第806回:スマートな人? スマホ?
外来語の中でも自然な日本語のように使われている言葉がたくさんあります。テレビ、ラジオ、ステレオ、チャンネル、マスコミ、チェックイン、チェックアウト、ウエアー、パトロール、ドライバー、イメージなどなど、数え上げたらキリがないほどです。
それとは別に、日本の義理のお姉さんたちが聞いたり、読んだりしても、スンナリ意味が掴めなさそうな外国語をそのままカタカナで表記している言葉もかなりあります。例えば、プリミティブ、デディケイト、リキッド、チョーク、グローバル、クリエイティビティ、スパラルなどなど、何も外国語をカタカナで書かなくても、ちゃんと日本語があるのに…と思わずにいられません。
モノを書く人たちは、自分たちの狭いサークル内で通用しているカタカナ語が一般の人にも通じると思ってしまうのでしょうか、それともカタカナ語を多用すると、どことなくハイカラ(これ、外来語なのかしら?)な雰囲気があるとでも思っているのでしょうか。
すべての言語は、互いに影響し合い、取り入れあったりして時代の流れの中で形成されていくものです。そうは言っても、言語は誰にでも分かるように使うのが基本だと思うのです。
日本でもボランティアという言葉は自然に受け入れられ、使われています。逆に、慈善事業行為と呼ぶと、なんだかやたらに偉いことをやる宗教団体か政府が絡んでいそうな雰囲気になってしまいます。ボランティアと言うと、隣のおばさんが空いた時間に人助けをしている語感があるように響くのではないかしら。
外来語が元の国で意味していたのとは、別に独立した意味を持ち、日本語化してしまうこともあります。
例えば、スマートは元々英米語のsmartから来ていますが、このスマートもイギリスとアメリカで意味というか、使われ方が違います。元々イギリス語を取り入れてきた日本は、スマートと言うと、スラリ、ほっそりとしたカッコイイ外見を意味するようですが、アメリカ語では主に賢い、機敏な、小利口な感覚に使います。
どちらかといえば、深遠な考えをする人、哲学者をスマートな人だとは呼ばず、あの人はスマートだと言うと褒めたことにはなるのですが、抜け目がなく、素早い、小なまいきな感じ、表面的な立ち回りが上手な人の印象です。ですから、アメリカ語では超デブをスマートな人と呼ぶこともできます。
“smart aleck”と言うと、逆に“知ったかぶりをする人”“自惚れの強い人”を指し、悪い意味になってしまいます。“smart aleck”はアメリカでよく使われます。それだけ“知ったかぶり”をするアメリカ人が多いからなのかもしれません。
すっかり日本語になってしまったスマホは元々スマート・ホーン“賢い電話”という意味だったと思いますが、誰が言い出したのかスマホはすっかり溶け込んだ日本語になってしまいました。日本語で素早く外国語を取り入れ、しかも日本流に縮めて日本中に広げる柔軟性にはため息が出ます。
イギリス英語ではモーヴァイルホーンと呼んでいますが、昔、米語ではセルホーンそしてスマートホーンになり、今ではただホーンと言えばスマホのことになっています。第一、電線を経由している電話を使っている人の方が珍しい時代になってしまいましたので…。案外“スマホ”は世界的に使われる造語になるかも知れませね。
レンガのような大きさの携帯電話で、アンテナを引き出し使っていた時代ははるか昔のことのように思えます。それだけ、私たちはスマートになってきたのでしょうか?
第807回:アメリカン・ダイエット
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