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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第265回:飛行機の旅の憂鬱

更新日2012/06/21



初めて飛行機に乗ったのは、高校生の時、アイゼンハワー大統領が始めた、"People to People"という、アメリカの高校生にもっと世界を見せよう、世界の若者にアメリカを知ってもらおうというプログラムに参加して、ヨーロッパに行った時のことです。

その時、私の親戚一同や友達が30-40人も飛行場に見送りにきたものです。恐らく空軍にいた叔父を除いて、私が民間の飛行機に乗った、郎党一族で一番最初の人ではなかったかしら。

それが今では、また飛行機? 嫌になってしまうと感じるようになってしまいました。 おまけに私が住んでいる田舎町は、丁度、デンバーとソルトレイクシティーの中間にあり、車でデンバーに出るにはロッキー山脈を越えなければならず、冬の間は雪、雪崩で道路が封鎖されることが多く、東のソルトレイクシティーへ行くにも長いバッドランド(悪い土地)を横切らなくてはなりません。どうしても飛行機に頼らなければならないのです。

おまけついでに、私も大学で古株になり、会議や学会に出かけることが多くなりました。そして私の両親はカンサスシティー、お姑さんは日本ですから、飛行機に乗る機会がとても多くなりました。

以前、飛行機で旅をするのは決して嫌なことではなかったのですが、最近は憂鬱になります。まず、2時間前に空港に着かなければならず、チェックインの長い列の後で、また安全チェックの長い列に並ばなければなりません。アメリカのほとんどの空港では、この安全チェックのやり方がとても乱暴な上、傲慢で、牛を追うカウボーイの方が牛に優しさと思いやりがあると思えるほど、牛馬以下の扱いを受けます。

それで旅の出端をくじかれ、やっとターミナルに入ると、今度は飛行機に乗る時、ファーストクラス、ビジネスクラス、何とかゴールド、プラチナ会員などを優先に乗せ、やっと庶民、貧乏人クラスが乗り組んだ時には、すでに上の手荷物入れは一杯で、バックを置くところを探すのに四苦八苦します。

どうしてでしょうか、このごろは航空会社も経済効率に目覚めたのか、いつ乗っても満員状態です。そして、あのツッケンドンを絵に描いたようなアメリカのキャビンアテンダントの態度は何なんでしょう。その上、おデブが多いこともアメリカの飛行機会社の特徴です。少なくともお客さんの肘や肩にぶち当たらないで通路を行き来できる程度の体型を保ってもらいたいものです。ここでは、あえて彼女たち、彼等の年齢のことは私も歳ですから触れないで置きますが…。

飛行機とどうしても関わり合って暮らさなければなりませんので、どの航空会社が良いとか悪いとかが気になります。Airline Ranking http://www.airlinequality.comで航空会社のランキングをつけて発表しています。

それによると、上位5位、5つ星が与えられた会社は、すべてアジアの会社なのです。Asiana, Cathay Pacific, Hainan, Qatar, Singaporeです。このランキングは予約の受付から、チェックインカウンター、機内のサービス、到着時間、チェックインした荷物が出てくるまでの時間など、総合点をつけたものです。日本のANA とJALはこの次のランキング4つ星クラスです。

日本に行く時、飛行機の中ですでに日本が始まるのは、日本の航空会社のキャビンアテンダントたちが、ニコヤカにしかもテキパキとお客さんに接しているからでしょう。 彼女、彼らの働きぶりをみているだけでも気持ちがよくなります。

それから、空港のランキングも見逃せません。国際空港のランキングでもやはり上海空港、ソウルのインチェン空港、シンガポール空港、3つともアジアの空港がトップスリーを占めています。

日本の空港では、地方都市の空港ランキングで名古屋の中部空港が10位に入っています。名古屋空港は日本に着き札幌行きに乗り換える時、またその逆の航程で何度か利用しましたが、私たちのお気に入りの空港です。

全体のレベルは低くなりますが、アメリカ国内の航空会社で、到着時間の正確さでも、チェックインした手荷物がベルトコンベアに出てくる時間でも、決してトップどころか10位にも入っていないのに、いつも上位にランクされる会社があります。サウスウエスト航空です。

ランクが常にトップクラスなのは、ただ陸上勤務の人も、キャビンアテンダントもニコヤカに乗客と接しているからだそうで、そんな対応一つで、飛行機の旅の小さなストレスなど吹っ飛んでしまうのでしようね。

企業、とりわけ"サービス業は人なり"をサウスウエスト航空は、サービスを知らないアメリカで実践し、高い評価を受けているですから、これからアメリカの航空産業もアジアに見習って変わってくれるといいのですが…。

 

 

第266回:この村、この町、売ります!

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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