■TukTuk Race~東南アジア気まま旅


藤河 信喜
(ふじかわ・のぶよし)



現住所:シカゴ(USA)
職業:分子生物学者/Ph.D、映像作家、旅人。
で、誰あんた?:医学部で働いたり、山岳民族と暮らしたりと、大志なく、ただ赴くままに生きている人。
Blog→「ユキノヒノシマウマ」





第1回:Chungking express (前編)
第2回:Chungking express (後編)

 



■更新予定日:隔週木曜日

第3回:California Dreaming(前編)

更新日2005/12/15


3月だというのにまだ寒さの厳しいシカゴを発って、オークランドに到着した。ミシガン湖を渡ってくる肌を切り裂くような凍てつく風とは違い、さすがにカリフォルニアの風は心地よい。いつ来ても思うことなのだが、カリフォルニアには心の中に何かを期待させるものがある。もちろんだからといって特に何かが起こったという経験は、今のところまったくないといえばないんだけど。ここにやってきたのにはいくつかの理由があるが、一つにはモントレーにある大学で国際関係学の修士号を取得中の友人に会うため。そしてもう一つにはその後、香港へ飛びマレー半島の端にあるシンガポールまで陸路で行くこと。

陸路で国境を越えいくつかの国々を旅するというスタイルは、飛行機である地点からある地点まで移動するという場合とは明らかに違う特別な位置を自分の中で占めている。ビジネス・トリップや時間的制約がある場合にはもちろん飛行機を利用するし、アメリカと日本を行ったり来たりという生活スタイルのせいもあって、他の人に比べれば空を飛んで移動することが多いとも思う。ただ空を飛んで移動した場合には、何かしら見逃してしまったもの、フェイントをかけたような感覚とでもいうようなものがあって違和感をいつも覚えてしまう。

空港を出てサンフランシスコ行きの電車に乗り換えるために駅へ向かう。駅前にはホームランキングになったこともある強打者ジアンビが、ハーレーダビッドソンに跨って試合に向かったというOakland-Alameida Country Coliseumがある。確かにここに来てみればわかるのだが、この辺り一帯はタンカーで運ばれてきた積荷を保管しておく巨大なストレージビルディングが立ち並び、湾を挟んで向かい合っているサンフランシスコの洗練されたイメージとは全く違う、いかにも港の荒くれ男達が似合いそうな雰囲気が溢れている。そんなオークランドの倉庫街を見下ろすように、高架橋の上をサンフランシスコまで電車は走る。

湾を跨ぐベイブリッジを渡りサンフランシスコに入ると、明らかに活気の違う景色が見えてくる。電車を降りてまずしなければいけないこと、それは今日の宿を確保することだ。アメリカの大都市の場合には、基本的に安宿の位置確認は日が高いうちにしておかなければならない。なぜなら安いものにはやはりそれなりの理由がある訳で、宿の周りの治安が良いとは限らないし、銃社会では時によっては命に関わる問題でもある。

最初に向かった先は、事前に調べておいたチャイナタウンの傍にあるYMCA。この名の宿は世界中に散らばっているが、安宿としては破格の安さという部類では決してないかわりに、とりあえずそこそこの清潔さとスペースは確保できる場合が多い。しかしながらこのYMCAは、最近女性専用になってしまったらしく、わざわざ重いバックパックを背負って坂の上まで向かったにも関わらず結局泊めてもらうことはできなかった。

そこで次の候補として選んでいた安宿へ向かったのだが、ここはすでに宿を閉じてしまっており、入り口に張り紙が一枚ひっかかっていただけというありさま。こういう宿の宿命で浮き沈みは激しく、ちょっと古い情報は全く役に立たない。最後に用意してあった3つ目の宿は、なぜだか高級ホテルが立ち並ぶ通りの一角にあるという胡散臭いもの。でもこうなったら一応ということで訪ねてみたら、意外にも親切なラテン系のおばさんが経営する小さなゲストハウスだった。入り口は高級レストランの脇に申し訳なく添えられたような狭い階段の上にありみすぼらしいが、部屋自体はレゲエかぶれのど派手な原色の黄色の壁と緑の天井を除けばそこそこのレベル。 一泊40ドルというところを10日間借りるということで、1泊35ドルにまであっさりまけてもらえた。



…後編へつづく

 

第4回:California Dreaming(後編)