かお
杉山淳一
(すぎやま・じゅんいち)

1967年生まれ。信州大学経済学部卒業。株式会社アスキーにて7年間に渡りコンピュータ雑誌の広告営業を担当した後、1996年よりフリーライターとなる。PCゲーム、オンラインソフトの評価、大手PCメーカーのカタログ等で活躍中。

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第14回:ネットカフェという名の戦場

インターネット喫茶は、ISDNの普及期に流行しかけて不発に終わった。しかしいま、新しい形になって再び注目されている。ブロードバンドコンテンツを体験したり、LAN環境でネットワーク対戦ゲームを楽しんだりする場所として生まれ変わっているからだ。東京・渋谷にあるNecca渋谷店では、ブロードバンドを利用したイベントスペースも用意されている。ここではゲームメーカーやユーザー団体が主催するネットゲーム大会がしばしば開催されている。 プロゲーマーを目ざすBRSRK氏も、ネットカフェで開催されているゲーム大会に積極的に参加している。プレーヤーのレベルが高いと、プロスポーツやレースのように、観戦しているだけでも面白いのだ。今回はBRSRK氏がプレーヤーの立場でゲーム大会をレポートする。

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先日、『Tribes2』というゲームのネットカフェ店舗対抗戦が行われた。参加した店は、ゲームを売りにしているインターネットカフェのNecca渋谷店と秋葉原店、デジログラボ堺筋本町店、Cafe Jnet New New だ。経営母体の違う店舗同士が共同で開催されるところが面白い。ゲームを通じて店舗をピーアールし、お互いの親睦も深めようということなのだろう。

俺は"廃人軍団"と"Deadly Drive"の仲間のなかから3人ほど誘い、Necca秋葉原店でエントリーをした。各店舗12人の選手がエントリーし、参加総数は50人ほど。ゲーム大会は店単位で開催されることが多いのだが、今回はさすがに人数が多い。俺たちは会場に入ると、さっそく使用するパソコンのセッティングを開始する。ゲームが始まる前の待ち時間では、参加者が作ったサーバーで1対1の勝負をし、共にテンションを上げていく。

『Tribes2』は、さまざまな武器や乗り物を駆使して敵を倒すゲームだ。ネットワーク対戦ゲームには、相手を殺した回数を競うルールと、相手の陣地にある旗を取ってくる"旗取り合戦"がある。今回の大会のルールはいたってシンプルな旗取り合戦で、様々な乗り物や武器を使用して敵の旗を強奪し、自軍の陣地まで運び、国旗掲揚台の旗にくっつけるとチームにポイントが与えられる。しかし、自軍の旗が盗まれている場合は取り返さなければポイントが加算されない。このルールは殺しあうテクニックだけではなく、攻撃と守備の役割分担や、旗を持った味方の援護などの要素があり、スポーツ性が高くなっている。

試合開始前に秋葉原店チームはおおまかな役割をと作戦を決める。「俺が最初に爆撃機を操縦、敵陣を爆撃し、その間に陸上部隊が敵の旗を強奪」を基本として作戦を立てた。全員で攻撃しに行けば自分の陣地が手薄になる。しかし、全員で守備に徹してもポイントにはならない。誰が何をすべきか、分担を決めておくことが大切だ。自分の頭の中で戦場の地図を思い浮かべ、何回もイメージトレーニングをする。最短で、かつ、迎撃されにくい飛行ルートを探した。

開会式が始まり、本戦開始の合図が出された。いざ戦闘がはじまると、自分の指は緊張に震え、コントロールもおぼつかない。敵との闘いというよりも、自分との闘いだと痛感する瞬間だ。大きく深呼吸をし、イメージトレーニング通りに爆撃機を操縦、仲間に合図を出し爆撃を開始し、敵からの攻撃を切りぬけ、陸上部隊が旗を強奪したのを確認し、仲間の逃走を援護する。

その後は自軍の旗を防衛し、敵が攻め入れないように固める。初めて作った即席のチームだが、良いメンバーが揃っていたため全体の雰囲気が良かった。口で言わずとも何をしたいか解る雰囲気だ。こういった状況のチームはフィーリングだけでメンバーのひとりひとりが何をすべきか解ってくれる。第1試合、第2試合、第3試合と順調に勝ち進み、我等が秋葉原チームは優勝した。

一番大変だった敵は最終試合のNecca渋谷店。ここの参加者は日本でも上位の選手が数多く参戦していた。ひとりひとりの動きがうまくて、試合内容も途中までは一進一退の繰り返し。もし、チームの連携が数秒でも悪くなっていたら、我らが秋葉原店は優勝していなかっただろう。

やはり、こういう大会に参加し、様々な人と触れ合い、プレーを実際に見るというのは非常に重要だと思う。普段ネットでしか会わない人達でもこういった機会があれば会うことが出来、さらに初めて会う人とも交流が深められる。秋葉原チームとして初めて会った戦士たちは戦術に長けていて、様々な戦法を繰り広げてくれた。彼らは日本最古のTribesクランSTJのメンバーだった。

大会に出て、楽しんで、友達を作り、オンラインでの再会を誓う。「今回は味方だったけど、次に会ったときは、俺がお前を倒す」と心に決めて……。

BRSRK

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私はこの戦いを、彼のライバルチームとなっていたNecca渋谷店で観戦していた。Necca渋谷店では大型スクリーンに戦場を投影し、観戦者も楽しめる工夫が見られた。ゲームは苦手と言う人も、ぜひいちど観戦してほしい。プロゲーマーの卵たちが真剣に戦う姿は、スポーツ選手のようにたくましい。

 

→ 最終回:人と機械の分業


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