■くらり、スペイン〜イベリア半島ふらりジカタビ、の巻

湯川カナ
(ゆかわ・かな)


1973年、長崎生まれ。受験戦争→学生起業→Yahoo! JAPAN第一号サーファーと、お調子者系ベビーブーマー人生まっしぐら。のはずが、ITバブル長者のチャンスもフイにして、「太陽が呼んでいた」とウソぶきながらスペインへ移住。昼からワイン飲んでシエスタする、スロウな生活実践中。ほぼ日刊イトイ新聞の連載もよろしく! 著書『カナ式ラテン生活』。


■移住を選んだ12人のアミーガたち、の巻(連載完了分)

■イベリア半島ふらりジカタビ、の巻
第1回:旅立ち、0キロメートル地点にて
第2回:移動遊園地で、命を惜しむ
第3回:佐賀的な町でジョン・レノンを探す(1)
第4回:佐賀的な町でジョン・レノンを探す(2)
第5回:佐賀的な町でジョン・レノンを探す(3)

■更新予定日:毎週木曜日




第6回:パエージャ発祥の地、浜名な湖へ(1)

更新日2002/11/28


スペインごはんは、とーっても美味しい。なにより、日本人の口に合う。だいたいもっとも有名なパエージャからして、もし横川駅で『新発売! 峠の洋風釜飯』として売られていても違和感なさそうなものだし。

スペインでは、米がよく食べられる。ジャポニカ種の現地米は、豚の血で作られた黒いソーセージ「モルシージャ」に必ず入っているし、ものすごくポピュラーなデザートで「アロス・コン・レチェ」なんてのもある。これ、直訳すれば「米と牛乳」、米を砂糖と牛乳で煮て冷やしたもの。プチ・ダノンでおなじみDANONE社の商品にもある。私はどうも小学校の給食のさっぱり合わない牛乳とごはんという悪夢のような組み合わせを思い出して、ダメなのだけど。

で、ごはん料理の王様が、やっぱりパエージャ。あぁあの黄金色に輝く米! 食欲を誘うサフランの香り! 食感の良い鍋底のオコゲ! エビをむしった指をベロリとなめるときの野獣感! 

もともと、私はいちばん好きな食べものが「米」。塩と焼き海苔だけで、2合くらいは軽く食べる。ステロタイプにイメージするに、戦後の子どもみたいに、米が大好きなのだ。ということで、もう決定。今回は胃袋のおもむくまま出かけて、食ってやる。パエージャの本場で、美味しい米料理を。ガオー。

調べてみると、パエージャ発祥の地は、バレンシアの南にあるアルブフェラ湖のほとりの小さな村。人口は約1200人、そこにレストランが30軒もあるという。おぉ、本場らしさ満点。というわけで、行き先はこの、エル・パルマールという村である。

エル・パルマール村のあるバレンシア州では、カタルーニャ語に似たバレンシアーノという言葉が話されている。イスラム教国に支配された時期のあと、1238年にアラゴン王ジャウメ1世が征服しため、文化面でカタルーニャの影響が強いのだとか。諫早弁が鍋島藩主の佐賀弁に似ているのと同じだ、って、かえってわからごとなるばいな。

州都バレンシアは、紀元前138年のローマ時代に作られた町で、現在は人口76万のスペイン第三の都市。地中海沿いにあり、気候は一年中温暖。ヨーロッパ屈指の灌漑農業地帯で、オレンジや米は輸出するほど。近年は欧州チャンピオンズ・リーグの常連となっている強豪サッカーチーム、バレンシアC.F.の本拠地でもある。ちなみにアイマールという選手が、天使のように可愛くて大好き。

これまで2度訪れたことがあるのだが、空がすきっと青くて広い川が流れていて中世の城門があって街路樹にオレンジがなっていてすぐ近くが海で、とにかく心底すがすがしい気分になれる大好きな町だ。


そこから海沿いを南に17km南下すると、アルブフェラ湖に着く。湿地の広がる湖は全体が自然公園となっていて、数多くの野鳥を観察できることでも有名。でも私はどちらかというと、鳥は見るより食べたいけどな。

湖は海のすぐ傍にあり、一部は海とつながっている。汽水っていうのだっけ、とにかく浜名湖みたいなものだ。そして浜名湖と同じく、ウナギで有名。実はスペインでもっとも高価な食べもののひとつが、このウナギの稚魚。長い白魚のような稚魚をオリーブオイルとニンニクで土鍋煮にする料理を、もしマドリーの高級レストランで食べたなら、灰皿くらいの一皿で1万円取られてもおかしくない。高級料理の代名詞的存在だ。

そして、湖の埋め立てられた場所では、稲作が行われている。ウナギと米だよ、鰻と白飯。私が『アルブフェラ湖』と耳にすると『蒲焼丼』を思い出すのも仕方ないとしておくれ。しかもこの湖のほとりには、パエージャ発祥の地エル・パルマール村もあるのだよ。私が『アルブフェラ湖』と聞くとこの哀しい性を背負うた胃袋がきゅうと切ない音を漏らすのも、仕方がないとしておくれな。


バレンシアっ、オレンジっ、ウナギっ、パエージャっ、コメっコメっコメ。口笛吹きながら出発の準備をしていると、バレンシア郊外に住む友人からメールが。

「エル・パルマール村行くの? この季節なら、野鳥入りのパエジャにありつけるぞ」

おおっ。やっぱりバードはウォッチング用だけじゃなかったのね。やたー、美味そう。口笛にトリっ、トリっ、のフレーズも追加して、旅行の準備は完了。天気予報を眺めつつ、出発の日を待つ。コメっコメっコメ♪

テレビのニュースが翌日のバレンシア天気を「晴れ、ただし嵐」と告げるのを聞いて、電話でバスを予約。バレンシアは、マドリーからだとほぼ西、ちょっとだけ南に350kmの場所。だいたい東京‐名古屋間。バスは4時間で着く予定とか。行きが特急、帰りが普通、なぜかともにノンストップで、往復で36.45ユーロ(約4500円)なり。

いつも昼食を自宅で食べるダンナのためにどっちゃりカレーを作りおき、「私の分は残しておかなくていいよ。なんせパエージャの本場で食べてくるからさ」と不敵に笑い、目覚ましを5時半にセットして就寝せり。

 

 

第7回:パエージャ発祥の地、浜名な湖へ(2)

 
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