第590回:スーパーリッチな世界の億万長者
日産自動車のゴーン会長が脱税容疑で逮捕されたニュースは、本家ルノーのあるフランスだけでなくアメリカにさえ大きな衝撃を与えました。ルノー株がゴーンさん逮捕のニュースとともに15%も下がったほどです。日本ではもっと大きなショックを与えたことでしょう。なんせ潰れかかった日産を建て直したゴーンさん、まさに救世主のようにアガメタテラレてタテマツラレていましたから…。
彼の日本だけでの年収が99億円を越していたのを、48億円ほどしか申告していなかったというのが容疑のようです。個人所有の企業は別にして、日本の大企業でそんな大それた給料を貰っている人はいません。トヨタ、ホンダ、ソニーの社長さん、会長さんでも、ゴーンさんの何分の1、10分の1以下の年収です。
そこで、私自身には全く縁のない世界のことだと知りつつも、『フォーブス』誌の“世界億万長者ランキング”を覗いてみました。2018年度の統計ですが、年収が1ビリヨンドル(1,100億円相当かしら、あまりに天文学的数字なので、換算がスムーズにできないです)のスーパーリッチな人が世界に1,826人いるのだそうです。
『フォーブス』誌が自ら認めていることですが、この統計に載らない、税制の確立していない国の王族、ドル換算にできない資産を持っている人、裏街道の人で税金を全く払っていないコロンビアやメキシコのドラッグディーラーなどは含まれていません。これらの人たちは長者番付を横目で見ながら密かにほくそ笑んでいるかもしれませんが…。
トップはアメリカのインターネット販売会社“アマゾン”の社主ジェフ・ベゾスで、常勝のビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェットを抜き、個人資産は150ビリヨンドル=15兆ドル、年収は1分間に23万ドル(2,500万円相当;年112億ドル=1兆2,000億円相当)を稼ぎ出していることになります。一個人がこんな巨額の収入を得ていることは、いかに合法的であろうとも、社会悪のように感じます。
『フォーブス』誌の世界の億万長者リストで近年著しい傾向は、中国人の台頭です。100位以内に中国人が香港を含め11人もいるのです。“10セントホールディング”のポニー・マーさん、“アリババ”のジャック・マーさんなど、圧倒的にインターネット関連、インターネット通販を含め、IT関係が多く、私のように古い教育を受けた人間には、一体中国の共産主義はスーパーキャピタリズム、資本主義を超える、凌駕する超資本主義のように見えます。アラブ産油国の王様たちが貧乏に見えるほどです。
日本人も3人いました。ソフトバンクの孫正義さん(39位;227億ドル)、ユニクロの柳井正さん(55位;195億ドル)、ハイテックの滝崎武光さん(68位;175億ドル;キーエンス)です。
インターネットでの通信販売(なんだか古臭く聞こえますね)は、ジェフ・ベゾスやジャック・マーを例に挙げるまでもなく、非常に儲かる良い仕事のようです。ジェフ・ベゾスがインターネット通販を始めたのは自分が読み終わった本をインターネットで売ったのがきっかけで、問い合せが多いのに驚き、友達の本、図書館からの払い下げなどに手を広げて行った末、世界のアマゾンになったというのです。
今ではアマゾンを通じて買うことができないモノは、核兵器とヘロイン、コカインなどのドラッグだけだと言われるくらいになりました。西海岸のシアトルに本部を置いていますが、東部、ニューヨーク、ボストンにもセンターを設置することになりました。そして、日本、中国市場も視野に入れ、日本支社を開くことも想定していると言いますから、アリババ、楽天も安心していられません。
アメリカではサンクスギビング明けの金曜日を“ブラックフライデー(黒い金曜日)”と呼び、1年中で一番大きなショッピングデーです。デパート、ショッピングモール、大きな家電屋さん、スポーツ用品店などの前に、前夜からキャンプまでする、バーゲンハンター(大売出しを狙うお客さん)が出るほどで、早朝に店のドアを開けると、ドットばかりに店内に駆け込み、狙いの商品をいくつもカートに積み込む風景が年中行事、風物誌になっていました。ですがここ数年、徹夜組が寒空の下早朝に長蛇の列をつくることが少なくなりました。
今まで“サイバーマンデー”と呼ばれていた、サンクスギビングの週末明けの月曜日から始まっていたインターネット・バーゲンセールが“ブラックフライデー”を食ってしまったからだと説明されています。ウォルマートでアルバイトしている私の生徒さんも、普段の日より少し忙しい程度だったと言っていました。何もわざわざ徹夜したり、長い行列を作り、何時間も持ち、争うようにショッピングをしなくても、同じような値段かもっと安く、しかも消費税なし、送料無料でインターネットで買う方が特だということでしょうね。ますます、ジェフ・ベゾスやジャック・マーさんが儲かるゆえんです。
アメリカの“アマゾン”と中国の“アリババ”はこれから激戦になり、競争相手になるとみられていますが、両者とも非常に冷静で、“アリババ”のジャック・マーは、「トレード・ワーほどバカげたことはない」とまで言い切り、自由競争を大歓迎していますし、ジェフ・ベゾスも、「インターネット通販は一種の虚業で、次なる新たな波に飲み込まれる危険性がある」と堅実な製造業でない危険性を漏らしています。
柄にもなく、私には縁のない世界の大金持ちのことを書いてしまいました。
-…つづく
第591回:禁酒法と順法精神
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