■現代語訳『風姿花伝』
  ~世阿弥の『風姿花伝』を表現哲学詩人谷口江里也が現代語に翻訳

第一回: 風姿花伝

更新日2010/01/21


風姿花伝

 

 観る人の寿命を延のばす働きがある申楽さるがくという芸能の、そもそもの源が何かを調べてみれば、ある者は、仏陀のおられたインドに起源があると言い、またある者は、神代の時代から我が国に伝えられてきたものだと言うけれども、どちらにしても、時が移り変わり、幾多の時代を経てきたものであるだけに、ほんとうのところ、それがどんな風に始り、伝えられてきたかという事に関しては、いくら調べてもなお、学びきれないものがある。

 最近、誰もがもっともらしく好んで言うのは、推古天皇の時代に、聖徳太子が秦河勝はたのかわかつに命じて、天下安全の祈願のため、また同時に、人々の心を晴らし楽しませるため、六十六番の遊宴うたげを行い、それを申楽と名付けて以来、代々、この遊あそびを成り立たせるなかだちとして四季の風月の情景を用いてきたものをいうということだが、その後、その河勝の子孫が、営々とこの芸を受け継ぎ、そのことによって、大和の春日神社、近江の日吉ひえ神社の神事として申楽を奉納する神職に就いたとのこと。

  今日もなお、和州・大和や、江州・近江の申楽仲間が、両神社の神事をさかんに執り行うのは、そのためとさ れている。だから、古きに学ぶにせよ、新しいものに価値を見いだすにせよ、決して、風流を外はずれれないがしろにする事などあってはならない。賎しい言葉など使わず、その姿が幽玄であってはじめて、達人であると言ってよい。 この道を歩み、遠くにまで到達しようとする者は、まず第一に、能以外のことをしてはならない。

  ただ、歌道は、風月を折り込んで延年の喜びをもたらす申楽の飾りともいうべきものであって、何にもまして、大いに役立てるべきものである。 ともあれ、本書は、私が若いころから今に至るまでに、見聞きし学んだ稽古から覚え得たことなどを束ねたものであり、そのおおよそのことを、書き記したものである。




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