のらり 大好評連載中   
 
■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第452回:日本の電気料金の怪

更新日2016/02/18



日本の公団アパートで1年間暮らした時、光熱費がとても高いのに驚きました。とても小さなアパートで私たちは電化製品など、ほとんど持っていませんでした(冷蔵庫は小人の国用としか思えないミニチュアで、ヨットの冷蔵庫の方がはるかに大きかったくらいです)し、お風呂は使わずもっぱらシャワーでしたから、電気、ガス、水道代など極々僅かだと勝手に思い込んでいたのです。

ところが、初めてその請求書を見た時、これ何かの間違いじゃない…と思ったほど高かったのです。この三つ、電気、ガス、水道で2万円くらいでした。それに加え、北海道でしたから、冬の暖房費、これは集中暖房で、使う、使わないにかかわらず徴収されますが、月額7,500円でした。

そこへ行くと、私たちが今住んでいるコロラドの山の家の必要経費は格安です。水と暖房はタダで…、と言うのは水道などは来ていませんから井戸水です。そして、暖房は周りの森にフンダンにある薪です。それを太陽電池のファンで家の中の空気を巡回させています。

未だにどこからどうして引っ張ってきたのか分からないのですが、この山の家には電気が来ているのです。下の町から国立公園に入ると電信柱がなくなり、電気がない地域が20キロほど続き、突然ウチの界隈に来ると電信柱が現れ、電気という文明の恩恵にあずかる地帯になるのです。ともかく私たちの家には電気がきているのです。 ウチにある太陽電池はとても冷蔵庫を動かすには十分でなく、普通の電気の恩恵をありがたく受けています。

地球温暖化に多少なりとも社会意識をくすぐられて、ダンナさん電球をすべて省エネタイプやLEDに取り替えました。白っぽい蛍光灯の光、ギラギラしたLEDの光は全く好きになれませんが、これも省エネのためと我慢しているのです。ところが、月々の電気代は全く変わらないことに気が付きました。というのは、私たちは基本料金以内しか電気を使っていなかったからです。その基本料金が月額58ドルです。

北海道の電気代も明細を見ると、基本料金4,708円で1Kwhごとに29円から33円で…標準的な料金は7,713円です。これはとても高い設定です。電気はその地方ごとの独占ですから、もっと安い電気を買うわけにはいきません。せいぜい太陽電池、風車発電、地熱発電を自前で設置し、抵抗するしかないのですが、これらはいずれも一戸の家としては大きな設備投資が必要です。

私たちが山の家で使っている電気は、コープ、生協タイプの電力会社で、年末になると払い過ぎた電気代が戻ってきたりします。マー、ほんの僅かですが…。電気のメーターもわざわざメーター検針のために人が山の中まで来なくて済むように、自分で読み取って、電力会社に電話で報告します。

基本料金と使用電力を合わせ、1Kwh当たり11ドル9セントですから、北海道の3分の1の料金です。アメリカは州によって電気代に大きなバラつきがあります。一番安い州はシアトルのあるワシントン州で8ドル70セント、一番高いのはニューヨーク州の18ドル80セントで、アメリカ国内でも倍以上の開きがあります。いずれにしろ、日本よりははるかに安いのですが…。

ウチのダンナさんの甥っ子が、「家庭で電球を取り替えたり、こまめに電気を消したりしても、何にも変わらないって」と力説していましたが本当でした。第一、節電してもそれが月々の電気代に還元されて来ないなら、だれが節電なんかするものですか。

いくら節電を呼びかけても、それが使っている家庭の料金に反映されないのなら、あまり意味がありません。新しいタイプの電球を売るための陰謀だと…さえ思えるのです。あれは電気会社と家電会社が組んで新製品を売るための方便だった、地球温暖化、省エネに踊らされただけだったかと思いたくもなります。

ところが、何に対してもウガッタ意見、考えをもつウチのダンナさん、ここでも節電と電気代から人生論にまで広げ、深く掘り下げ??で、「ソリャ、オメー、たいして変わらないから、何もしない人間と、ともかく自分にできることだけをやろうとする人間の差、人格の違いはとてつもなく大きなものだぞ」とご託を述べています。

 

 

第453回:辞世の句、歌を遺す日本文化

このコラムの感想を書く

 


Grace Joy
(グレース・ジョイ)
著者にメールを送る

中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

■連載完了コラム■
■グレートプレーンズのそよ風■
~アメリカ中西部今昔物語
[全28回]


バックナンバー

第1回~第50回まで
第51回~第100回まで
第100回~第150回まで
第151回~第200回まで
第201回~第250回まで
第251回~第300回まで
第301回~第350回まで
第351回~第400回まで
第401回~第450回まで

第451回:全米忍者選手権

■更新予定日:毎週木曜日