第208回:ローヤルウエディングとアメリカのローヤルファミリー
イギリスのローヤルウエディング、ウイリアムとケイトの結婚式、パレードはアメリカのテレビ、雑誌でも大変な大騒ぎでした。きっと日本では、震災、津波、はては原発で遠い国の王室の誰かが結婚するとかしないとか、花嫁のドレスがどうとかのゴシップどころではないことでしょう。
イギリス王室はマスコミにとって、他にさしたる事件のないときに紙面を埋めてくれる大切な役割がある、という人もいるくらい、新聞、雑誌の表紙になり、カラーで(カラーなんて書くとなんだか随分年寄り臭く、古臭い感じがしますね)グラビアになり、テレビではアメリカの夜中の2時だったにもかかわらず、記録的な視聴率だったそうです。
それにしても、王室のようなものを建国当時から否定しているアメリカ人にとって、皇族とか王族の概念ほど理解できないものはありません。ただ、昔から続いているというだけで、本人の人格やカリスマ性があるわけではないし、どうして尊敬しなければならないのか、とても不思議な気がするのです。
でも、アメリカ人は騒ぎ立てるのが本来好きな国民ですから、ダイアナ元王太子妃の事件のときも、今回も本国イギリスに負けないくらい大騒ぎでした。どのテレビ局も人気、タレントアナウサー、キャスターを総出で送り込み、特別実況番組を組みました。この期間、ロンドンに詰め掛けたマスコミは7,000人に及んだそうです。
それに加えて、ウイリアム&ケイト商品が盛んに売り出されています。記念のコインに始まり、セラミックの人形、ぬいぐるみ、二人の笑顔が焼き付けられた飾り物のお皿や"特別記念"紅茶カップのセット、ペンダント、ダイアナがしていてケイトに受け継がれるといわれている大きなサファイアをダイヤで囲んだ指輪と全く同じもの、これはピンキリで1億500万の注文生産のものから、19ドル99セントのレプリカまであります。
イギリスの王室はこのような馬鹿騒ぎ、溢れるような商品に寛容なのでしょうね。二人の写真が入ったローヤル・コンドームまで売り出されています。紫色のパッケージには"高貴なコンドーム""くつろいで、英国に思いを馳せよう"と金文字で書かれています(私が買ったわけではありません、宣伝を見ただけです。念のため)。
大学生の時、寮でタイからの留学生と一緒に住んでいました。中に政治的な学生もいて、熱心にタイの政治運動について激論を戦わせていましたが、保守的なグループも革新的な学生も、イザ、タイの王室のことになると、よそ者には理解できないほど、鮮やかといってよいくらい意見が一致し、敬愛の情を隠そうとしません。フランス革命のように、王様や女王様をギロチンにかけるなんて、全く想像外のことのようです。
アメリカに王室がない、とは言いましたが、人間、やはりどこかにそのような存在、誰も犯すことができない象徴を求めるところがあるのでしょうか。それが、現職の大統領家族であったり、ハリウッド大スターであったり、エルヴィス・プレスリーやマイケル・ジャクソンだったりしますが、どうにも継続性がありません。
そんな中で、ケネディー一家だけは例外で、アメリカのローヤルファミリーと呼んでも差し支えないでしょう。
JFKをニューヨークの飛行場の名前とだけしか知らないアメリカ人はまずいません。 JFKは歴史的に言って、大統領に就任していた期間が余りにも短かったので、リンカーンやルーズベルトのような偉大な大統領だったのかどうか、評価は固まっていません。
キューバのブタ湾(Bay of Pigs)にCIAの特殊部隊を送り込んだり、キューバを海上封鎖したり、キューバ人にとっては最悪の存在だったことでしょう。でも、アメリカ人は彼のようなスタンドプレーが好きですし、自国を全面戦争に陥れる可能性のあった政治的判断をしたにしろ、運良く回避できたのだから、いまさら何を言ううことがあろう、 それより大事なのは、ファーストレディ、ジャックリーヌの魅力であり、愛人だったマリリン・モンローの存在、彼の若々しさ、だと言うわけです。
今でも、出版されているケネディ関係の本、ドキメンタリー、ビデオ、DVDは他の大統領に比べ圧倒的に多く、図書館でもケネディ関係の書架は、他の大統領の本、研究書と比較になりません。
リンカーンの奥さん、家族のことはよほどの研究者でもない限り誰も知りませんが、これがケネディになると、両親、兄弟、夫人、子供たち、はてまた、暗殺者オズワルドの伝記に至るまで、それはそれは大変な情報の洪水になります。今でも、ケネディ関係の新刊書は必ずよく売れるというジンクスがあるそうです。
やはり、誰でも自分の王室を求めているのかもしれませんね。
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