のらりインタビュー 第1回:安斎肇さん

みんなが喜んでくれることが最高に幸せだし、平和なことだよね

「のらりインタビュー」第1回目は、
こちらの期待通りの遅刻で
取材場所にあらわれてくださった
イラストレーターの安斎肇さん。
こんなペースで、世知辛い世の中を、
いかにして渡り、 どこへむかっていくのだろうか・・・?



安斎肇(あんざい・はじめ)
イラストレーター。
1953年、東京都生まれ。
桑沢デザイン研究所デザイン科終了後、麹谷・入江デザイン室、SMSレコードデザイン室を経てフリーに。1986年から「ハロルド・コミックス」主宰。テレビ朝日系「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」のソラミミストとしても活躍。
絵本「LOVE!LOVE!LOVE!」、「タビダチくんがゆく」(共にアスペクト刊)、iモード携帯待ち受けサイト「★Ai-Yai-Ya!」展開中。
個展『4Peace―サッカーとケータイと鼻歌と私―』が東京・原宿LAPNET SHIPで6月28日~7月21日まで開催予定。

(以下敬称略、Nはのらり編集部です)

いきなりダジャレなんて言えないよー

N :先日の「タモリ倶楽部」で、「遅刻しなくなった」とおっしゃってましたが・・・。
安斎:そうなんですよ、予定の組み方を変えてから、だいぶ遅刻しなくなりましたね。
今日も、自宅から余裕をもって来たんですけど、早く着き過ぎてサッカーショップで時間つぶしていたら、つぶし過ぎちゃって(笑)・・・すみませんでしたねえ。

N :「タモリ倶楽部」と言えば、安斎さんのダジャレが光っている!(笑)。
安斎:もうただの親父ギャグなんですけどねえ・・・。
そもそもタモリさんがダジャレが嫌いだから、わざと言ってみようということで始まったんですよ。最初がんばってダジャレ言ってみたら、タモリさん、すっごい怒り出しちゃって、「バインダーの角で頭叩いてやるッ!」とか言われて・・・叩かれなかったですけど(笑)。
それが今では、スタッフからカンペで「ダジャレ言ってください!」とか指示がでたりして・・・。いきなりダジャレ言えって言われても言えないですよー。林家ぺーさんじゃあるまいし。
僕の親戚で一日中ダジャレばっかり言っているおじさんがいて、それこそ説教まで全部ダジャレ。その人は、みんなに呆れられちゃってるんですが、あるとき、そういうおじさんがかわいく思えてきて。呆れられてるっていうのがすごいおかしくって、逆にひょっとしたらこれはおもしろいことなのにって気がついたんですよ。
でも僕自身は、あんまりダジャレはいわないようにしてるんですけどね~。


いろんなものが変に聞こえるわけじゃありません

N :そもそもソラミミストになったのは、いつごろなんでしょう?
安斎:「空耳アワー」は、最初は、「あなたにも音楽を」っていうテーマ音楽をつけるコーナーだったんです。それで僕も遊びで「テーマ音楽評論家」って肩書きで番組に出ていたら、勘違いした人からCMのテーマ音楽の仕事の話がきてしまって・・・。実体はないですから、コーナーが「空耳アワー」にリニューアルされるときに、「ソラミミスト」に変えた。
タモリさんは、吉永小百合さんが好きな「サユリスト」だから、僕は空耳の好きな「ソラミミスト」ってことで。いろんなものが変に聞こえる人じゃありませんよ~。
ソラミミスト歴は、かれこれ10年ですが、本業のイラストレーターは四半世紀もやっているのに、ソラミミストとして紹介される。本当にもう、失礼しちゃいますよ(笑)。


「しっぽがリアルだわねー」なんて言われて

N :ソラミミストは実体ないですもんね。本業の方のイラストレーターになったきっかけっていうのは?
安斎:親父が肖像画家だったので、他にほめられるものはないけど、小学校の頃からかろうじて絵だけは、うまかったんですよ。僕、馬の絵がすごくうまくて(ダジャレじゃないですよ)、親戚のおばさんに「しっぽがリアルだわねー!」なんてほめられて図に乗ってるうちに、しっぽだけどんどん大げさになって、無意味に踊りだしてる絵描いたりして・・・。たまたま午年だったときに、大好きな女の子に馬の絵を描いてあげたら、ほめられたうえに年賀状で「ありがとう」ってお礼まで言われたの。それで段々絵が自分の中で特別なものになっていったんです。
僕は、けなされるとやらないタイプなので、絵だけはほめられるから、ほめられる場所を選んでいくうちに今のスタイルになったんです。僕の仕事にかかわった人が楽しんだり、面白がってくれたのが大きいですね。自分がもっと楽しむことでまわりも含めてみんなが楽しく思える、それがまた次につながったり結びついたりする・・・・。
僕は、けなされたり怒られたりえばられたりするのが大ッ嫌いなんです。そういう人とは付き合いたくない。とにかくみんなが喜んでることが最高に幸せだし、平和なことだと思うんですよ。ぬるいでしょ。

N :でも仕事って楽しいことばかりではない・・・。
安斎:昔、すべてを完璧にやりたいって思っていた時期もあったんですよ。
レコード会社のデザイン室にいた最初の1年は、もう必死で大変でした。印刷屋さんとかにすごい怒ったり、デザイン室のゴミ箱蹴ったり、校正紙を破いたりとか。

N :今のダジャレを言ってみんなを笑わせてくれる安斎さんからは、想像できないですね。
安斎:「そういう風に仕事はやるもんだ」って教えられたから・・・。で、やってみたの。そしたらやっぱり全然駄目、なんか後味わるくって。
僕はいつも時間のことで計算があわないから、大変なことになっちゃうんだけど、そこを頑張るのは、当たり前のこと。でも「楽しくやってもいいものができる」っていうのに気がついたんです。

N :安斎さんのイラストのキャラクターは、ポップで見ているこちらも楽しくなってきてしまう。そのアイディアというのは、どこからきているんでしょう?
安斎:テーマがあるものだったら、まず最初にダジャレにしてみる。お題が「日本地図」だったら、「チーズが2本」とか(笑)。
キャラクターの場合は、前日に会った知り合いを描いてしまう。友だちシリーズです。
以前アシスタントの子に描いたことを伝えたら「あのかわいいキャラクターかと思ったらこの不細工なほうですか? すごいショックですぅ」なんて言われちゃったけど(笑)。
今の人って個性的で面白いんですよ、いろんなものをいちどきに吸収できる時代でしょ。僕らのころなんて、みーんなダサダサだったから。「おまえ、どこの床屋行ってる? おれんとこ、スポーツ刈り下手なんだよー」なんて言っちゃって。
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