■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2007/02/22


映画『ドリーム・ガールズ(DREAM GIRLS)』(ビル・コンドン監督作品)のジェニファー・ハドソンはとにかくすごいとしか表現できないボーカリストだ。歌は顔や身体では判断できないという証明でもある。主演のビヨンセのために作られた映画という前評判だったが、実際にはジェニファー・ハドソンの主演映画としか思えないほど、彼女なしには成立しない映画になっている。タモリと同様、ミュージカルというのがどうも体質的に受け付けないのだが、この映画が“60年代に人気だったヴォーカルグループ、シュープリームスのサクセスストーリーをベースにアメリカン・ショービジネス界の表裏や愛憎、サクセスとその対価を描いた映画”という触れ込みだったので、やはり観るしかないと思ったのだ。実は私はシュープリームスの「Love Child」を初めて聞いて以来ファンになったので、どんなふうに彼らがトップにのぼりつめ終焉を迎えたのかとても興味があったのだ。映画はミュージカル映画ではあるのだが、アンチ・ミュージカル・ファンの心理もちゃんと理解しているのか、音楽で会話する独特のミュージカル手法を極力抑え、効果的にそれを使っていて、映画とステージをうまく融合した演出で好感が持てた。なにせやたらに歌がうまいのである(プロ中のプロなんだから当然か)、そしてその衣装や振り付け、ステージの見せ方や照明に至るすべてがリアルに演出されているため、ミュージカル・ステージのいいとこ撮りを観ている気分にさせてくれる。私がミュージカルが好きになれなかったのは単にできが悪いミュージカルをかつて観ていただけで、プロ中のプロが創るミュージカルは文句なく面白いし感動させてくれることをこの映画で理解させてくれた気がする。そして、ダイアナ・ロスというシュープリームスのメインボーカルが実はレコード会社の戦略で作られた虚構のカリスマで(実際にすばらしいボーカリストではあったが)、フローレンス・バラードが本当のメインボーカリストであり、リーダーだったことを知って、ちょっとしたショックを覚えた。結局彼女は、プライドを傷つけられて自律神経失調症になり、シュープリームスから1967年に脱退、アメリカを代表する世界的エンターティナーになっていくダイアナ・ロスとは対照的にソロ活動でもヒットに恵まれず1976年に病死したらしい。アメリカのレコードビジネスの裏側の世界を暴露する内容でもあり、60年代から今も続く音楽業界の光と影がうまく表現された作品だとも思える。この映画のキャスティングの豪華さも評判になっているが、マネージャ役のジェイミー・フォックスははまっていたが、当時の有名ボーカリストのジェームス・サンダー・アーリー役のエディ・マーフィは、どうしてもコメディ映画の『ゴールデン・チャイルド』や『ビバリーヒルズ・コップ』などの印象が強すぎて、すばらしい歌唱力にもかかわらず、どこかで笑わせるのではないかという期待感強すぎてミスキャスティングに思えて残念だった。(

 

 

 


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