■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2007/08/16


最近、企業の危機管理に関して、考え方を根本的に変えなければならなくなってきたように思える。企業の不祥事ばかりが話題に上っているが、ほとんどのケースが会社内部からの情報リークや内部告発もしくは「チクリ」と呼ばれるような反感分子からの報道へのメール告発などにより問題が発覚しているようだ。もう企業への忠誠心などを要求すること自体がナンセンスな時代になっているわけで、一番気をつけなければならないのが内部告発ということなのではないだろうか。コンプライアンス (Compliance=法令遵守)が非常に重視されてきている最近の動向にも影響されているもので、利益を最優先し、消費者を軽視するような会社は排斥されて当然だという消費者至上主義が日本にも着実に浸透してきた結果と言えるだろう。今週、注目の的になっている北海道の銘菓『白い恋人』(日本一売れているお土産らしい)で有名な石屋製菓株式会社も、どうも内部からの告発メールが発端のようだ。最初は役員の単独指示で賞味期限切れのシールを貼り替えを行い、社長は知らなかったことになっていたが、今日8/16になって10年以上前から賞味期限の改ざん行為が実行されており、当然社長もその事実を認識していたことが判明、どんどんと墓穴を掘る方向に向かいつつある。今年1月に発覚した洋菓子チェーンの株式会社不二家も、賞味期限切れの牛乳を使用していることから問題が始まり、工場の衛生問題で食中毒を隠蔽していたりしたことが内部告発され、どんどんと泥沼にはまり、2、3ヶ月工場が閉鎖されている。ただその後一気に、社長の交代や役員の総入れ替え、外部知識者による再建のための応援団の結成、山崎製パンによる工場管理システムの援助など、組織的にも再建運動が成功したことが効を奏して、ペコちゃんブランドがなんとか消えずに済んだようである。不二家が一番恐れていたことは、2000年に起こった雪印乳業株式会社の二の舞になることだったはずだ。集団食中毒事件が発端で、不衛生な工場の実態などが内部告発などから発覚し、雪印グループ各社の全生産工場の操業が全面停止するまでに発展し、老舗乳業ブランドがほんの数ヶ月の間に地に落ち、雪印マークがほとんどのスーパーやデパートなど流通から姿を消してしまった事実はまだ記憶に新しい。それも社長が謝罪会見後の取材陣のしつこさに苛立ち、テレビ局のカメラに向かって発した苦し紛れの一言、「私は寝てないんだよ!」、この一言からブランドの崩壊が始まった。この発言は、マスコミ対策を甘く見た最悪の例になってしまったようだ。その後の他社の不祥事における謝罪会見やマスコミ対応が全く変わったように思える。ひたすら頭を下げ続け、マスコミのどんな卑劣な質問にも丁重に反発せずに対応せよというマニュアルなどがあるかのように、本音発言?は一切姿を消したようだ。ある意味では寄ってたかって獲物の骨まで食い尽くすハイエナ的なマスコミ(特にテレビ報道)のえげつない部分がこの手の不祥事企業報道に顕著になっており、あまりにも徹底的に痛めつける体質が不快に思える時がある。このくらいの報道をしないと同じようなことをしている会社がいくらでもあって、おびえさせ反省させることで、問題の再発が防止できていると言えないこともないのだが、裏読みをすると、これらの報道が過熱することにより、反対に恩恵を被る企業も必ずあるわけで、へたをするとそれらの企業のリークや内部告発に見せかけた追い落とし作戦である可能性も考えられるわけで、やはり情報の発信元についてもっと慎重に調査を行うべきだろう。今回の『白い恋人』に関しても、問屋を通さない直販システムへの変更により、利益が激増していたことが告発の一因と指摘する人もいて、いつの時代でも存在するスケープゴート的な事件かもしれないのだ。ただでさえ元気のない北海道は、雪印、ミートホープ、それに石屋製菓とずさんな管理体制の会社ばかりが全国的に脚光を浴びてしまい、なかなか治らない傷口にさらに塩がすり込まれたような悲惨な状態である。食材の宝庫と自負する北海道ブランドが大きく傷つけられているわけで、まずは抜本的な策を講じて再発を阻止する必要がありそうだ。(

 

 

 


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