■生き物進化中~カッパのニューヨーク万華鏡日記

原園 綾
(はらぞの・あや)


お友達による原園綾紹介 馬場美和子編

1.一度聞いたら忘れられない笑い声。その声は低音から高音までと幅広く、付き合いが長いと笑いの音階でその笑いの程度、質がわかります。
2.左右の鼻をきっちり噛む。人前で、思いっきり鼻を噛む事のできる貴重な人物。私は他を知らない。

2001年より、ニューヨークに滞在。20歳そこそこの学生に混じって生物学を勉強中。おさるさんを追っかけ、1ヶ月間ジャングルを駆け回っていたとか。
いつも刺激的な綾ちゃんなのだ。今度は何をやらかしてくれるのでしょう。?



第1回:帰り道はセントラルパークを抜けて
 
第2回:カッパ、アートの現場すきやねん。

更新日2002/07/04


こんちわ。フィラデルフィアに行ってきたケコ。アメリカの古き街、リバティ・ベルのあるアメリカ合衆国発祥の地。とはいえ、200年余り。新しい国だなあ。編集担当の吟子ちゃんいわく、クリームチーズとロッキーの街。私の中ではゲイの街だった。映画『フィラデルフィア』で若きアントニオ・バンデラスを彼氏に持つトム・ハンクスはエイズに蝕まれていった。ニューヨークのアパート探しで出会った不動産屋もフィラデルフィアから引越して来たばかりのゲイのピアニストだった。その2件で、「フィラデルフィア=ゲイの街」という公式成立であったのら。でもねえ、ニューヨークなら若者だけでなく、おじさんのゲイ・カップルも仲良さそうに手をつないで歩く姿をよく見かけますが、フィラデルフィアでは見なかったぞ。そういう特別地区があるんでしょうか?あっさり公式不成立なり。

フィラデルフィア美術館では、赤い画面に縦線が端に入っている抽象画で有名なバーネット・ニューマン展を見た。彼独自のスタイルに至る過程の作品やスタイルの中での変遷を大きな流れで見せるもので、ちょっと教科書的だったかな。もっと彼の赤い作品が見たかった。だって、ホントに赤いんだよ。赤く塗ったキャンバスなんじゃないの。画面が平面でなくなっちゃう。急に奥行きをもったり、こちらに迫り出してきたりする感じ。赤い画面の中に吸い込まれて吐き出されて、赤に翻弄される快感っちゅかねー。残念だったのは、今まで彼の顔を知らなかったんだけど、ビデオが上映されてて、なーんかこぎれいなインテリ頑固おやじって感じだったこと。知らなきゃよかった的人って、時々あるでしょ。歌手とか小説家とか……。作品がいいのに顔見てガッカリ。

バーネット・ニューマンの赤に吸い込まれるの図

郊外にあるバーンズ・コレクションにも立ち寄って、所狭しと壁にぎっしりかかっている作品をザーッと見た。あーん、もっとゆったりとしたスペースに飾ればいいのにーって感じ。おまけにルノワールだらけでもう、後半はお菓子のカンカンを見ているようだった。あ、でもセザンヌは良かったよ。きっとルノワールの桃のようなタッチで描く女の子の顔など見ていると、セザンヌの面の感じが際立って、キュービズムにすら見えた。フィラデルフィア美術館にある作品と関連するものもあるから両方見るといいのかな。

一番面白かったのは、Fabric Factory and Museumという布のプリント工場を現代アートの製作の場と展覧会場にしている所。プリント工場部分では常にアーティストの作品を製作している。布を広げて作業をする長ーいテーブルが3本ならび、いろんなプリント地が広げられている。その日はアシスタントの人たちがプリント作業を続ける一方で、別の作品担当者が白い紙でカバンやランプなどのオブジェを包んで、型を取っていた。その作品シリーズはすでに展示中で、三輪車や電話や椅子といった、どちらかというと堅い素材で出来ている物が全て紙で細かい所まで写し取られていて、遠くから見ると石膏にも見える。でも近付くと中身がない、脱皮した後の皮の様。やっぱりねえ、創作の現場の面白さって格別ですね。アーティスト自身がいなくても、なにかワクワクする空気がある。どんな作品つくりたいの?なにが必要なの?こうしたら便利かな?などと、アートの現場仕事が蘇り、しばし興奮したカッパじゃった。

 

→ 第3回:ダンス三昧の夏、NYの夏