■よりみち~編集後記

 


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更新日2003/10/09


ベネチア国際映画祭で監督賞など4賞を受賞し、トロント国際映画祭でも観客賞を受賞した北野武監督作品『座頭市』を先日観てきた。ビートたけしの映画はほとんど観てきたが(もう11作目だ。すごい)、今回の『座頭市』は最初から正直あまり気乗りしない作品だった。どうしてもビートたけしというと『その男、凶暴につき』の不条理バイオレンスのイメージが強く、やはり衝撃が強かった作品だけに、それと比較してしまうのだ。まったく期待せずにとりあえず映画館に出かけた。もちろん、北野監督が勝新太郎のはまり役の座頭市を演じるのだから、なにか仕掛けかどんでん返しの用意があって、たけし流の座頭市を作り上げているのだろうという想像はしていたのだが、実際に観て、さすがに色々考えている人だなと感心する部分が多かった。まずは音楽である。時代劇にとてもモダンな曲を斬新に使っていて驚かされた。それもそのはず、ムーンライダーズの鈴木慶一が全面プロデュースしていたのだ。へ~えである。鈴木慶一が時代劇をアレンジするとこうなちゃうのというミスマッチの面白さがあった。衣装もなかなかうまいなと思っていたら、これもY'sの山本耀司が監修していた(『Brother』や『Dolls』も担当してたね)。TVの予告編に出てくる時代劇の中に出てくるタップダンスも北野監督らしい発想だ。予告編では違和感があったが、実際のシーンではそれなりに納得させてしまうというのは、演出の力なのだろうか。今回の作品はエンターテイメントに徹していただけに、各所に色んな冒険をちりばめていることが分かる。ちょっと無理な部分もあったが、その新しい冒険は気持ちがよかった。たけしがやると時代劇もこうなるのねという楽しさがあった。たぶん一番力を入れていたのは、殺陣とそのCG処理なのだろうと思えるが、目にも止まらぬ居合抜きの達人を見事に演出している。それはかなり劇画チックで、リアルを通り越して、スーパー座頭市になっているわけで、勝新とは全く違って面白いのだが、外国人を意識しすぎた演出のようにも思えた。北野監督は最初から日本だけでなく、海外で日本をどう見せるかをかなり意識して作品をつくりあげている。今回の作品は日本よりも海外での評価の方を意識していることは間違いないだろう。その意味では、ちょっとやりすぎで、見え見えの部分がありすぎる感じもした。これだけ話題になった作品だけに、次回の作品はどんな冒険をしてくれるのか楽しみでもあり、ちょっと怖くもある。それにしてもたけし軍団使いすぎてない?(