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■新・汽車旅日記〜平成ニッポン、いい日々旅立ち
 

第617回:四国完乗 − 徳島線 阿波半田駅〜徳島駅 −

更新日2017/02/16


雨は小降りになったようだ。たった1両の気動車は、どの駅でも屋根のないところに停まる。わざわざ屋根のない位置を選んでいるように見える。停止位置は車両を信号に検知させる都合もあるかもしれない。もう少し工夫してあげてもいいと思う。

穴吹駅で運転士が交代した。ここが徳島側と阿波池田側の運行の境目らしい。この列車は直通だけど、この駅を境に列車番号が変わる。山瀬で特急列車と交換した。剣山7号だ。相手が2分遅れたため、こちらも2分遅れて発車する。


穴吹駅、讃岐名物ぶどう饅頭が気になる……

山瀬の次が学。入場券が5枚でごにゅうがく。受験のお守りとして人気の駅である。現在は無人駅だから入場券を買わなくても入場できる。受験シーズンだけ販売所が設置されるほかは、徳島駅とJR四国主要駅の旅行センターで買える。通信販売もあるという。学問というより商売の縁起がありそうだ。新型車両の普通列車と交換した。

雨が上がって鴨島駅。ここで高校生が乗り込んできた。座ったグループと立ち話のグループがある。私はボックス席にひとりだけ。2人組や3人組が来るかと思ったけれど、ひとりも来ない。このボックス席は、ふだんは彼らの憩いの場だ。申し訳ないと思うけれど、1日だけだ。許せ。


学駅、受験シーズンに話題になる

牛島駅で普通列車と交換する。徳島と穴吹の間は上下それぞれ30分間隔で列車が走る。つまり約15分ごとにすれ違う計算だ。1時間も走れば4回すれ違う。計算通りである。牛島の駅名標の向こうに見えた煙突のてっぺんに、大きな球がついている。これは知りたい。スマホの地図を調べると、建物はあるけれど名称がない。さらに調べてみたら森永乳業の工場だった。牛島だけに牛乳か。すでに閉鎖されているらしい。


牛島駅、奥の球体は牛乳工場の施設。用途は不明

ここで、ついに私のボックスに一人、おっさんが座った。車窓に目を向けると、ずいぶん前から吉野川とは離れている。山も遠ざかり、扇状地に入った。田畑と新しめの住宅が散在する景色が続く。府中と書いて“こう”と読む駅に停まった。府中と書く駅は全国に四つある。しかし“こう”はここだけだ。


府中駅、駅名標の後ろの看板は“こくふ街角博物館”

川を渡って、次は鮎喰。女子高生が連れ立って降りていく。さっき渡った鮎喰川は、鮎がたくさん捕れる川だろうか。建物が増えて田畑と住宅の比率が逆転した。なるほど、鮎喰川が徳島市街と近郊の境界線になっている。さらに進むと、戸建てばかりの建物にアパートが混じり、建物が大きくなっていく。都市へ近づく車窓である。蔵本駅は対向式ホーム。都市近郊の構えであった。


鮎喰駅、ここから市街地になる。降車客も多い

大きなマンションが現れ、線路は上り勾配になり、川の鉄橋を渡って高架になる。いよいよ徳島市中心部へ乗り込もうとしている。車窓左に高徳線の高架線路が現れて、合流すれば佐古駅だ。徳島線を踏破した。これで目的はすべて達成。四国の鉄道を制覇した。しかし余韻に浸るまでもなく列車は発車する。なんだかあっけない。佐古で下車してもよかったか。停車時間は長く、私の決断を待っているようだ。と、思ったら、特急列車に追い越された。高松発のうずしお17号に先を譲った。そのための停車だった。


佐古駅、徳島線の終点、私の四国完乗記念駅となった

高架線はまた川を越えた。徳島は水運で栄えた街のようだ。新町川といって、この川の河口に、和歌山行きのフェリーが発着する港がある。その河口の少し南、小松島港も近畿との船便で栄えた。そこから吉野川の本流を幹線として船便があり、町では小規模で穏やかな川や運河が使われた。四国八十八か所霊場の1番札所の霊山寺も、旧吉野川とその支流を船で向かってたどり着ける。

列車は高架線から降りた。踏切がある。連続立体交差は2006年から検討されているという。私が前回訪れた年だ。調整が難航しており、完成目標は2030年代中盤という。そういえば先月、国土交通省はリニア中央新幹線の着工を認可した。リニアも先の長い話だけど、名古屋で開通した頃も徳島の踏切はなくならない。


大きな踏切。車線も多く、朝夕の交通量は多そうだ

車窓左側の線路が増えていき、車両基地が見えた。緑色の新型気動車が顔を並べる。特急用気動車もある。子どものように気持ちが高ぶる。追いかけて大人の感想がやってくる。高架になったら、車両基地をどこに作るのだろう。精神年齢は揺れるけれど、列車は静止した。定刻通り、16時24分に徳島着。


徳島駅構内に入った。車庫の列車たちに迎えられる

駅舎から最も遠い4番線に着いた。隣の3番線は鳴門線の普通列車。向かいの2番線は特急うずしおが停まっている。この並びも楽しい。まだ明るいから、この中のどれかに乗り継ぎたい。しかし、今日は徳島空港から帰る。なんとなく、国内全空港の訪問を意識し始めている。2006年は高知空港で降りて高松空港から帰った。今回は松山空港で降りて徳島空港から。これで四国全県の空港も制覇だ。


徳島バスの空港行き。所要時間は約30分

17時15分発の空港行きバスに乗るつもりだったけれど、定刻到着とバス乗り場の近さのおかげで16時55分発に乗れた。あっ、そういえば、2006年に徳島で泊まったとき、眉山ロープウェイに乗り損ねた。うっかりしていた。奥祖谷のモノレール、うどん、そうめん、祖谷そばも逃している。やっぱり、四国は再訪すべき島だ。


徳島空港に着く頃には日が暮れてしまった
最終便にすればロープウェイに乗れたかも

 

第617回の行程地図

 


2014年11月23-26日の新規乗車線区
JR:197.7Km
私鉄: 68.8Km

累計乗車線区(達成率)
JR(JNR):20,933.0km (93.67%)
私鉄: 6,271.2km (88.26%)

 

 

 

 

  

 

 

 

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杉山 淳一
(すぎやま・じゅんいち)
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1967年生まれ。東京出身。京浜急行沿線在住。1996年よりフリーライターとしてIT、PCゲーム、Eスポーツ方面で活動する。「新汽車旅日記」をきっかけに鉄道方面にも進出した。「鉄旅オブザイヤー」最終選考委員

<<杉山淳一の著書>>

■連載完了コラム
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〜書き言葉のマーケティング
 
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デジタル時事放談
〜コンピュータ社会の理想と現実
 
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■鉄道ニュース(レポーター)
マイナビニュース
ライフ>> 「鉄道」
発行:マイナビ

 

■著書
『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法: 時刻表からは読めない多種多彩な運行ドラマ!』


列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法
杉山淳一 著


『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。』 〜日本全国列車旅、達人のとっておき33選〜』

ぼくは乗り鉄、おでかけ日和
杉山淳一 著


『みんなのA列車で行こうPC 公式ガイドブック (LOGiN BOOKS)』

みんなのA列車で行こうPC 公式ガイドブック
杉山淳一 著


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