■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)



中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。




第1回~第50回まで
第51回~第100回まで

第101回:外国で暮らすこと
第102回:シーザーの偉大さ
第103回:マリファナとドーピングの違い


■更新予定日:毎週木曜日

第104回:やってくれますね~ 中川さん

更新日2009/04/09


日本語の授業の後で生徒さんが、「先生、昨日のニュース見ましたか? 日本の大臣がヘロヘロでとても面白かったですよ」と教えてくれました。

私が住んでいる山の小屋は、FM放送さえ入らないところですから、テレビも半世紀前に試験放送を始めた時のように、天候によってぼんやりした影像が映ったり、映らなかったりします。上空の状態が電波どのような影響を及ぼすのか分りませんが、スペイン語チャンネルの方がよく入ってきたりします。

ニュース番組の終わりに必ず軽い、面白いトピックスを流します。スペイン語のテレビも同様に、面白い海外トピックスとして、中川財務相のインタビューを流したのを見ることができました。ニュースキャスターもあきれ果て、「誰かがワインとコニャックにアルコールを入れたようだ」とコメントし、「日本では血液に100%以上アルコールが検出されない限り、酔っ払いとは見なされないのではないか」と笑うより他ないようでした。

べろんべろんに酔っ払った支離滅裂の醜態とは、まさにあのことでしょう。

その後、インターネットのニュースをチェックしたところ、動画ニュースとして中川さんのべろんべろんインタビューが流れていましたし、You-Tubeでも政治関係のものとしてはアクセス数がダントツのヒット数なのを発見しました。

西欧人は日本を神秘的、精神的な国として捉える傾向があります。中川さんはそれを証明してくれたのでしょう。2年間に3回も総理大臣が変わり、今の麻生首相も風前のトモシビのようですし、100年に一度といわれる世界的な経済危機を打開しよう開かれたG7の蔵相会議にアル中を送り込んできても、国は潰れず、破産もせず、G7の中では最も経済状態の良い国なのですから、まさに神秘の国です。

西欧だけではないでしょうけど、お酒を楽しくいくら飲んでもよいが、酒に呑まれるなという鉄則があります。お酒に呑まれた人は軽蔑されます。例えば、日本を訪れたヒラリー国務省長官がベロンベロンに酔っ払って、インタビューに応じたなら、笑い事では済みません。まず、政界の人だけでなく日本人の多くは、笑うより先に侮辱されたと感じるでしょう。

ローマでの中川財務相のインタビューも同じです。日本人にとっては恥かしいこと、日本に帰ったら頚を切れば済むことですが、G7の会議に参加した人たちにとっては大変な侮辱なのです。

根がしつこい西欧人は一度受けた侮辱は忘れません。二度と信用しなくなるのは、歴史音痴の私でも知るところです。日本の政治屋さんは外交が下手だと他から言われ、自らもそう思い込んでいるようですが、自分が侮辱と感じることを他人に対してもしないのが第一歩です。

中川さんのことは、日本のジャーナリズムで散々書かれていることでしょう。小説家の村上龍さんは、「中川氏の不幸は、体を張って会見を止める友人がいなかったことだ」とコメントしています。村上さん、任侠の世界じゃあるまいし、G7の会議に出席するような公的な人間に、「親分、ここを通るなら、手前を切り捨ててからにしてくれ」と言った子分がいたとしても、そんな社会感覚を持っていること自体、狂っているといってよいでしょう。

政治家はしぶとく自己の信念(自己の利益と往々にして重なりますが)にしがみつき、潔くないことを信条としているのはどこの国も同じですが、学校の先生が酒気帯び運転をしても辞表を出さなければならない日本で、中川さんが財務相は辞任しても議員の席は明け渡さないのには、いささか呆れました。

 

 

第105回:毎度お騒がせしております。チリカミ交換です。