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■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと

第379回:流行り歌に寄せて No.185 「ちょっと番外編~テープレコーダー購入」~昭和43年(1968年)

更新日2019/08/15


今回は少し趣向を変えて、この昭和43年に我が家が初めてテープレコーダーを購入した時の話を書いてみたいと思う。

この年は、私が中学1年生になったため、父親が、私の英語の発音練習のためにテープレコーダーをプレゼントしてくれた。今考えると、当時父の月収が6万円前後だったのに、2万4、5千円もする電化製品は、かなりの贅沢品だったと言える。

今回調べてみたところ、それがソニーのマガジンマチックpen(TC-1160)という機種だったことがわかった。ソニーは、その前々年の昭和41年、マガジンマチック100(TC-1009)という最初のコンパクトカセット(後のカセットテープ)レコーダーを発売し、それは従来のオープンリール式に比べ、はるかに軽量で至便性の高いものだった。

そして、短期間に急速な勢いで技術開発を進めて、私の買って貰ったのは、マイクが本体に内蔵している画期的なものだった。

先ほどからテープレコーダーと書いているが、ソニーでは「テープコーダー」という言葉を使っていた。そのテープコーダーには「ガイドテープ」というものが付いていて、その製品の特長などを、音楽などを織り交ぜながら紹介していた。

今でも、その内容はところどころ記憶しているが、今回調べていると、YouTubeに私が買ってもらったTC-1160よりも少し前の機種のガイドテープが鮮やかに残されていて、その内容はかけている曲以外はほぼ同様だったので、しっかりと記憶を辿ることができた。

製品の紹介はディスク・ジョッキー方式で、担当はラジオのパーソナリティーの第一人者であった高崎一郎だった。最初にGSのザ・バロネッツの『サロマの秘密』を紹介、演奏される。

実はこの曲は、フォーリーブスの『オリビアの調べ』、アダムスの『旧約聖書』とともに、歴史に残るCBSソニーレコードの国内盤の第1弾として、昭和43年9月5日に発売されたものであった。3グループともに、それはデビュー・シングルだったのである。ソニーとしては、ガイドテープに入れてでも、大いに売り出したかったのだろう。

1番しか入っていなかったが、YouTubeで確認することができたので、ここに掲載したいと思う。「北欧ムードの新星GS」というキャッチフレーズで、当時のザ・スプートニクスなどのエレキバンドの影響があるのではと思う。

「サロマの秘密」  若木香:作詞  鈴木邦彦:作・編曲  ザ・バロネッツ:歌  

北国の 悲しい日暮れ

黒ユリ揺れて 花も泣いてる

?からの 恋する少女

サロマのほとり ひとりで祈る

再び会える あてもないのに

夢見る君は 君は今は

オリオンの星の光の 

冷たい空を 見ているだろうか


歌声から歌詞を起こしてみたのだが「?」の部分はどうしても聞き取れない。そう言えば、50年以上前の当時も聞き取れなかった。

さて、そのガイドテープは、その後ジェット機の音と虫の声を流し、どんな大きな音でも小さな音でも正確に録音できることをアピールしていた。そして香港のフェリー、スイスの牧場、オランダの手廻しオルガン、ベルリンの教会の鐘の音などを聴かせて、ちょっとした世界旅行の気分にさせてくれたりもした。

そして、いくつかの和洋楽器の演奏のサワリの部分を紹介、最後にCBSソニーレコードの洋楽盤から、ボブ・マグラスの『スカーボロー・フェア』を流して終わるのである。今回、この歌手の名前を思い出すことに一番苦労した。

このテープコーダーにいろいろなものを吹き込んだ記憶がある。録音した自分の声を聞いてみると、随分と異なった声に聞こえ困惑したものだ。そういえば、まだ声変わりをするぎりぎり前の、私の声が入ったテープもあったはずである。

ラジオ番組も録音した。まだラジカセではないので、ラジオの前にテープコーダーを置いて録音するのである。しかも、まだ真空管ラジオしか家になく、音質は期待できたものではなかったが、本当に楽しく聴いていた。

ロイ・ジェームス司会の『不二家 歌謡ベストテン』は、毎週日曜日に必ずと言って良いほど聴いた。録音したのは、尾崎紀世彦の『また逢う日まで』、あおい輝彦の『二人の世界』、湯原昌幸の『雨のバラード』や、由紀さおりの『生きがい』などがランクインにいた時だとはっきりと記憶にあるが、昭和46年のことだろうと思う。

私の父方の祖父母の声を録音したことがある。二人を入れて、父母、妹の私たち家族4人が大相撲のテレビ観戦をしていた時だった。金剛関が大活躍していた場所だったが、確か昭和47年前後だったと記憶している。祖父は44年前、祖母は26年前に他界している。

あの頃のカセットテープ、両親のことだからまだどこかに保管してあるのだろう。先ほどのガイドテープの宣伝文句にもあった「音のアルバム」として、それを開いてもう一度聞いてみたい思いはあるが、実際に目の前にテープを置かれたとき、それを再生するかどうか。多分しないような気がするのだ。


-…つづく

 

 

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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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