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■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと

第343回:流行り歌に寄せて No.148「勇気あるもの」~昭和41年(1966年)

更新日2018/01/11



年の始めに、吉永小百合さんの曲をご紹介できるのは、幸運なめぐりあわせである。私のサユリスト歴は、意外に長い。昭和42年のTBSテレビ系列のドラマ『娘たちはいま』あたりから素敵な女の人がこの世にいるものなんだな、と意識し始めた頃から数えると、50年以上続いている。

もちろんタモリさんが自認するように「サユリさん一筋」というまでにはいかず、他の女優さんたちを好きになったことは数多くあるが、一貫して彼女のファンでいさせてもらっている。これは、かなり幸せなことだと思う。

ドラマの前年、今回の曲が発売された昭和41年10月30日当時に放映された(放映期間は昭和41年10月1日~11月26日)という日本テレビ系列『吉永小百合ショー』は、残念ながら、私たちの地方では観ることができなかった。如何ともし難いことなのだが、これは悔しい。

発表されたリアルタイムでの、トニーズとともに小百合さんが歌う『勇気あるもの』を、ぜひ見聞きしたかったものである。


「勇気あるもの」 佐伯孝夫:作詞 吉田正:作曲・編曲 吉永小百合 with トニーズ:歌
       

この道は長いけど 歩きながらゆこう

石っころだらけでも 歌いながらゆこう

ごらん 向日葵は 空へ 空へ 太陽へ

友の背中を たたくとき 友と

手と手を握るとき この掌に

勇気が湧いてくる 湧いてくる

 

しあわせは何処にある 探しながらゆこう

果てしない旅だけど 笑いながらゆこう

ごらん 夕焼けの 空は 空は 茜色

友とかなしみ 語るとき 明日の

たのしさ語るとき このくちびるに

勇気が湧いてくる 湧いてくる

 

ごらん 進みゆく 道の 道の 砂ほこり

友の顔にもついている 僕の

胸にもついている この靴音に

勇気が湧いてくる 湧いてくる

湧いてくる

 

「ひまわっりは そっらへ そっらへ たいようへ」と、小百合さんにスタッカートをつけて声を張り上げられたりしたら、勇気が湧いてこないはずがないではないか、とおバカなサユリストは考えたりする。

とにかく、この曲のイントロは仰々しいほどにダイナミックである。クラシックのピアノ協奏曲かと思えるほどの迫力で始まる。その後いきなり、叙情的なギターに合わせてトニーズのハーモニーが続き、歌唱へと入ってゆく。

『トニーズ』とはどんなグループだったのだろうか。このグループは昭和39年に松竹映画に所属する、俳優の三上真一郎と新人俳優たち荒木健太(トニー・荒木)、栗原喜明、秋元栄次郎、杉本哲章をメンバーとして結成したバンド、ザ・ダイヤモンズがその母体となっている。このバンドには、一時期田村正和や竹脇無我も参加したこともあるそうだ。その後、三上真一郎を除いた上記4人でトニーズとして活動を開始した。

そして松竹を退社してホリプロと契約をして、この『勇気あるもの』がデビュー曲となった。松竹時代は花開くことのなかった新人の俳優さんたちが、いわゆるグループ・サウンズの走りのような形で歌手となる。そしてレコード大賞受賞者であり、当時既に日活の大人気女優だった吉永小百合さんとデビュー曲を歌えたのは、私にとっては羨ましい限りのことである。

私がこの曲のことをしっかり認識したのは、発売から1年近く経った名古屋市港区の小学6年生の修学旅行でだった。京都・奈良をまわるお決まりの旅行で、あまり馴染めないクラスメイトたちとそれほど楽しい思い出のないものだった。この旅行で覚えているのは、両親への土産に買った金閣寺の額入り写真と、バスガイドさんの歌声である。

このガイドさんが『勇気あるもの』を歌ってくれた。歌の上手な方だった。私は転校をして間もなくで、大きく環境も変わり、友だちもできずにかなり屈託した思いでいた。この歌にはなぜか懐かしさを感じ、心にジンとくるものがあり、いくぶん救われる思いがした。そのときは小百合さんの曲だとは知らなかったと思う。

さて話は変わるが、先日亡くなった早坂暁さんの追悼ということで、NHK総合テレビで『夢千代日記』を放映していた。昭和56年の作品で、名作である。抑揚の効いた演技、今考えるとこの頃の小百合さんが一番艶があって素敵だったと思う。当時、彼女は35歳。

今は72歳にして、未だに美しい方である。昨年で芸能生活60周年を迎えたという。私にとっては、小百合さんがどの演技をしていた、どんな歌を歌っていたかということが、その時どきの時代のポイントになっている。

例えば、映画『愛と死をみつめて』の頃は東京オリンピックがあったな、僕は小学3年生だった。『人生の夜明け』という歌を歌っていた頃は大阪万博で、僕は中学3年生だった。テレビ『夢千代日記』が放映されていた頃は国際障害者年で、僕は障害者福祉の業務に携わっていたな、という風にである。

これからも、かっこよく言えば、地味に坦々とサユリストを続けていきたいと思っている。

-…つづく

 

 

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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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