■よりみち~編集後記

■更新予定日:毎週木曜日


更新日2002/10/17

朝日新聞の主催で開催されている、「本田宗一郎と井深大展」へと足を運んだ。日本が誇る大企業、世界のHONDA、世界のSONYの創始者の生涯、そしてそれぞれの企業の歴史を当時の貴重な資料や実物とともに堪能できるとあって、土曜の江戸東京博物館は大盛況。まるで祭りか花火大会か、芋洗い状態の会場は熱気で汗をかくほどだ。試作品、失敗作、発売したはいいが売れば売れるほどクレームがくる商品。SONYを世界に知らしめたトランジスタラジオ。技術の結集は評価されたものの、需要がなく売れなかった車。フライパンとしゃもじ、電熱コンロで作られたオーディオテープ。いろいろと思うことはあったのだが、総括するに、今の日本に足りないのは何かを目指そうとする情熱だなと。それを求めてこれだけたくさんの人が両国に集まったのだなと。時代はスローライフに偏りつつある今。でも人間は、やはり情熱を傾けられる何かを求めているのだなと。人の情熱でもいいから、熱い心意気に触れたいのだと。つまりは欲張りなんだなぁ(といいつつ私もな…)。(北村


先日久々に友人と千葉でキャンプすることになって、スーパーに買出しに出かけた。雨の心配があったので雨具を見ようと、そのスーパーの2階に上がったところ、かなり広いフロア全体が100円ショップだった。スーパーにある商品で生鮮食料品以外のほとんどが揃っていた。オジ族としてはめったに足を踏み入れない領域のため、正直、その品揃えに唖然とした。そして驚きながらだんだん考え込んでしまった。なぜ100円で十数曲ちゃんと録音されている音楽CDが売れるのか、どうやって100円の包丁が、それも一応それなりに切れそうな包丁を作れるのか、利益をどこで出しているのか、まさか慈善事業ではあるまいし…。もちろん私も100円ショップは何度か入ったことはあるが、最近の商品のクオリティーの高さはちょっと異常(?)と言ってよい。ひょっとしてヤケになっているのではと思えるほど、“持ってけ、ドロボウ!”状態に思えた。ほとんどが中国製品だから安くて当たり前ということも分かるのだが、中国からの運賃や手数料など日本的なまともな感覚ではどう考えてもコスト的にはあり得ない。この謎が一昨日深夜TVを見ていてちょっと分かった感じがした。中国の技術革新と貪欲な市場開拓のスピードの速さがとにかくすごいのだ。番組の内容は中国の自動車産業の話だったが、外資の導入を解禁以来、外国の技術を徹底的に取り込み、それを改良し、コストを下げ、すべてを自国製品化しようと必死で戦っている姿が描かれていた。まるでどこかで見た風景だった。戦後日本の高度成長の時代のような活気なのだ。嬉々としてクライアントからの難題に取り組む中国人。どこかでいつの間にか日本人と中国人が入れ替わったようだ。すでに広州ホンダの中国製部品の割合は60%にまで達しており、今年は75%まで中国化が進むそうだ。コストの高い日本製を取り寄せるより、品質がさらによい部品が、べらぼうに安い価格で手に入るのだから、使わない方がどうかしている。かつては日本製品がそうであったように、今は“安くて品質がよいもの”はすべて中国製になってきているようだ。世界一をめざす中国。そのおこぼれを貰って生きる日本…。日本の復権はあるのか…? ホンダの技術者も「驚異だ!」と言いながらも、安くて品質のよい中国製部品を喜んで使うように、私も「異常だ!」と言いながらも、100円のレインコートと傘を持っていそいそとレジ前に並んでいた。(