■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日


更新日2004/05/27


味覚というのは不思議なものだと思う。よく食べず嫌いという言い方をするが、食べ物の形状や臭いからくる味覚への影響は大きいと思う。大嫌いなはずだった食べ物が、形を変えたり調理方法が変わって出てくると、結構食べられたりする場合もある。絶対音感のように絶対味感というものを持ち合わせて人もたぶんいるのかもしれないが、私の場合で言えば、味覚はかなりいいかげんだと思う。その時の体調はもちろん、その場の雰囲気やシチュエーション、そして腹の減り具合によっても味覚は変わるように思える。おいしく食べるための最大の条件は空腹だと言われるが、確かにそれは「間違いない!」。断食道場で1週間断食をしたが、断食後の復食一食目の重湯と梅干の味は忘れることができないほど特別の味がした。また一方で、ニガウリなどのように、最初はほとんどの人が「…むむ」と思う味なのだが、だんだんとあの独特の苦さがクセになって、時々食べたくなるという食べ物も案外多いように思える。味覚の好みは成長や環境と共にどんどん変化していくものもとても不思議だ。子供の頃、貝類やウニなど、磯臭い食べ物が大嫌いだったが、(父親が漁師の家に生まれたせいか、とにかく飯には必ず魚系のおかずがないと機嫌が悪くなるほど魚好きだったから、その反動なのかもしれない)、高校生の頃に大人たちがおいしいと言って食べる新鮮そうなツブ貝に興味をそそられ、思い切って食べてみると、何で今までこれが嫌いだったのか、自分でも理解できないほどおいしく感じ、「…あれ?」と戸惑い、食わず嫌いは損をすることを知った。それからはほとんど嫌いな食べ物がなくなったように思えるが、今でもトラウマなのか、ナマコとホヤだけは食べたいとは思えない。無理をして食べられないこともないが、未だにおいしいと感じたことが一度もない。先日、北朝鮮から日本に帰ってきた5人の子供たちが(北朝鮮生まれだから、帰ってきたとは言えないな。初めての外国であり、両親のルーツの国にやってきた)日本食が口に合わず、母親が朝鮮風の料理を作ってあげているようで、血は純粋な日本人でも環境次第で食の嗜好や味覚、そして考え方までが変わってしまうものなのだ。どのくらいの期間で彼らが日本食がおいしい思えるようになるのか是非知りたいものだ。さらに思うのは、拉致されてまだ帰ることのできない日本人が、どれだけ昔食べた日本食を恋しがっているだろうかということだ。早く連れ帰って決着をつけてほしいものだ…。(K