■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日


更新日2004/07/15


以前に観た映画で、ソフィア・コッポラ監督の『Lost In Translation』(2003年のアカデミー賞監督賞にノミネートされた作品で、アメリカ女性監督として初めての快挙らしい)がじわりじわりと後から効いてくる映画であることが分かった(よりみち2004/06/10)。どこが効くのか説明できない不思議な魅力なのだが、中年男の孤独感や異邦人の哀愁など、1971年生まれの33歳という若い女性監督がどうしてここまで表現できるのだろうと思う反面、繊細な女性監督だからこそ、そこまで掘り起こせるのかもしれないとも思う。もっとこの女性監督の作品が観たくなっていたところに、ちょうどSSFF(ShortShorts Film Festival)2004が各地で開催されていて、ソフィア・コッポラ監督が映画を勉強しながら制作した実験的なビデオショート作品でいわば彼女の処女作的な作品が見られることが分かった。1998年の14分というモノクロ作品『Lick The Star;リック・ザ・スター』で日本でも初上映という。これは見逃すわけにはいかない。14分という本当に短い映画だったが、彼女の才能がいたるところに光る作品だった。中学生の女子生徒の数週間をドキュメントタッチで描いているのだが、思春期の頃に抱える抑えがたいエネルギーや群集心理、残忍なまでの攻撃性など、彼女の実体験も含めて、揺れ動く女生徒の姿をドライに描いている作品である。観ていて自分の中学生の頃の体験と重なって、感情移入してしまった。よく“いじめ”のことが問題になるが、どんな時代でも、どんな国でも、多かれ少なかれ誰にでもあることで、集団生活にはつきものの現象で、避けて通ることはできない通過儀礼のようなものだということがこの作品を観終わって思えた。問題なのは、その儀礼に対応できない過保護でひ弱な子供が増えてしまったことのように思える。内容がしっかり凝縮された作品なので、14分という短い時間なのだが、長編映画を観終えたようなパンチのある充足感が得られた。ちなみに“Lick The Star”は反対から読むと“ラッツを殺せ”というコードネームなのだという。子供の頃、こんな言葉遊びをしたことも思い出した。今年で6年目の開催となるSSFFでは普段観られない国の短編映画が観られることも魅力だった。ギリシャやキューバの短編映画でかなり完成度が高い作品があって驚いた。これだけITが進化してきたのだから、世界中の映画がもっと気軽に翻訳つきでビデオやDVDで観られるようにならないのだろうか。他の国の映画を観ることで人間の考えていることが、どこの国でもさほど変わりはないことを理解できるわけで、世界平和のための近道だと思える。最近の韓国ブームでも、映画やビデオが大きな役割を果たしている。これで一気に韓国との文化的な溝が狭まったように思えるのは私だけだろうか。(K