■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2005/06/02


クリント・イーストウッド監督作品「ミリオンダラー・ベイビー」を観てきた。これだけ低予算でも映画は充分楽しめるということを教えてくれる名画である。イーストウッド監督の映画の美学は充分理解できるし、俳優としても老いてもそれなりの魅力をかもし出している姿は共感者が多いはずだ。どうも「ローハイド」(58年)というカウボーイ映画のTVシリーズのロディ役で脇役で出演していた頃のイーストウッド、マカロニウェスタンの全盛期の「荒野の用心棒」(64年)や「夕陽のガンマン」シリーズのイーストウッド、ドン・シーゲル監督との大当たりの刑事シリーズ「ダーティハリー」(71年~88年)のハリー・キャラハン刑事役のイーストウッド、そしてカリフォルニア州カーメル市の市長(86年から2年間)であったイーストウッドなど、イーストウッド監督は、日本には存在しないタイプの俳優兼監督であり、まさに超人というイメージである。いい俳優がいい監督になるとは言いがたく、あまり成功していない方が多いかもしれない。彼の場合は、さらに自分で主演を演じることが多いわけで、世界的にも珍しい監督だと思う。作品はあくまでも娯楽作品であることは忘れないが、最近の作品は内容的にはかなりメッセージ性が高く、映画的な表現を巧に使ってしっかりと訴えかけてくる作品が多くなってきている。アカデミー賞を受賞したウェスタン映画「許されざる者」(92年/リメイク)も古きよき時代のウェスタンの世界を凝縮して見せながら、けっこう重いテーマのメッセージを送ってきた。近年のどの作品も名画で、それなりの感動ががあり、表現力やリアリティに関しても優れているのだが、最後の感動の山が小さいように思え、一人の映画ファンとしてはもったいないなと感じる場合も多い。それはイーストウッド監督があえて意図的にそうしているのではないかとも感じるのだが、これが監督のめざす映画の美学なのだろうか。先日たまたまビデオのレンタル屋さんで「ミスティック・リバー」を見つけて借りてきた。これも後からイーストウッド監督の作品だと知った。すごくいい作品なのに最後の盛り上がりをあえて抑え込んでしまうような印象があり、やはり改めてイーストウッド監督の作品だと納得した次第である。それにしても「ミリオンダラー・ベイビー」のヒロイン役の女優ヒラリー・スワンクのボクシングシーンはなかなか迫力があった。練習に練習を重ねた結果だろうが、素人の男ならノックアウトできそうな感じがした。(

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO