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■映画『エディントンへようこそ』(監督・脚本:アリ・アスター)を観てきた。何とも後味の良くない、気持ちが滅入る映画だったのだが、よく考えてみると、現実の世界を突き付けられた感じで、実はこの現実が不快なのであって、映画はそれをデフォルメしているだけだと思い始めた。コロナ禍の時代も嫌な思い出として記憶されているようだ。それにしても、陰謀論って底なしの怖さを感じます。
映画『エディントンへようこそ』(原題: Eddington:監督・脚本:アリ・アスター;2025年)
https://youtu.be/AeNYN0hJmBI?si=o-7EzIFk9vdMJDTi
■この映画のストーリーの舞台は2020年、隣接する村がインディアン居住区でもあるニューメキシコ州の小さな町、エディントン。コロナ禍で町はロックダウンされ、息苦しい隔離生活の中、住民たちの不満と不安は爆発寸前。保安官ジョーは、IT企業誘致で町を救済しようとしている野心家の市長テッドと、「コロナはただの風邪だ」“マスクをするしない”の小競り合いから対立が始まり、テッドに侮辱された保安官が「俺が市長になる!」と突如、市長選に立候補。ジョーとテッドの諍いの火は周囲に広がっていき、SNSはフェイクニュースと憎悪で大炎上。同じ頃、ジョーの妻ルイーズは、カルト集団の教祖ヴァーノンの扇動動画に心を奪われ、陰謀論にのめり込んでいく。さらに黒人が警官に殺害されたジョージ・フロイド事件(2020年5月)が起こり、町の若者たちが「ブラック・ライヴズ・マター(BLM)」運動のデモを展開して保安官を攻撃。人々はコロナ禍の恐怖の中で「マスクをしろ」と同調圧力を強める。エディントンの選挙戦は、疑いと論争と憤怒が渦を巻き、暴力が暴力を呼び、批判と陰謀が真実を覆い尽くす。エディントンの町と住人は誰も予想できない破滅の淵へと突き進んでいく。最期はハチャメチャの炎上スリラーとなる実話ベースのフィクション映画。
■細かく分断され孤立した個人社会、ネットに支配された情報環境、仕組まれたフェイクニュース、SNSで声高に叫ばれる様々な暴論。そして優し気に近づき脳の奥に入り込む陰湿な陰謀論など、その狂気に支配され時限爆発していく人々のことを今なら少しは理解できるかもしれない。それほど現実の世界は混沌としたカオスになってきている。
この映画の監督アリ・アスターは、インタビューの中で、「社会がますます細かく分断され、私たちが一層孤立し、インターネットを中心とした生活環境の新たな規律によって人間が変容していくのではないか」、「それはまるで無法地帯のようで、私たちは、いまや、あらゆるものが旧世界のルールに縛られず変化していく模様を目の当たりにしている」と語っている。
■世界の政治、日本の政治に目を向けてみても、狂っているとしか思えない絶望的なニュースばかりである。例えば、ロシアとの戦争が長引くウクライナ、まさかのようなニュースが人々を驚かせる。「ゼレンスキー大統領の最側近・ナンバー2の大統領府長官イエルマーク辞任(実質更迭)、国営原子力企業を巡る大規模汚職疑惑」「ゼレンスキー大統領の側近の一人、最高会議議長ステファンチュクを汚職疑惑で捜査中」「ゼレンスキー側近グループ“クヴァルタル95”出身者の多くが国外逃亡・起訴・失脚」などなど。ウクライナは戦争前から国会議員の汚職が蔓延しており、汚職は「個人」ではなく「システム」の問題のようだが、ロシアと生死を掛ける戦場で戦う兵士に対して、これら汚職議員はどんな言い訳ができるのだろうか。戦争は汚職を根絶するどころか、むしろ肥大化させたようだ。西側諸国の支援で軍事費を賄うウクライナにとって、ゼレンスキーの側近ですら支援金を懐にしているのではという疑惑は、今後の協力体制に問題が出てくるのは明らかだ。
