グラディエーター」で見せたマッチョな雰囲気が伝わらずちょっと物足りなさを感じた(これも計算されたものだろうけれど…)。ボクサーの女房役のレネー・ゼルウィガーの演技も光っていたが、個人的には「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズのファンなので、おとぼけレネーの方が好きである。奇跡のボクサーの立役者であるマネージャーのジョー・グールド役を演じたポール・ジアマッティは、とてもユニークなキャラクターだ。あの顔は一度見たら忘れないはずだ。私の場合はどうしても「アメリカン・スプレンダー」のさえない主人公役のジアマッティの印象が強いが、どんな役もこなせる個性派俳優であり、脇役としてさらに声がかかってきそうだ。(

 

 

 

 


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