■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2007/07/26


アフガニスタンでボランティア活動を行っていた韓国人23人がタリバンに拘束された人質事件は、裏交渉が失敗に終わり、韓国人リーダーの男性牧師1名が見せしめのために殺害されたことで、批判の矛先が韓国政府の対応の悪さが指摘され、さらに韓国国内を大混乱に陥れる可能性も出てきてしまった。反政府ゲリラやテロリストに対する汚点を残さぬために、人質交換交渉には決して屈しないという強い姿勢の現れが、タリバーンの逆上を誘発したことは確かだろう。しかしながら、テロリストの要求どおり人質の交換や身代金の支払いに今回応じてしまったなら、今回の22名は無事救出できたとしても、第二の、そして第三の民間人拉致誘拐事件は頻発することは見えており、一度要求を呑んでしまえば、果てしなく要求を呑みつづけるしかなくなるわけで、そんなに簡単には決着しないだろう。韓国政府に対しての対応のまずさを言うのはたやすいことだが、日本やアメリカが同じ立場であっても、それほど変わっていたとは思えない。むしろ日本の場合にはマスコミが過剰反応して、もっと混乱させている可能性が高いだろう。2004年にイラク戦争後に起こったあの人質殺害事件を思い出して欲しい。ザルカウィ一味と思われるグループに捕らわれ人質となって殺害された香田証生さんの事件だ。日本のマスコミはこぞって「自己責任」の問題にすり替えて、香田さんの無責任な行動ばかりを批判する立場を貫いたのだ。批判されてしかるべきなテロリストの卑劣な行為や民間人を巻き込む見境なしの残虐行為に対してコメントした報道機関はなかったように思える。「あんな危険な場所に好き好んで行った奴が悪いのであって、殺されても自己責任だからしょうがない」と、無知な青年を日本の恥さらしのような扱いをしたのである。今回の韓国人のボランティア集団が日本人だったならどうだろう。たぶん、アフガンの平和のための活動をしていたボランティアだから自己責任は問われないのだろうか。香田証生さんもひょっとしたらイラクでボランティア活動を目指していたのかもしれないのだが、たった一人で行ったから自己責任を問われ、団体で人質(女性が多い場合は特にだろう)になった場合には美談になるのだろうか。状況としては、イラクとアフガンとではそれほど危険度では変わらないように思える。最近のタリバーンの動向を見れば、クリスチャンのボランティア集団が地方で活動することは刺激的すぎる感じがする。タリバーンは、日本で例えるとオウム真理教のようなイスラムの極右原理主義者の集団なのだから、異教徒に対して最も過激に反応するはずで、女性が顔を隠さず歩くだけでも神への冒涜になるという考え方なのだ。韓国国内でもこの23人のボランティア団体が事前に調査や国内事情などについて理解した上での渡航だったかどうか疑問視する声が出ているようだが、日本の香田さんとレベルはかなり近い感じがするのだ。だからと言って「自己責任」を言うつもりはないし、批判されるのはタリバーンだけで十分だ。政府の対応ばかりを責めないで、このような卑劣な残虐行為を行うことで、かえって自分たちが孤立し、国際社会から取り残され、自分たちがより追い詰められるという現実に気づかせるしか、この人質拘束事件に対抗する方法はないのだと思える。(

 

 

 


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