■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2007/01/18


「全米900万部の記録的ベストセラー。アメリカ人の健康観を変えたダイナマイト本、ついに日本上陸!」・・・こんな宣伝文句を目にしたら、どんな本なのか興味を持って当然だろう。なにせ900万人が読んでるという本なのだ、どんな本なのだろうと思って正月に書店でたまたま見つけて読んでみた。ケヴィン・トルドー著『病気にならない人は知っている』(原書名:NATURAL CURES〈Trudeau, Kevin〉;黒田眞知訳;幻冬舎刊)がその本だ。読んだ感想はと言うと、確かにこれほど過激で挑発的な本を最近読んだことはない。ちょっと宗教的な匂いまでするほど狂信的な健康本である。これ以上過激な健康本を書ける人はいるのかなと思うほどで、巨大企業に真っ向から立ち向かう姿勢は、気持ちがよいほどである。21世紀のドン・キホーテを気取っているのかもしれない。ちょっとこの過激な内容をお伝えするために、書籍宣伝用の文章を引用してみると・・・「ハンバーガーを食べるな! 日焼け止めは塗るな! 水道水は飲むな! 歯磨き粉は使うな! 牛乳は飲むな! 電子レンジは使うな! 風邪薬・抗生物質をのむな! ダイエット食品を食べるな! ひとつやめれば体調がよくなり、全部やめれば長寿になる。本来人間は120歳まで生きられる。野生動物には心臓発作もガンもない。医者と薬とファーストフードを今すぐやめろ! 」。これらのメッセージを熱心に分かりやすく数々の事例も交えながら解説している。このトルドー氏は消費者保護の立場で闘う活動家として、米国の政府機関や巨大企業のタバコ会社はもちろん製薬会社や食品会社、そしてファストフード会社を敵に回して、その嘘をあばくためにテレビを使って告発したり、警告したりしていることで、全米でかなり注目されているようだ。この本を読んでいるうちに、ハンバーガーやフライドチキンと炭酸飲料に代表されるジャンクフードが食べたくなくなることは事実で、自然からあまりに離れすぎた食生活を反省してしまう。できれば身体によいナチュラルな食生活がしたいと思ってくるのだが、読み進むうちに、トルドー氏の主張することがどこかで聞いたり読んだりしたことばかりで、よくまとめられてはいるが、新しい見解や独自の研究というものが一つもないことに気がつく。さらに、トルドー氏がすすめる健康法は高額ではなく安価に実践できると主張するものの、必ずノウハウに関しては関連するWEBサイトへと誘導しており、そのほとんどが安価でもない有料サービスなのだ。トルドー氏もこれを気にしているようで、しきりにこの健康法で儲けようとは考えていないとか、自分の収入は有料ニュースレターなどからしか得ていないと弁明しているのだが、彼のすすめる健康グッズなどのテレビによる通信販売での売上は莫大なもので(900万人の読者だから当然である)、どうも健康を商品化したビジネスの匂いがやはり気になる。そして、専門家からは、医者でもない人がどうしてここまで病気の原因などを断定できるのかという反論が寄せられており、それに対しては何万件という研究論文に目を通しており、すべて自分の主張することは科学的に実証されていると主張しているのだが、どうもこの点に関しては眉唾ものである。トルドー氏が言うように確かにドキュメント映画『スーパーサイズ・ミー』などで実証されているようにファストフードによる肥満の弊害などは事実だし、食品業界は利益追求だけを求めすぎて、その害を知りながら食品添加物をあまりにも多く使いすぎていることは否定しない。人間の未来を本当に考えるなら、企業がこの利益追求路線から健康第一主義路線に早急に変革されるべきだと思う。でも、トルドー氏が主張することを実践するには都会の中で隠遁生活するようなストイックで宗教的な生活しかできなくなるようで無理がありすぎると思うのだが・・・。(

 

 

※お知らせ※
今週から「NORARIギャラリー」のコーナーを始めました。
毎週(の予定ですが…)季節ごとのイラスト作品が札幌在住の
ITO JUNKOさんから編集部に届くことになりました。
お楽しみに・・・!


■猫ギャラリー ITO JUNKO