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■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと

第335回:流行り歌に寄せて No.140「若者たち」~昭和41年(1966年)

更新日2017/09/14


昭和41年2月から始まった、テレビドラマ『若者たち』は回を重ねるごとに視聴率を上げていった人気番組で、現在では私たちの世代の者にとっては伝説的とも言える作品である(らしい)。最後に逃げ口上を入れたのは、私がこの番組を観ていないからである。

今では地上波だけで「信越放送」(昭和27年 開局:以下同)「長野放送」(昭和43年」)「テレビ信州」(昭和55年)「長野朝日放送」(平成3年)と四つの民放テレビ局を持つ長野県も、私がいた頃は「信越放送」(SBC)一局のみだった。

同世代で東京近郊の生まれの人々は、テレビを見始めた頃からすでに5局の民放テレビが存在していたのだから、昔のテレビ番組の話になると俄然こちらの知らない番組が多く、今まで少し悔しい思いをしてきた。私は『パパはなんでも知っている』も名犬の『ロンドン』『リンチンチン』も観ていない。だから今まで『若者たち』も、長野県人は観られなかったものと思い込んでいた。

ただ、SBCはTBS系列の局だが、県内一局のみ放映という理由から、他系列の人気番組もバランス良く提供してくれていた。『鉄腕アトム』も『日本プロレス中継』も『特別機動捜査隊』も他系列の番組だったが、家族でいつも観ることができた。

今回、もしやと思い調べたところ、『若者たち』はフジテレビ系列の番組だったが、当時しっかりSBCで放映してくれていた。「観られなかった」のではなく「観なかった」だけのことだった。これにはかなりショックを受けた。なんとも人の記憶や思い込みというのは曖昧で、いい加減なものである。

「若者たち」 藤田敏雄:作詞 佐藤勝:作・編曲 ザ・ブロードサイド・フォー:歌

1.
君の行く道は はてしなく遠い

だのに なぜ

歯をくいしばり

君は行くのか そんなにしてまで

2.
君のあの人は 今はもういない

だのに なぜ

なにを探して

君は行くのか あてもないのに

3.
君の行く道は 希望へとつづく

空に また

陽が昇るとき

若者はまた 歩きはじめる


空に また

陽が昇るとき

若者はまた 歩きはじめる


テレビ放映されているときの原題は『空にまた陽が昇るとき』だった。歌っているのはザ・ブロードサイド・フォー。黒澤明監督の長男で「クロパン」こと黒澤久雄が、成城大学在学中に、高校の同級生である鶴原俊彦、横田実とともに昭和39年に『ザ・ブロードサイド・スリー』を結成した。翌年5月には『フォーク・ソング・ベスト・ヒット』というアルバムを日本コロムビアから発売する。これは、日本のモダン・フォーク・グループとしては最初のアルバムとして歴史に残っている。

その年に大学の同級生、山口敏孝を加えて『ザ・ブロードサイド・フォー』と改名、翌年の9月にこの『若者たち』が大ヒットするが、まもなく、黒澤の留学によりバンドは解散している。彼らも前回のマイク眞木と同様、カレッジ・フォークの第一人者である。

作・編曲の佐藤勝は『用心棒』『椿三十郎』『天国と地獄』など、戦後の黒澤映画を始め石原裕次郎主演映画、またほとんどの岡本喜八作品など、実に数多くの映画音楽の作曲家として名を成した人である。詞がついた作品はそれほど多くない中で、黒澤明の息子に曲を提供しているのは興味深い。

作詞の藤田敏雄は、劇作家、演出家として日本の創作ミュージカルを代表する人物である。歌謡曲では、雪村いづみの『約束』、岸洋子の『希望』などを手がけている。作詞、作・編曲ともに、日頃からオーケストラを相手にスケールの大きな音楽を作っている人であったことは、この曲を後世まで残している一因なのだろうか。
テレビ番組の話題に戻る。今年の話題作である倉本聰脚本の『やすらぎの郷』。その住人として、菊村栄役の石坂浩二、真野六郎役のミッキー・カーチスとともに、釣り糸を垂らしながら余生を送る老人、岩倉正臣役を演じる山本圭がいる。堅実な演技の主役級のバイ・プレーヤーだ。

その山本圭が、その名を広く世間に広めたのが『若者たち』での佐藤三郎役。まだ25歳だったその頃の演技を、しっかりと観てみたい気がする。私は同じ時期に放映されていた『ただいま11人』の大家族の長男、早乙女保役のことはうっすらと覚えている。こちらはTBSの直系の番組だった。

-…つづく

 

 

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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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