第454回:ニワトリと卵の味
私たちが近所の農園から卵を買うようになってから、もうかれこれ5、6年になります。それまではスーパーで高いなーと思いながら、一体どれだけ違うのかわからないままフリーレンジ(ケージの中ではなく、外を駆けずり回っているニワトリ)の卵を買っていました。
山裾に住むようになってからしばらくして、郵便局…といってもトレーラーの中に私書箱が並んでいて、皆そこまで郵便物を取りに行くのですが、そこに大きな告知板があり、猫、犬がいなくなった、心当たりの方はOOOXXXへ電話してと写真入りで張り出してあったり、春のポトラック・パーティー(各自が食べ物を持ち寄るスタイルの集まり)の告知、売りたし、買いたしの紙が貼り付けてあったりします。マクドナルドさんの卵、ニワトリはそこで知りました。
電話をすると、「アアー、よく自転車に乗ったり、走ったりしている東洋人の奥さんか」と、ウチのダンナさん、すでにこの界隈では有名になっている気配でした。卵を譲ってもらいに彼の農園に行ったところ、ちょうど豚がお産をしたから見ていかないかと言うのです。大きなネズミほどしかない10何匹の子豚が母豚のおっぱいを懸命になって吸っていました。
他にバッファロー、羊、牛も飼っていて、ニワトリはそこいらじゅう勝手に駆けずり回っているのです。犬も大小あわせて5、6頭以上いましたが、結構ニワトリや他の動物たちと仲良くやっているようでした。ニワトリはフリーレンジと銘打つのがアホらしくなるほど、超フリー、野生に近い人生ではなく鶏生を送っていました。
そして鶏卵です。まず殻が固く、割ると色の濃いキミがしっかりと盛り上がっているのです。ああ、そういえば元々卵はこんな味だったんだと、昔、おじいさん、おばあさんの農園でとれた卵の味が蘇ってきました。
今、アメリカのニワトリはマクドナルド農園のように個人的な、本当にこれでやっていけるかと、こっちが心配したくなるような極零細用養鶏以外、すべて工場みたいな巨大な鶏舎で飼われているものです。鶏だけではありませんが、アメリカ国内で販売されている食用肉の80パーセントは、生産性を挙げるため抗生物質を食べさせ抵抗力を付けさせたものです。
養鶏業者、鶏肉工場?としては、病死せずに早く大きくなってくれればいいのですから、鶏の餌は薬漬けになろうが知ったことではありません。1960年に鶏、ブロイラーが成人ではなくて成鶏?し、肉にするまで63日かかり、大きさは3.4ポンドでしたが、2011年には47日で成鶏し、しかも5.4ポンドの大きさなのです。
養鶏業者にとっては、抗生物質サマサマです。短い期間でより多くの肉が採れるのですから、こんなすばらしいことはない…というわけです。
ところが、当然の成り行きでしょうけど、抗生物質が効かないバクテリアが育ち始めたのです。現在、スーパーで売っている鶏の53パーセントにイーコライ(E.
Coli)ビィールスを抑えるための抗生物質が見つかっています。イタチゴッコのように、イーコライビィールスに抵抗力が生まれ、それを殺すためにさらに大量の強い抗生物質を食べさせているのです。
その抗生物質をふんだんに含んだ肉、卵を私たちが食べているのです。抗生物質だけではありません、牛、豚、鶏にアメリカではヨーロッパで使用禁止になっているホルモンを盛んに使っています。結果、ECへの国はアメリカ産の牛肉などの輸入を全面禁止しています。
プエルトリコに住んでいた時、同僚の先生の息子さん、12-13歳だったと思いますが、彼のおっぱいが膨らみ始め、私よりズーット豊かになってきました。お医者さんは、それは最近の若者に珍しいことではなく、ホルモンがたっぷり入った肉類を食べているせいだ…との診断でした。
私たちが通常スーパーで買う肉類は、ホルモン、抗生物質などに侵されたものばかりなのです。幸い、私の住んでいるところは土地だけは広々としていますから、いくらでも自給自足に近い生活ができる環境です。野菜を作り、鶏も充分飼うことができるのです。
引退し、自分の食べ物を自分で作るのが私の夢です。
そこで早速、マクドナルド農園で見習い農婦として研修?させてもらうように頼み込んできました。ウチのダンナさん、「ウヘ~、そうなるとオレ、オメーの農奴、奴隷になるのか…」と今から嘆いていますが、当たり前です、新鮮でおいしい安全なものを口したいのなら、汗をして働かなければなりません。
第455回:結婚しない人たち
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