■そして、大問題ばかりが続くのがアメリカ。米軍はカリブ海を中心に麻薬密輸船に対するミサイル攻撃を実施。2019年9月にトランプ大統領が命令したもので、「Tren de Aragua(TDA)」というギャング組織の壊滅を目的とし、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の支配下で活動する指定外国テロ組織だと断定している。このミサイル攻撃は、国連海洋法条約(UNCLOS)、国連麻薬条約、国際人道法など、国際法違反の疑いが強いと国際法学者や一部の国から厳しく批判されているが、トランプ大統領は今後も攻撃を続けると全く聞く耳を持っていない。アメリカは現在、麻薬カルテルの取り締まりを名目に、ベネズエラ沖に強襲揚陸艦、ミサイル駆逐艦3隻、攻撃型原子力潜水艦1隻など、計9隻の艦艇と4,000人規模の海兵隊を派遣しており、12月10日にはベネズエラ沖で大型の石油タンカーを拿捕し、タンカーの出入港を全面封鎖する構えで、トランプ大統領の真の狙いは石油利権にあるとの見方が強まっている。結局のところ、石油利権への執着であり、トランプさんもカネ回りが悪くなっているようだ。ベネズエラへの軍事侵攻も時間の問題かも知れない。
■最後はやはり日本の高市政権に触れなければならない。なんとか初めての臨時国会で追加予算の承認を受け、世間的には初めての女性首相として立派にやっている印象を与えているのだが、実情をよく検証すれば危ない話や大問題が山積みで、これほど最初から問題を抱える政権も珍しい。2025年11月7日の衆議院予算委員会の初日において、高市内閣総理大臣が台湾有事について述べた一連の発言がいきなり大問題に発展。立憲民主党の岡田克也との質疑の中で、「台湾が武力攻撃を受けた場合、これは日本の存立危機事態になり得る」と答弁したもので、当然のごとく、中国・大阪総領事の薛剣がX上で「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」とすぐさま反応。中国政府も正式に、「台湾海峡への武力介入の可能性をほのめかしたことは、中国の内政に対する乱暴な干渉であり『一つの中国』原則に深刻に反する」として批判。発言撤回を求めたが、高市政権は答弁を撤回しないばかりか、従来の政府見解を完全に維持しているとの見解を閣議決定したのだ。
■岡田氏の質問に素直に回答したまでで反省も何もないと開き直り、質問した方が悪いと岡田氏へ反撃する始末。後日判明したことだが、内閣官房が用意した答弁書には、「台湾を巡る問題が、対話により平和的に解決されることを期待する」「その上で、一般論として申し上げれば、いかなる事態が存立危機事態に該当するかは、事態の個別具体的な状況に即して、政府がすべての情報を総合して判断する」と書かれており、高市首相が自分自身の言葉で答弁したことが発覚。あらかじめ予測されていた質問に、あえて存立危機事態の認定の可能性を主張したもので、完全に予定された中国挑発発言だったことが分かる。
■いくら持論として以前から主張していたことでも、総理大臣の立場で国際条約が締結されている内容を個人解釈で曲げることなどあってはならないことであり、高市早苗という政治家としての危険な側面が如実に出ている。一度言ったことを撤回しない、間違ったことを言っても決して謝罪しないヒトとして有名な高市早苗であり、今後この台湾有事問題の中国側からの厳しい圧力は日本経済にも重くのしかかってきそうで、すでに観光、留学生、水産加工品など、影響が大きくなっているのはご存じの通りである。
■この台湾有事問題での中国挑発発言は、高市早苗による軍事予算倍増計画の一環ではないのだろうか。中国が日本や台湾へ軍事的な挑発をエスカレートさせることにより、自衛隊の軍事予算を一気に増加させ、アメリカ軍事産業とタッグを組んで、日本の軍需産業を奨励し、武器の海外輸出の拡大を推進し、中国が騒げば騒ぐほど日本の軍需産業や防衛予算が組みやすくなるという考えではないのだろうか。そして、実際に中国が台湾へ侵攻してきた場合、当然、駐留アメリカ軍が台湾を守るために動き出し、自衛隊と連動するというシナリオなのではないかと想像するのだが、どうだろうか。しかしながら、中国の軍事力をすでに検証できているアメリカはそう簡単には動かないはずで、まずは日本を守るのは自衛隊の仕事だからと、自衛隊を最前線に送り出し、アメリカ軍は後方支援に回って戦況を見極めるシナリオだってあり得ることを、高市早苗首相も小泉進次郎防衛大臣も充分にシミュレーションしておく必要があると思うのだが…(越)
 
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