■拳銃稼業~西海岸修行編

中井クニヒコ
(なかい・くにひこ)


1966年大阪府生まれ。高校卒業後、陸上自衛隊中部方面隊第三師団入隊、レインジャー隊員陸士長で'90年除隊、その後米国に渡る。在米12年、射撃・銃器インストラクター。米国法人(株)デザート・シューティング・ツアー代表取締役。


第1回:日本脱出……南無八幡大菩薩
第2回:夢を紡ぎ出すマシーン
第3回:ストリート・ファイトの一夜
第4回: さらば、ロサンジェルス! その1
第5回:さらば、ロサンジェルス! その2

第6回: オーシャン・ハイウエイ

更新日2002/04/18 


2週間同じ町に滞在していれば、その街のかなりの「通」になることも分かってきた。ロサンジェルスは、夢と現実、勝者と敗者が如実に浮かび上がり、いろいろな民族・コミュニティで構成された町であった。これらの文化圏が、完全に交じり合うには、あと何世紀かかるのだろうか? 米国の移民国家としての意味が、少し分かってきたような気がした。

ロスを出たのは、日本から上陸して2週間目の5月中旬だった。この時期のカリフォルニア州は雨が少なく、温暖で過ごしやすい。こんな楽園に集まるのは人間の本能なのかも知れない。

私は、フリーウエイ5号線を南下して、メキシコとの国境に近いサンディエゴに向かう。ロスから5号線に乗るが、高速道路のアスファルトの道が非常に悪く、オフロード・バイクには走り辛い道だった。まあ、全線無料であることを考えたら文句も言えないのだが。

また、交通の流れは非常に速くて、時速120km位で流れていて、350ccのくたびれたXTにはかなりこたえる。背後から、何度もクラクションを鳴らされた。挨拶代わりかと思っていたのだが、どうやら「遅いので、どけ!」と言っているらしい。これは後日になってやっと分かったことで、それ以後はなるべく下の一般道を利用することにした。

サンディエゴまでは、右手に海を拝みながら走ればよい訳で、地図などはほとんど必要なかった。青い空と海を見ながら、バイクはシングル・エンジンの「カタカタ」という、カムシャフトのノイズをあげながらひたすら走る。ガソリンスタンドは、すべてセルフサービス。レギュラーを満タンにしても僅か$3程度である。これで200kmは走行可能なのだ。そして、ちょうどロスからサンディエゴまでが、その距離だった。

途中、昼食休憩でタコスを食べに店に入ったのだが、帰ってくるとバイクのシートに何やら券が挟んである。よく見れば交通違反のキップである。米国は、バイクでも駐車する時は、歩道ではなく車道に停めなければならないのだ。しかしその時の私には、罰金をどうやって支払うのかよく分からない。タコスの店に戻って、オヤジに聞いてみると、当然な顔で
「それはこうするのさ」と、チケットをビリビリに破いて、ごみ箱へポーンと放り込んでしまった。その豪快さに驚いたが、国内に居住していない旅行者には有効な対処法らしい・・・。

ゆっくり走っても約半日の行程で、サンディエゴ市内に入った。メキシコ国境まで僅か40分ほどの米国西海岸最南端の主要都市である。ダウンタウンは、ロスのそれよりこじんまりしている。ずうっとヘルメットを着けずに走ってきたので、顔が埃に侵されて、黒斑色の迷彩化粧をほどこしてしまっていた。

今日はシャワーを浴びる必要がある。そこで、野宿のキャンプは取りやめにし、1泊$8のユースホステルに宿を取った。

 

 

第7回: ビーチ・バレー三国同盟