第838回:アメリカで最も名前が知られている日本人は…?
二昔前なら、筆頭は間違いなくヨーコ・オノでした。
今、日本の首相の名前をあげることができるアメリカ人は、余程の日本通だけに限られているでしょう。日本に留学している学生さんでも、首相がキシダさんと言える人はマレかもしれません。
少しばかり文学に興味があり、その中でも少数派の外国文学を読む人、しかも東洋は日本の文学に大いなる関心を払っている極わずかな人は、ハルキ ・ムラカミを知っている程度でしょう。一昔前なら、ミシマ、カワバタの著作は読んだことはないけど、名前だけ知っている老人たちがいましたが、それも昔話になってしまいました。
ほんの数年前なら“イチロー”の名を知っているスポーツファンはたくさんいました。でも、それはスポーツの中でも野球に興味のある人に限られていました。
ここに大スターが登場しました。もちろん、“ショウヘイ・オオタニ”君です。
西海岸、とりわけロスアンジェルス界隈ではズーッと有名でしたが、ここにきて急に野球のファンだけでなく、全米にその名が轟くようになりました。アメリカの英雄であるベーブ・ルースを凌ぐような選手が日本から来ていたのかとやっと気づいたようなのです。投手で大打者というのは全く別の運動神経、筋肉を使うので、両立させるのがとても難しいことのようなのです。それをアメリカの大リーグで奇跡的に見事に両立させたのが“ショウヘイ・オオタニ”君というわけです。
私自身、熱心な野球ファンとは言えませんが、テレビのニュースになり、東部の新聞、『ニューヨーク・タイムズ』、『ワシントンポスト』、少しばかり硬派の週刊誌『The Week』にまで移籍の記事が載ったので、目を通したところ、驚いたのは彼の野球の実績ではなく、もっぱら移籍の契約金が年に70ミリヨンドル(=7,000万ドル、100億円相当? あまりに桁が多すぎて円換算が間違っているかもしれませんが…)というとてつもない金額にショックを受けたのです。
巨額のお金が動くプロスポーツでも最高新記録をマークしました。莫大なお金が動くアメフトでもジョー・ブローズが年55ミリヨンドル、人気者のクォーターバック、パトリック・マホームズでさえ10年契約で450ミリヨンドルです。サッカーではクリスティアーノ・ロナウドが、年に46ミリヨンドル、メッシの方は65ミリヨンドルです。ショウヘイ・オオタニはそれを抜いてトップに躍り出たのです。
サッカーやアメフトではその選手のユニホーム、マフラー、ジャケットなどなど、ありとあらゆる関連グッズ、それに選手がスポーツ用品、サッカーシューズ、運動靴、T―シャツなどをスポーツ関連企業と特約しますから、そちらの方が契約した年収より多くなります。例えばロナウドの場合、90ミリヨンドルをスポーツ用品などのスポンサーから得ていると言われています。
いやはや、プロスポーツはとんでもない莫大なお金が動く世界なんですね。
オオタニ君が得る莫大なお金をどのよう運用するのが一番お得か、日本に持っていっても、アメリカの銀行に入れても、どちらにせよ、ガッポリ税金を取られるし、そこをうまく運用する方法など、余計なお世話なのですが、日米の税理士、会計士らが記事を書いています。当の本人はそんなマスコミに惑わされることなく、スーパースターにしてはという条件付きですが、至って地味な生活態度を貫いているそうです。
先日(2024年01月28日)のBBWAA(全米野球記者協会)の晩餐会で、2分間という短いモノでしたが英語で、用意した原稿を見ながらでもとても上手に挨拶をしており、ざわついていた会場が一瞬シーンとなり、オオタニ君が挨拶を終えた時は満場拍手、喝采でした。上がりも、トチリもせず、彼はなかなかやるのです。
ESPN(アメリカのスポーツ専門テレビチャンネル)の記者、ジェフ・パッサン氏はアメリカの150年の野球史上で初めて現れた本当の両刀使いだと持ち上げ、『USA Today』(全米に配布されている大新聞)のボブ・ネイサンゲイル記者はどうやってそんな情報を掴むのでしょう、オオタニ君は年収ではなく、リタイアするまで680ミリヨンドルを要求したが、ドジャーズ側がさらに上乗せし、年70ミリヨンドル(10年で700ミリヨンドルになります)の回答をしたと書いています。
『ニューヨーク・マガジン』のウイル・ライチ記者は、オオタニ君は稀に見るスポーツマンではあるが、現在、彼は30歳、ということは10年後40歳になり、いくら彼がストイックな選手生活を送ろうが、何が起こるかわからないのがプロスポーツの選手で、この契約は悲惨なことになる可能性があると書いています。
『ニューヨーク・ポスト』のライアン・ダンレヴィ記者は、オオタニ君の年俸は、小国の12の国家の国家予算より多いと指摘した上で、すでにドジャーズの入場券の売り上げは40ミリヨンドルを上回っており、オオタニ効果が現れているから、ドジャーズは十分潤うだろうとしています。
日本を代表する人物、アメリカで最も名前が知られているのが童顔の野球選手、“ショウヘイ・オオタニ”君でも、それで良いかという感じがします。
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