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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第355回:ローマ字、英語、米語の発音のことなど

更新日2014/03/27



JRのお徳用外国人用パスを使って、日本をほぼ一周してきました。指定席などを予約を取るときに始まり、駅員、乗務員、JR職員の丁寧さ、自分の仕事をよく知っていて迅速で能率が良く、それでいてニコヤカな対応に接し、また列車がほとんど遅れることもなく、込み入った鉄道網をまるで手品のように運行しているのに感動さえしました。

複雑なダイヤを組み、それを曲芸のようにこなしているのです。お客さんもそれを当たり前のように受け止め、流れているようでした。ウーム、このあたりが日本の凄さかな、と感心させられました。

同時に、JRも国際化し、全国どこの駅でもローマ字の表示が日本語の駅名の下に書かれているので、外国人にはとても助かります。しかし、その表記法は大いに問題があります。日本で習うローマ字はヘボン式(もう訓令式は使っていないでしょう)だと思いますが、音を伸ばす母音の上に付ける"-"が見事に消え去られているのです。

今、日本のパソコンにローマ字のアルファベットの上にどうやって"-"を引くのか、そんな機能があるのかどうか疑問なくらいですから、駅名を書く時も、パソコンでローマ字入力、またはひらがな直接入力してしまうのでしょうか。でも、"-"が頭についていないA, E,I,O,U,を発音するときに、引き伸ばす工夫はなされていません。

例えば、大阪は"Osaka"と表記されており、これでは一般的な西洋の言語を日常語としている人には"オサカ"としか読めません。せめて、"Ohsaka"なら、"O"の音が少し伸びて"オーサカ"に近くなるでしょう。

これが、誰でも知っている「大阪」だから、"オサカ"でも通じるでしょうけど、田舎の町の名前となると問題は深刻です。「大塚」は"Otsuka"(オツカ)、「大久保」は"Okubo"(オクボ)になってしまいます。

立派な表記方法があるのに、その表記法をそのまま読めば、日本人に対してもほとんど通じる地名を発音できるのに、奇妙な英語風の綴りにしてしまっているのです。どうにも納得がいきません。

タイヘンな数の新幹線、特急、急行、鈍行に乗りましたが、新幹線、特急、急行、快速でも、空港と町を結ぶ列車では、英語、韓国語、中国語のアナウンスがあり、外国人の旅行者は大助かりでしょう。JRも縄張りがあり、北海道、東日本、西日本、九州と英語を吹き込んでいるアナウサーの声が異なります。

皆落ち着いた良い声で明確に発音していますから、英語を第二、第三の外国語としているお客さんにも十分聞き取れることでしょう。ところが、揃いも揃って駅名、地名を発音するとき、アクセントをどこかの音節に置いて発音するので、日本人が普通に、平坦に言う駅名、地名とはとてもかけ離れた呼び方になってしまっています。

アナウサーたちは、自国語でトレーニングを受けたプロなのでしょうけど、理解していない外国語である日本語の地名を発音することが苦手だったのでしょうか。なんだか、日本の地名が、どこか遠い国にあるように聞こえます。どこにもアクセントを置かずに平明に発音するのは、西欧人にはとても難しいのです。

日本に来てよくイギリス英語の方がアメリカ英語より聞きとり易い…というような英語論を聞かされます。彼らの言うイギリス英語は、コグニィーとかウエールズ、アイルランド、スコットランド英語を勘定に入れていない、BBCのアナウンサー的な英語のことのようです。どうも日本では、まだイギリス英語が正当で、他はダメという感覚が残っているのでしょうか、JRのアナウンサーもすべて見事にイギリス訛りのイギリス英語でした。

例外は鹿児島で、元々鹿児島弁でまくし立てられると普通の日本人は全く分からないそうですから、独自にコミュニケートする伝統があったのでしょう。鹿児島でのアナウンスは、米語も米語、若い学生さんが下町の横丁で話すような調子のアメリカ英語でアナウンスしていました。なにかギョッとさせられましたが、なかなか威勢が良く、それはそれで面白く、いろんな英語があってそれでいいのですから。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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