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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第305回:アメリカへの出張は拒否する!

更新日2013/04/04



アメリカ国内ですが、今年に入って3回、学会やら会議で旅行しました。私たちが住んでいる田舎町の飛行場は、小型の飛行機しか飛んでいませんから、乗客の数も限られていて、あの嫌な安全チェックに時間を取られることはありません。

ですが、帰りは大きな街、シカゴ、セントルイス、サンフランシスコの飛行場では、長い長い列に牛馬並に並ばされて、安全チェックのために延々と待たなければなりません。おまけに私の住んでいる田舎町からはどこへ行くにも、最低1回、多い時ですとアメリカ国内なのに3回乗り換えなくてはなりませんから、目的地に着くのに、日本へ行くのと同じくらい時間がかかることがあります。

さらに、アメリカ政府が安全チェックを全面的に行っているTSAの予算を大幅にカットしましたから、ますますチェックを潜り抜けるのが遅くなり、2時間前に飛行場に着くことが義務付けられるようになりました。

不思議なのは、日本でも、ドイツでも出発30分前に飛行場に着き、すぐにセキュリティーを済ませれば充分間に合うのに、どうしてアメリカだけこんなに待たされるのかということです。早くスムーズなやり方だから、安全率が下がるというデーターはありませんから、アメリカのやり方は、ただ非能率的なだけ、そこで働いている人が、お客さん(全くそうは思っていないでしょうけど…)を大切に、的確に素早く安全チェックを行うのが仕事だという認識がないのでしょう。突然、教養のない人間に立派な制服を着せ、権限を持たせると、こうなるという典型かもしれませんね。

私だけが、年寄り臭い不満を鳴らしているのかと思っていたところ、もうアメリカなんかに行きたくないという外国人が多くなっているという記事を見つけ、うれしくなってしまいました。決して喜ぶようなことではないのですが…。

2012年の1月から10月までの間、アメリカを訪れた1,200人の外国人、イギリス人、フランス人、ドイツ人、日本人、中国人、ブラジル人を対象にした調査で(Consensus Research Group for the US Travel Association)、何とヨーロッパ人の44%がたとえ会社の仕事であっても、アメリカへの出張旅行を拒否する…とまで言っているのです。

彼らにしてみれば、入国する時、アメリカ人がスイスイと入国手続きが進む横で、外国人はまさに長蛇の列で延々と待たされ、不愉快なイミグレーションを通らなければならず、 さらにアメリカ国内を飛ぶ度に、牛どころか亀の交通渋滞の中にいるような安全チェックのノロノロ行進を体験しなければならないのですから、ヨーロッパ人がこんなアメリカの飛行場に拒絶反応を示したとしても、もっともなことです。

全体でも、43%の外国人旅行者が「もうアメリカに行きたくない」、他の人にも「アメリカに行くな」…と忠告するとまで言っています。

イミグレーション(ヨーロッパのほとんどの国々の人はアメリカ入国のヴィサは要らないのですが…)の遅さ、感じの悪さと、安全チェックで余りにも時間が取られるという理由で、アメリカを訪れる観光客を含めたヨーロッパ人の数が急激に減っています。2011年と2012年を比べると、フランス人は17%、イギリス人も7%減っています。

逆に毎年、上昇を続けているのがヴィサが必要な中国人で24%も増えています。恐らく、中国人は国内で散々鍛えられているでしょうから、アメリカの官僚的な態度や延々と待たされることなんか問題にしていないのかもしれません。普段からの鍛え方が違うのでしょうね。

こんなアメリカに行きたくない症状は、旅行業界だけでなく、アメリカ経済全体にすでに大きな影を落とし始めている…とこのレポートで警鐘を鳴らしています。

アメリカの安全チェックのやり方が、他の国に比べいかに非能率的で、非人間的であることをアメリカ人に分からせるためにも、アメリカ行き拒否反応が大きくなった方が良いのかもしれませんが……。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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