■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2008/12/18


NHKのBSでやっていた『証言でつづる現代史 中国 改革開放はこうして始まった』をたまたま観ていて、いかに中国のことや革命の父であった毛沢東のことを知らないかが分った。中国の文化大革命の時代に学生だった人や紅衛兵運動に参加した農民や少年少女、そして自己批判させられた富裕階級の人たちなどへの長時間にわたるインタビューから、当時の異常な社会現象や政治腐敗などを露呈させる貴重なドキュメンタリー番組だった。観ていて真っ先に感じたのは、これはそのまま今の北朝鮮の状態ではないかというだった。1960年代に毛沢東思想を権威として暴走した紅衛兵運動の時代を、北朝鮮はまだ現在も存続させている感じがした。当時のアジテーションなどの録音が残されており、たとえば毛沢東の四番目の夫人であった江青の演説などは、とても政治指導者とは思えない恫喝の連続で、当時の異様な社会状態でなければ、聞くに堪えない滅茶苦茶のものだった。日本のオウム真理教の革命思想も、この毛沢東の文化大革命の手法からヒントを多分に取り入れているように思える。無知で従順な少年少女を扇動し、学生たちを洗脳して革命が実際に起こっているわけで、誰もが被害者になる可能性があり、誰もが自己批判させられる恐怖政治がそこにあったようだ。自分の身を守るために両親や兄弟を密告したり、告発したりすることは日常茶飯事だったようで、完全に人間性が壊れている状態であの革命という名の社会のリセット行為が進行していたようだ。まあ、冷静に考えると確かに天と地を逆転させる思想なのだから、まともな状態では無理だったはずだ。知識のあるもの、富を持つものが最下層となり、何も持たない教育を受けていない農民が最上級の階級になったわけだから、生き残るためには肉親までも犠牲にするしかなかったのだ。現代のちょっと西欧にかぶれ、自由主義経済を邁進する中国と切れ目なく続いていることがとても不思議であるが、中国の根本にはこの紅衛兵運動のような共産思想の熱い血潮が流れていることを忘れてはならないようだ。またいつか修正主義が復活してリセット状態にしようと言い出す思想家がでないとは限らない国なのだから。チベット問題や農村と都市との格差問題など、近代中国の課題は果てしなく多く、矛盾だらけの中国共産党はこれからどう舵をとりながら、文化大革命を正当化していくのか、日本も大変な政治状況ではあるものの、中国に比べたらまだましな感じがしてきた。いずれにせよ、中国って国はすごい国であることを再認識させられたドキュメンタリーであった。(K

 

 


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