■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと

金井 和宏
(かない・かずひろ)

1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
Lis. master's voice

 


第1回:I'm a “Barman”~
第50回:遠くへ行きたい
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第51回:お国言葉について ~
第100回:フラワー・オブ・スコットランドを聴いたことがありますか
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第101回:小田実さんを偲ぶ
第102回:ラグビー・ワールド・カップ、ジャパンは勝てるのか

■更新予定日:隔週木曜日

第103回:ラグビー・ワールド・カップ、優勝の行方

更新日2007/09/13


いよいよ、ラグビー・ワールド・カップが始まった。ジャパンは初戦、優勝候補国オーストラリアを相手に、3対92というスコアで敗れた。私の店(4年に一度RWCの期間だけテレビを置いている)で観戦していたラグビーをよくご存じでないお客さんは、「ひどいものだね」と嘆かれていたが、私たちファンにとっては、充分に「想定内」の結果となった。

いつも通り、前半は良いゲームができていたが、後半になるとディフェンスの部分でところどころにほつれが出始め、大量失点に繋がった。ただ、最後までディフェンスに行こうとする意識は高く、切れて諦めることなく相手選手に食らいついていったのは、評価できると思う。

全くメンバーを代えて臨む、次のフィジー戦に望みを託そうと思う。

次に、やはり気になる優勝争いについて見ていきたい。過去の優勝チームと回数を上げるとオーストラリア2回、ニュージーランド、南アフリカ、イングランド各1回になっている。

ファイナリストになった回数で言えば、オーストラリア3回、ニュージーランド、フランス、イングランド各2回、そして南アフリカ1回ということになり、W杯では、今まで20数カ国の国々が参加しているのに、決勝戦に残ったのはわずか5ヵ国しかない。

今大会の開催国フランスは、上記の通り、過去のファイナリストの中で唯一優勝のないチームで、しかも二度のチャンスを逃している。

さて、今回は大胆にもそのフランスを優勝候補と目していたが、何と開幕ゲームでアルゼンチンに敗れてしまった。アルゼンチンも世界に通用する、しっかりと実力をつけてきたチームであり、対フランス戦は過去8年間で4勝1敗、けっして大番狂わせと言うには当たらないが、フランスにとっては限りなく大きな誤算だったろう。

フランスのいるプールDは、他に最近の強豪国アイルランドもいて、いわゆる「死のプール」と呼ばれている。アイルランドも難敵で、このチームに負けると決勝トーナメントへの出場は絶望的となる。フランスとしてはアイルランドを倒し、そのアイルランドにはアルゼンチンに勝ってもらって、ポイント差でプール1位を狙いたいが、極めて可能性の低い他力本願の話になる。

仮にプールDを2位通過した場合は、決勝トーナメントで勝ち進むには(他の国々が順当に上がってきた場合)、準々決勝でニュージーランド、準決勝でオーストラリアと当たり、そして決勝では南アフリカとの対戦という南半球の最強列強3ヵ国との対決が強いられる。

初戦での敗戦は、フランスにとってはこれほど一大事だが、それでももし優勝と言うことになれば、大会史上永遠に語り繋がれる奇跡的快挙となるだろう。

今大会の大本命は、やはりニュージーランド。フォワード、バックスともに役者揃いの総合力で秀でたチーム。ただ、毎回優勝候補と言われ続け、実は第1回大会以来20年間優勝から遠ざかっているのは、ここぞという試合でいつも躓き、コケいるからである。

とんでもなく強いのだが、どこか子供っぽいチームなのだ。そこがファンには魅力なのかも知れない。決勝がトーナメントではなくリーグ戦であったら、間違いなく毎回優勝だろう。私は準決勝のオーストラリア戦に勝てば、今大会の覇者になる可能性は高いと思っている。

南アフリカは、フォワード8人の総合体重が1トンに迫ろうかという、出場チームの中で極めて「デカい」チーム。予選プールのプールAでは、前大会の優勝チームながら全く力を落としたイングランドを蹴散らすことだろう。

決勝トーナメントに入っても、(他のチームが順当に行けば)決勝まで南半球のチームとは当たらないクジ運の良さで、ファイナリストまで上っていけるのはほぼ間違いない。

失礼ながら、全く好きではないラグビー・スタイルなので面白くない話だが、優勝の可能性は充分にある。

南半球の中で最も好きなチーム、オーストラリアは今回も安定感のあるチームを作ってきた。先ほどのニュージーランドと対照的に大人のチームで、ここぞという時の試合の巧さは抜群のものがあり、W杯では唯一複数優勝している国である。

ただ、出場メンバーのキャップ(国代表同士の試合に出場した選手に一つずつ与えられる)数の合計が700を超えるというベテランが多いチーム。新旧交代がうまくいっていないという気がする。

準決勝で宿敵ニュージーランドに勝ったとしても、決勝での南アフリカ戦ではかなりタフなゲームを強いられるだろう。個人的には、ぜひ優勝して優勝回数を他のチームとはグッと引き離して欲しいと思っているのだが。

最後に、我がスコットランド。ここのところずっとベスト8止まりに甘んじてきて、年々国内の人気も落ちている状況で、このままでは間違いなく地盤沈下が起きると考えられる。

そこで、私は大手術をするためには今大会は敢えて予選プールで敗退しなければならない、とずっと主張し続けてきた。落ちるところまでしっかり落ちないと、スコットランドのラグビー協会は何一つ動き出さないからだ。

ところが、いざ大会が始まり、試合前のフラワー・オブ・スコットランドが演奏されると、ただ闇雲に応援してしまうのだ。大局を考えなければと思いつつも、サポーターのかなしい性癖かも知れない。

 

 

第104回:ラグビー・ジャパン、4年後への挑戦を、今から