■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2005/11/10


「パリが燃えている…」。アフリカやアラブ系住民の若者による暴動はついに非常事態法が発令され、仏本土96県のうち5県で夜間外出禁止令が出される事態にまで発展している。これは19世紀の話ではなく、まさに現時点の話なのだから怖ろしい。一説にはサルコジ内相の「社会のクズを片づける」という発言が暴動に油を注いだとされている。非常事態法の発動で暴動の沈静化しているように見えるが、根底にはフランスの移民政策の不満や不況による失業の問題があるわけで、いくら若者のご機嫌取りの政策を並べ立てても、根本的な問題解決にはなりそうもない。隣国のベルギーやドイツへ問題が波及していく可能性も大きく、今後の動向がとても気になる。ヨーロッパの繁栄が、アラブ、アフリカなどの旧植民地からの安価な労働力があってこそ実現できたわけで、イギリス、フランスはもちろん、ドイツではトルコやスペインの出稼ぎ労働者によって安い労働力が確保されてきた。安価な労働力を確保するために異民族を受け入れ、同化政策により準市民化して出稼ぎ労働者を繋ぎとめ、いつの間にか民族のアイデンティティまでも骨抜きにして祖国に戻れない民族を作り出してしまったようだ。このことは先進諸国と言われるほとんどの国々が抱えている問題でもある。日本における日系ブラジル人やアジア諸国の出稼ぎ労働者にも同じような現象が起こっている。経済的な問題を抱えて日本にやってきて、自国の家族を助けるためにせっせと送金していたのが、結局は日本に家族を呼び寄せ、一家で日本に定住してしまうケースや、お金を貯めるために日本にきた若者が、いつの間にか生活の場として日本を選ぶようになったケースなど、自由の国なのだから住む場所を選ぶのも自由ではあるのだが、不安定な移民の子供として差別や区別を経験するはめになる二世や三世たちは、選んでその国に生まれてきたわけではないのだ。自分たちのルーツや文化にあこがれながらも生まれた国の国民として宙ぶらりんの状態で常に揺れ動く不安定で屈折した青春時代を過ごしているに違いない。だから、せめて民族のアイデンティティやその民族固有の文化などを尊重し、その心を無視しない教育を目指すべきであり、相互理解の輪を広げていくことしか平和の道はないように思える。「社会のクズ……」と発言した政治家が今後どうなっていくかもしっかりと見守っていく必要がありそうだ。(

 

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO