■よりみち~編集後記

 


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更新日2004/01/08


正月は2本の封切り映画を観た。年末年始の期間だけレイトショー割引で1200円で観られる(ワーナーマイカル)という粋な計らいに便乗させてもらった。「ラスト・サムライ」「すべては愛のために」(オリジナルタイトルは「Beyond Borders」)。2本ともにネット検索ではあまり評価は高くなかったが、どちらも予告編のつくりがうまいのに惹かれたからだ。2本ともに傑作とはとても言えない作品だったが、まあレイトショー割引だから許そう。「ラスト・サムライ」は渡辺謙がどんなものか観ておきたかった。彼の出演作品の中ではかなり光っていると思える。外人うけのするサムライの演技をうまくこなしていた。英語もかなり使えそうだから邦画よりもハリウッドの方が成功するのではないだろうか。この作品でゴールデングローブ賞にノミネートらしいから、もし受賞できたらすごいことになりそうだ。真田広之も好演していたが、明治天皇を演じた中村七之助もはまっていた感じがする。なぜ、あんなに明治時代のサムライが英語をぺらぺら流暢に話せるのかとか、日本的な感覚からすると、ちょっとおかしな部分もあるのだが、今までのハリウッド映画の中に描かれる日本文化や日本人の屈辱的な描写(いつもなんで日本人スタッフがたくさん参加しているのにあんなひどい描写になるのか不思議だった。それほど、アメリカ人の日本に対する偏見や思い込みが激しいということだろうか…)はさすがになく、かなりその点は評価に値するのではないだろうか。特に殺陣に関しての違和感はなく、トム・クルーズもかなり勉強したことは明らかだ。アンジェリーナ・ジョリー主演の「すべては愛のために」はエチオピア、カンボジア、チェチェンという民族紛争と難民問題が渦巻く国で難民救済活動をする英国人医師とアンジェリーナ扮する英国社交界の美しい人妻との壮絶な愛の記録だが、貧困や飢餓問題を真正面に取り上げ、それと真実の愛を交差させた作品だけに、どうもテーマが散漫になってしまい、壮大なメロドラマで終わってしまった感じで、後味があまりよくない。メロドラマに骨と皮だけの本物の難民が出演しているというのはいかがなものだろう。この映画を作るお金で何人の難民が生き残れるかを想像してしまう。それ以前に、アクションで話題のアンジェリーナ・ジョリーがミスキャストだという根本的な問題があったように思える。(