■よりみち~編集後記

 


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更新日2003/10/02


エリア・カザンが亡くなった。失礼なことに、もうすでにこの世の人ではないと思っていたが、95歳だったそうだ。映画監督は長命な方が多いようだ。彼がトルコ系であることをはじめて知った。ギリシア系アメリカ人とばかり思っていたが、両親がギリシア人だったからギリシアのイメージが強いのだろう。エリア・カザンといえば、もう知らない若者が多いだろうが、マーロン・ブランドの『欲望という名の列車』やジェームス・ディーンの『エデンの東』、ウォーレン・ビーティの『草原の輝き』など、個性的でアメリカのシンボル的な男優をたくさん見出したことでも知られている。特に印象が強いのは、やはりジェームス・ディーンだ。反抗的で傷つきやすい若者像を好演し、あっという間にスターダムにのし上がった。とにかく演技が自然で特有なキャラクターを作り上げていた。現在でいえば、デカプリオ的な人気だったかもしれない。ニヒルでシャイでありながら、大胆なことを平気でやるクールガイのイメージに当時の女学生はもうメロメロだったはずだ。日本にもにわかディーンがたくさんいたらしく、矢沢永吉のキャロルなんかも、このディーンの系列のニオイがするほどだ。その次の作品が『理由なき反抗』で、これでもう完全に若者の教祖的な存在になった。いずれも1955年の作品で、私もさすがにリバイバルでしか観ていないが、高校生の時に観たこの2作品はとても印象に残っている。『エデンの東』を観て、列車に飛び乗るような家出にあこがれたし、『理由なき反抗』を観て、ピチピチのスリムジーンズとスニーカーにあこがれた。すべて自分の言いたいことを代弁してくれるような存在に思えたのだ。このカリスマ的な男優がいまだに語り継がれる理由は、3作目のエリザベス・テーラーの『ジャイアンツ』の完成直前に、好きだったカーレースに向かう途中、愛車ポルシェ・スパイダーを135キロで飛ばし、接触事故で一瞬のうちに亡くなったからだろう。ジェームス・ディーンだけは1956年当時のまま全く変わらずにファンの心の中に生き続けているからなのだ。(K