■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2005/11/24


とんでもない事件が起こってしまったものだ。例の姉歯設計事務所の事件のことだ。今回の一件でいとも簡単に建築・建設業界の常識は崩れ去ってしまった。高層建築において構造設計は縁の下の力持ちであり、構造設計家の力なくして建設プロジェクトは成り立たない。建築デザイナーはフリーハンドで自由な発想で空間を構築していく一方で、構造設計家はそのフリーハンドのデザインに骨と肉をつけて立体化していく、地道な作業で共同作業をしていく、いわば設計のコラボレーションを常にやっているわけだ。その構造設計の基本は安全と耐久であり、地震国の日本においては耐震が最重要課題となる。この常識が一瞬にして消えたのである。たった一人の発狂者(どう考えても異常だし、理解を超えている)と使命感を喪失した役所体質をしみこませてしまった民間検査機関、安くすることが至上命令の建設会社や不動産企画会社など、発狂者が生み出され、そのシステムが一人歩きしてしまう土壌が確かにでき上がってしまったのである。誰もが安価で快適な方を選ぶわけで、バブル時代の後遺症として、いかに無駄を省いて建設費を安く上げるか、シンプルで飾らないデザインで内装コストを抑えるかの競争が生まれていたことも事実である。購入する立場からすると、バブルの時代と違って、地代も下落して建設の無駄が削られたことからコストが抑えられ、リーズナブルになったと感じているわけで、誰一人安全性や耐震性が削られることなど想定していないはずだ。プロがプロの仕事を当たり前にやっていたのなら、このような馬鹿げた事件は生まれないはずだ。医者の世界にも共通して見られる傾向かもしれない。プロがプロとして認めたくない突然変異のような異質な人物が増えてきているのかもしれない。それを防止するには国家試験などのチェックでは無理だろう。やはり定期的に検査機関などでプロとして適正かどうか、プロの仕事をチェックしていく使命感を持った検査期間が不可欠なのだと思える。少なくても今回の事件を起こした姉歯設計事務所は建築業界からの追放や禁固刑、検査機関も即刻公的機関の免許剥奪、営業停止処分ぐらいは当然だろう。そして、一番の被害者である居住者を救済するために国家的なプロジェクトを立ち上げ、国の指導で建て替えや補償を行っていく必要がある。民間に委ねたことは確かだが、それも国がやるべきことの代行であり、それが問題が発生したのだから、国がケアをして当然ではないのだろうか…。(

 

 

 

 

waragutsu
■猫ギャラリー ITO JUNKO
11/19/2005更新