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■よりみち~編集後記
更新日2019/06/13




また香港が揺れ始めている。ただ今回の事件は中国政府にとって、国際社会、特に覇権国アメリカに対しての大きな賭けともなりそうな雰囲気が出てきている。香港における一国二制度の流れは、1984年12月19日に中英連合声明が発表されたことから始まっている。イギリスは1997年7月1日に香港の主権を中国に返還し、香港は中国の『特別行政区』となることが明らかにされた。その声明の目玉政策が中国政府は鄧小平が提示した一国二制度(一国両制)であり、社会主義政策を将来50年間(2047年まで)、香港で実施しないことを約束したのである。それがまだ13年しか経過していない現在、一国二制度は全く形骸化して、中国政府主導の中国本土化が実施されようとしている。返還後の1997年以来、香港市民の抗議運動はたびたび行われており、2003年には50万人が参加したデモで安全保障法案が却下され、普通選挙権を求めるデモや天安門事件の追悼集会は毎年の恒例行事となっているが、年々中国政府からの締め付けが厳しくなっていた。2014年、行政長官の普通選挙を求める学生を中心とした香港市民が催涙スプレーを防御するために雨傘を使用し、無抵抗主義を貫いた反政府デモは、別名、雨傘運動と呼ばれ、「オキュパイ・セントラル(中環を占拠せよ)」を合言葉に)は数週間にわたって続き、香港人が自分たちで行政官を決める権利を求めていることが浮き彫りになった。しかし中国政府からの譲歩はなく、デモ隊は強制排除され失敗に終わっている。

今回(2019年6月12日~)の反政府デモは、香港の犯罪容疑者を中国本土に引き渡す「逃亡犯条例」改正に反対する抗議デモであり、香港市民の7人に1人にあたる100万人が集結したとされている。それに対して、香港政府のトップは、「組織的な暴動だ」と強く非難して、警官隊にゴム弾や催涙ガスを使って強制排除を指示、多数のケガ人が発生、翌日も若者と警官隊との衝突も相次いで、混乱がさらに継続する可能性も出ている。香港政府トップの林鄭月娥(りんていげつが)行政長官は、逃亡犯条例の改正案の審議を取りやめたが、中国政府の強硬姿勢は崩しておらず、強行採決の可能性もあり得そうだ。この中国政府の香港に対する締め付けの強化は、米国との覇権争いの道具とする動きがあると言われており、米国との関税引き上げ戦争がチキンレース化している中、香港の中国化を推進することで、関税の安い香港を中国本土化し、米国に揺さぶりをかけているというのだ。こうなると、2047年までは本土化しないとの約束は破られ、もう完全に一国二制度なんて夢物語状態で、完全に中国併合化に向けてまっしぐらです。ウソで騙され移民の道を選ばなかった香港市民は再度その選択を迫られる結果になりそうだ。恐ろしいことです。そして、さらにはその本土化の波が台湾にもやってきそうだから、隣国の日本としてはとてもヤバイ話になるのだ。あと数十年という話ではなく、すぐにでも始めそうな勢いが今の習近平政権にはあり、国内問題の話題そらしにもこの本土化政策の大転換が利用されている可能性がある。今後、中国の動向から目が離せなくなりそうだ。(越)

 

 

 


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