■よりみち~編集後記

 


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更新日2006/06/08


いま話題のロン・ハワード監督作品『ダ・ヴィンチ・コード』を観てきた。世界中でベストセラーとなったダン・ブラウン氏が書いた歴史ミステリー小説「ダ・ビンチ・コード」の映画化として注目の的となっている作品だ。主演はトム・ハンクス、ヒロイン役は『アメリ』で主演したオドレイ・トトゥ、刑事役にジャン・レノなど個性派俳優が固めている。監督のロン・ハワードは『ビューティフル・マインド』でアカデミー賞の監督賞を受賞した実力派で期待も大きくなる。かなり宣伝やウワサ話が先行しすぎている感じもあり、広報戦略の匂いがしすぎていて、絶対に当てることが目的の映画という感じがする。いずれにせよ、ここまで話題になる映画も少ないだろう。映画化に先立ち、この原作が盗作だと訴えられたり、カソリックの総本山であるバチカンの枢機卿が「反キリスト教のうそに対し、座していてはいけない」とのコメントを出し、それに呼応したカソリック系の教会が上映のボイコットを呼びかけているようで、さらには映画を配給しているソニーの全製品の不買運動をカトリック系団体が呼び掛けたりと、この映画に対しての反響の大きさに驚くばかりである。そこで、実際の映画のできばえはどうかと言うと、作品的にはとても原作に忠実に作られているようで、難解だと言われていたストーリーも、それほど意味不明な部分はなかった。ただ、キリスト教に対する予備知識が多少ないとなんのこっちゃという部分もあるかもしれない。とてもコンパクトに原作をまとめあげていて、たっぷりとスリルとサスペンスが楽しめる娯楽大作として仕上げた監督と脚本家はさすがである。但し、この作品の場合、ストーリーが単なる大人のメルヘンとしてならという条件がつくわけだ。カソリック系の教会や団体がこぞって目くじらを立てる理由が理解できないわけではないのだが、クリスチャンではない一人の日本人にとっては、キリストが神の子ではあるが人間として実在していた以上、愛する女性がいたり、その愛の結晶として何人かの子孫がいたとしても全然不思議ではないし、かえって人間味が感じられてよいと思うし、面白い仮説があるもんだくらいのノリで済ませてしまうのだが、カソリックを信仰する人からすると、たとえば、仏教の世界でたとえるならば、実は仏陀が男色を好んでいたくらいのショッキングな仮説なのかもしれない。原作を読んでいないので、その暗号の信憑性となるとちょっと判断は難しいが、ストーリーとしてはちょっと出来すぎている感じがして気持ちがよくない。そんなにうまく説明がつくことがたくさんあるのなら、もっと地球は平和なはずではないだろうか……。すでにこの小説の続編の出版が準備されているらしいのだが、盗作疑惑などで原稿が遅れ、来年に出版がずれ込むらしい。続編は『ザ・ソロモン・キー』という仮タイトルがついているそうで、フリーメイソンの歴史にまつわる話らしく、またまた話題やカソリック系の団体から反感を呼びそうな気配である。どうも、このダン・ブラウン氏はかなり過激な性格の人のようだ(商売もうまいのかな)。くれぐれも狂信者にはご用心していただきたいものである。(K

 

 

 

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