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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第406回:中国からの移民? or 侵略?

更新日2015/03/26



中国経済が一挙に花開き、資本主義の国々を尻目に急激な成長を遂げています。共産党の理念と世界中の企業を買占め、億万長者の数はアメリカについで世界第二番目に多いことと、どのような関連があるのか、納得のいく説明を聞いたことがありません。いまや、中国はバブル期の日本を凌ぐ勢いで、世界中に投資の雨を降らせています。

自由市場、自由経済を謳ってきたアメリカ国内でも中国資本の進出は著しく、アメリカを買い漁っている…侵略だ…と、マスコミが書き立てています。2000年から昨年まで中国がアメリカに投資した金額は430億ドル(1ドル=120円に計算すると、5兆1,600億円相当)になります。

注目を集めたのは、中国のネット販売会社Alibabaがアメリカ本土に195億ドルを投じたニュースです。Alibabaは元英語の先生だった、ジャック・マーさんが創設、所有する会社で、アレヨアレヨという間に巨大産業にのし上がってきました。私も同じ教師として、どこでジャック・マーさんとこんなに違いが出てきたのか知りたいものです。

アメリカ人はアメリカの会社、アマゾンやe-bay、航空券やホテル、レンタカーの手配会社、Expedia, Orbitz, Hotels.com などは世界中に進出していながら、いざ他の国の資本がアメリカに入ってきたとなると、パニックに陥り、騒ぎ立てる傾向があります。日本がロックフェラーセンターやコロンビア映画、ハワイやカルフォルニアのゴルフ場を買い漁ったバブル期の時も、アメリカでは大騒ぎしました。  

往年の?日本企業のアメリカ進出は潮が引くように、日本に引き上げていきました。そんな波を乗り越え、ホンダ、トヨタ、ソニーはアメリカに定着しました。中国企業のアメリカ進出は、バルブ期の日本が行ったものと少し様相が異なります。

日本では企業として、日本のどこかで会社のエライサンが集まり、我が社も、日本国内でお金が余ってきたことだし、ひとつアメリカへ打って出てみようではないか…といった、一種の表看板をアメリカに建てる意味と、日本での税金逃れ対策として海外に支店を設けたり、進展を図った企業が多かった…ように見受けられます。

そうでなければ、常識はずれの巨額でロックフェラーセンターを買った三菱地所が買った価格の半値以下で、元の持ち主に売ったりしたことが理解できません。雨後の筍のごとくアメリカにやって来た日本の企業、銀行、商店、商社が、さっさと店をタタミ、引き上げてしまいました。

ところが、中国の企業はアメリカに大きな市場を求めて来ているようなのです。それに責任の所在がはっきりしない日本企業と違い、会社の持ち主、オーナー自らが、乗り込んできています。

一番中国からの投資が多いのはカリフォルニア州で、すでに248社が乗り込んできています。Googleに迫り、追い抜く勢いのサーチエンジン会社"Baidu"は、社主のRobin Liさんの肝煎りで、147億ドルを投資してアメリカの前進基地を設立しています。

狙い目は、未来に目を据えたハイテック、クリーンエネルギーで、風力発電の風車とその関連建設、ソーラーパネル会社、これからの車、携帯電話、iPhone、iPadに欠かせない、リチュウムイオンの電池会社などに集中しています。

2000年から昨年2014年末までに、中国からアメリカにやってきた企業は896社になります。

私の大学に来る中国の学生さんたちと日本人留学生との間に大きな違いがあります。 中国人はできる限りというのか、なんとしてでもアメリカに残ろう、永住しようとしますが、日本人の学生は留学の期間が終われば、アメリカ人と結婚してしまった人?以外は、すぐに日本に帰ってしまいます。

日本企業の人たちも3、4年もアメリカで働くと、会社の方が彼を、彼女を呼び戻し、日本に帰っていくケースが多いのです。 そのままアメリカに永住し、骨を埋める(古い表現ですね~)人はとても少なく、子供の教育は日本で、老後は日本で…と考えているようなのです。

そこへいくと、中国人は違います。華僑の伝統があるのでしょうか、アメリカに出てきた以上は、ここに永住し腰を据えて企業を発展させ、アメリカ人になりきるつもりで来ています。

アメリカはよく言われるように、移民で成り立ってきた国です。私の先祖もスコットランドやヨークシャーから出てきました。後からも、アイルランド系、ドイツ系、イタリア系、そして今、メキシコなどの中南米からの移民が続々とやってきてます。  今度の中国人のアメリカ進出は、たっぷりお金を持った人が、ノウハウをもった企業とともに、世界でもトップクラスの高い教育を受けた、先端技術を持ったエンジニアを引き連れてやってきたのです。

この現象は経済進出というより、新しいタイプの移民集団と言った方が当たっているかもしれません。彼らは、アメリカに良い刺激を与え、より豊かなアメリカを造ることに寄与していくことでしょう。

 

 

第407回:国有地って誰の土地?

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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