■よりみち~編集後記

 


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更新日2004/04/29


予告編に誘われて話題になっている紀里谷和明監督の初めての劇場作品『CASSHERN』をワーナーマイカルシネマのレイトショーで観てしまった。CGを使ったアニメーション映画だとばかり思っていたら、ちゃんとまともな俳優が出演していることがわかり、どんな映画なのかミーハ-気分でチェックしたくなったのだ。もちろん宇多田ヒカルのテーマ曲を聞いて、さらに興味を覚えたことも事実で、まんまと罠にはまった?(ちょっと言い過ぎで宣伝がそれだけうまかったのだろう) CFカメラマン出身で、ミュージックビデオなども手がけ、劇場用映画を撮りたくなったというのは、当然の流れなのだろう。確かに、映画の構図がやたらコマーシャル用の写真っぽく、極論すると、その連続が映画になったという印象だ。CFカメラマンならではの構図へのこだわりがすごく、コマーシャル関係の人が観たら、これも使えるここも使いたいという映像ばかりのような気がする。未来を描くSFでありながら、1900年初頭のレトロなデザインへの憧憬が感じられ、日本を超えたアジア、それもアメリカのフィルターを通したアジアを意識させる映画だ。テーマは反戦そのもので、あまりにそのメッセージが直接過ぎて、ちょっと興ざめしてしまう部分は否定できないが、この映画を単なる反戦映画としてジャンル分けをしてしまうのは無理がある。私が最初から感じていたのは、いま流行りのLPG(ロールプレーゲーム)感覚のTVゲームの劇場版なのではということだった。登場人物もすべてゲームのキャラクターっぽく、大げさな台詞回しもどこかゲームで文字表記される感じなのだ。だから、この映画はTVゲームが好きか嫌いかで判断は両極端ではないかと思える。私はそもそもTVゲームの絵空事なストーリーやゲーム特有の人間の動きや行動パターンにまったくついていけないので、正直言ってこの映画には退屈してしまったが、TVゲーム世代の若者やゲーム感覚が理解できる人は結構ハマリそうな映画かもしれない。確かに製作スタッフの名前を見ると、CG界のカリスマ・スーパーバイザーや『新世紀エヴァンゲリオン』の演出家などCG界やゲーム界からも多く参加しているようで、それらに詳しい人は、このシーンは誰それの作品に似ているとか、あのシーンはきっと誰それが担当したんだというもう一つの楽しみ方があるのかもしれない。ただ、日本映画がこの手のCG満載のTVゲームの延長のような作品がどんどんでてくるようになるのはちょっと怖い。CGでできないことはないわけで、猫も杓子もCG、「ロード・オブ・ザ・リング」など、CGに人間が出てくる感じで、あそこまでやると気持ちが悪くなる。もうそろそろCG全盛時代は終わりにしてもよいのではないだろうか? いま、人々が映画に求めているものはちょっと違ってきているのではないだろうか? だって、映画よりも現実の世界の方がはるかにすごいことばかりが起こっているわけで、リアリティの持つ迫力は、現実の世界には絶対かなわないのだから。。。(