■よりみち~編集後記

 


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更新日2005/07/28


公開したばかりのSFスリラー『アイランド』(マイケル・ベイ監督作品)を観てきた。あまりスリラー物は好きではないのだが、以前から気になっている女優のスカーレット・ヨハンソンが脇役で出演しているので、何の予備知識もなしに、単に彼女の演技を見たくて出かけた。なぜそれほど彼女に惹かれるのかよくわからないのだが、『ロスト・イン・トランスレーション』(ソフィア・コッポラ監督作品)で初めて観て以来、その自然な演技と美しい瞳に魅せられている。小柄だし特に目立った容姿でもないのだが、そのナチュラルな演技が光る女優である。今回の作品で証明されたがアクションもこなせるマルチタレントであることも魅力に加えられた。まだ21歳ということもあり、これからが楽しみな女優の一人である。作品がSFスリラーらしいということは知っていたが、観ていてそのテーマに驚いた。「クローン人間」なのだ。ネタばらしになるのであまり詳しくは触れないが、かなり近未来のストーリー設定だ。近年増加している生体移植の問題(臓器売買とか)にも直結している話で、かなりシリアスなテーマでもある。どこかスティーブン・スピルバーグ監督の『A.I.』の人間の心を持ってしまったロボットの悲劇とダブるようなクローン人間の未来が描かれている。主演は『スター・ウォーズ』シリーズでもおなじみのユアン・マクレガーで、なかなかのはまり役である。クーロン人間がすべてリゾート・アイランドに行く夢を生まれながらに刷り込まれていて、その島にいく日を夢見てひたすら毎日働いているという設定は、まるで現在の我々サラリーマンと同じようで、なんとも悲しい気持ちになってしまった。さらに悪いことに我々はどこのリゾート・アイランドも決して夢のような素敵な場所ではないと気づいてしまっているわけで、そんな我々はこれからの未来に何を夢見ればよいのだろうか? まるで井上陽水の歌詞のようだが、ひとつだけ永遠の夢が残っていることに今気が付いた。「戦争のない平和な世界が見たい」。悲しい現実だが、これは人間が地球に住んでいる限り永遠に実現不可能な究極の夢なのかもしれない。(K

 

 

 

 


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