コスモスのピンキー
ピンキーは、この秋に咲いたピンク色のコスモスの花です。コスモスは背がたかくて、ふといくきからほそい枝をたくさんのばして、そのさきにたくさんの花を咲かせます。ですからピンキーのそばには、ピンキーと同じような花がたくさん咲いていて、風が吹くと、みんなでいっしょにゆらゆらゆれます。
ピンキーたちは、たくさんのほそい枝の先に、いろんなほうこうを向いてたくさん咲いていますから、風に吹かれて右に左に、前に後ろにとゆらゆらゆれると、みんながあちらこちらを向いてゆらゆらと、まるでピンク色の光をみんなで、あたりいちめんにふりまいているみたいになります。
ピンキーたちには花びらが8まいあります。ピンキーたちはみんなおなじように見えますけれど、よく見ると、みんなほんの少しずつちがいます。花びらのピンク色が、こいのや、うすいのや、さきの方が少し白っぽくなっているのや、うっすらと白いせんがはいっている花びらなどがあります。
8まいの花びらはまあるくきそくただしくならんでついていますけれども、花びらのかさなりかたや、となりの花びらとのかんかくなどが、ほんの少し違ったりします。ピンキーたちはピンク色ですけれども、となりのコスモスの花たちは黄色だったり、白色だったり、淡いピンクだったりします。
コスモスは、いろんなところに生えていますけれども、どちらかというと、たくさんあつまっていることが多いですから、秋になってピンキーたちがいっせいに、となりのコスモスたちと、かたをよせあうようにして咲くと、そのあたりがきれいな色でいっぱいになります。
そんなコスモスの花たちがいっせいに風にゆられると、いろんな色がゆらゆらゆれて、なんだかうっとりしてしまいます。ピンキーたちは、そうしてみんなでいっしょにゆれるのがだい好きです。
みなさんが歌を歌うとき、一人で歌ってもきもちがいいですけれども、お友だちとみんなでいっしょに歌うと、いろんなお友だちの声がかさなりあって、大きな歌声がまわりじゅうにひろがって、とても楽しくてきもちがいいでしょう。それと同じかもしれません。
草や木のおおくは、春に花をさかせますけれども、秋に咲く花もあります。ピンキーたちは、あつい夏がおわってしばらくして、とてもきもちのいい、すずしい風が吹いてきて、空が青くはれわたるころになると、いっせいに花を咲かせます。色とりどりの花をさかせます。
青い空と、ピンクや白のコスモスの花の色は、とてもよく似合います。ほんの少し冷たくなってきた風を、ほんの少しあたためるかのように、ピンキーたちは大きく小さく体をゆらして、みんなでいっしょに、あたりに色をふりまきます。
秋には晴れた日が多いですけれども、でもしとしとした雨が、なんにちもふりつづくこともあります。そんなときピンキーたちの花びらが雨にぬれて、ときどき花びらのはじから、雨がひとつぶふたつぶながれおちて、ポタリポタリとじめんにおちます。
ピンキーたちはにんげんのように涙をながしたり、声をあげて泣いたりはしませんけれども、せっかく咲いた花が雨にぬれて、水のおもさで花が、空を向かずに少しうつむいて雨つぶをおとしているようすは、なんだかピンキーたちが、みんなで泣いているみたいです。
それでもピンキーたちはそのままずっとガマンをして、雨のなかでも花を咲かせつづけて雨がやむのをまちます。雨にぬれても、花の色が雨にとけてなくなるわけではありません。ですからピンキーたちは、そうして雨のなかでも花をさかせつづけます。雨はそのうちやむからです。
雨のあとには、太陽のやさしい光がまわりにあふれ、すずしい風が吹いてきて、青い空が広がるのをピンキーたちは知っています。ですからそのうち雨がやんで、花びらの上にある雨のさいごの一粒が、ポタリとじめんに落ちたなら、もうすぐピンキーたちのでばんです。楽しい色のダンスのはじまりです。
ほらいつのまにか雨がやんで、雲のむこうからお日さまが顔をのぞかせました。ほらほら空のマドをあけはなったかのように、明るい光がピンキーたちの周りにあふれてきました。雨にぬれた花びらが、あっという間にかわいていきます。ピンキーのピンク色が太陽の光をかえして、キラキラキラキラ光ります。さあ、みんなでいっしょに歌いましょう。
ほらほら空が晴れてきた
明るい光をいっぱいあびて
風といっしょに体をゆらせて
みんなでいっしょにゆらゆらと
私はピンクあなたは黄色
私はまっしろあなたは白とピンクのしまもよう
光をかえしてゆらゆらと
ゆらゆらゆれる色と色
風とダンスをおどりましょう
光とダンスをおどりましょう
-…つづく
第6回: ギンヤンマのシュンシュン