■めだかのスイスイあまぞん日記~~ゆったり南米ブラジル暮らし

夏川めだか
(なつかわ・めだか)


仙台市広瀬川にて誕生。その後利根川、井の頭公園の池、ダブリンのギネスビール、多摩の浅川などを転々とし、さらなる新天地を求めて、ついに世界第一の流域を誇るアマゾン川へ流れ着く。



第1回:アマゾンでジャングル暮らし?
第2回:こんなとこに住んでいます。
第3回:ゆるゆるモードにはまる。
第4回:「おんな」を満喫!
ブラジル人女性。

第5回:漢字が流行ってます。
第6回:買い物もひと苦労?
第7回:選挙もお祭りなのね
第8回:アマゾンのサムライたち
第9回:市民の足は爆走バス
第10回:こんなものを食べてます-その1
第11回:音楽と騒音の境界線?
第12回:あやしいポルトガル語講座

■更新予定日:隔週木曜日

第13回:さらにのんびり郊外暮らし

更新日2005/04/07


こんにちは、めだかです。

今こちらはちょうど雨季の真っ最中で、毎日ドシャドシャ雨が降っている。アマゾンに四季はないけれど、いちおう12月から4月頃までの雨季が冬と呼ばれている。乾季のスコールは1日1回でしかもほんの短時間ですぐ青空に戻るのに、今の雨は1日に何度か降り、ちょっと長めで激しく、やんでもあまりスカッと晴れてくれない。最低気温が25度以下の日も多く、肌寒く感じるくらい。やっぱりアマゾンは暑い方がいいなぁと思う今日この頃…。

ところで少し前になるけれど、ベレンのアパルタメントから郊外の街に引っ越してきた。以前住んでいたところはベレンの六本木(!)とも呼ばれ、周りには高層マンションが建ち並び、洒落たレストランやクラブもあり週末の夜などはずいぶん賑わっていたし、市バスでどこでもすぐ行けるので便利な場所だった。それが今度はベレンからバスで1時間以上かかる、言ってみれば東京都下のナントカ町という感じの土地の住人となったのだ。


アパルタメントの窓から見たベレンの夜景。

もともと前の部屋もたまたま空いていたからという理由で住んでいたので、それほど名残惜しさも感じなかった。いくら流行の店があるからと言ってもそんなに行くわけでもないし、せっかくアマゾンに住んでいるのにあんまり都会ばっかりでもなーとも思ってたのでちょうどいい機会だった。

今住んでいる街はベレンから内陸方面に40キロほど行ったところにある。熱帯の濃い緑を両側に見ながら国道をひた走って来るバスから降り立ってみると、周りに高い建物は一つもなく、ほとんどが平屋で2階建ても少ないくらい。人口は5万人いるそうだが、え、どこに? と聞きたくなるほどこじんまりした中心地(セントロ)だ。街の中はどこも歩いて行けてしまう範囲でほぼ真ん中に大きな広場と教会がある。

小さいながらもスーパーが数軒あって、食料品から日用品までいちおう一通りのものは買える。食料品を買うのなら市場(フェイラ)もいい。営業は平日と土曜日の午前、屋内の売り場には野菜、肉、魚がそろっている。鶏肉売り場には活きのいいニワトリがいっぱい。「鶏肉くださーい」と頼むと、「あいよ」っとその場でカゴから出して、絞めて、羽をむしって、内臓を取って渡してくれる(ひー)。大型スーパーでパック入りの肉を買うのとは大違い。

うれしいのは、朝近所のパン屋さんで焼きたてパンを買えること。ベレンにもパン屋さんはあったけど、いちいちエレベーターで降りていくのも面倒で買い置きのパンで済ませていた。今は歩いて2分のところにお店があり、朝早くから開いていて地元の人たちもみんな朝食用に買いに来ている。袋に入れてもらったパンの温かさにはいつもシアワセを感じてしまう。

そしてメインストリートには小売店がずーっと並んでいる。薬局、洋品店、文房具店、家具店、雑貨店、美容院etc。道端には果物やジュースの屋台も出ている。銀行や郵便局、コピー・FAX店、携帯電話ショップなど生活に必要なものはだいたいそろっているし、特に不便は感じない。ちなみに店は12時になるとどこもかしこも昼休みのために閉まってしまう。しかもたっぷり2時間。まぁ一番暑い時間帯でもあるし、外に出歩く人もいないから問題はないのだろう。

この街からベレンへ通勤する人も多く、ベレン行きのバスは朝の5時から夜10時過ぎまで運行している。ほぼ始発なのでだいたい座れるから助かる。それから近場の移動にはMOTOタクシーというバイクの後ろに乗せてくれる形式のタクシーが何台も待機している。風を切って走るのは気持ちよさそうだけど、ヘルメットもかぶらずサンダル姿でというのはちょっと怖いかも…。


木陰でお客を待つMOTOタクシーの運転手さん。

いいなと思うのは夕涼みの習慣。ギラギラの太陽が沈む頃になるとポツポツと各家の前に椅子が登場してきて、みんな座っておしゃべりしたり、道行く人をぼーっと眺めたりしながら涼んでいるのだ。家の中より外の方が風があって気持ちがいいし、そうして座っていれば知り合いが通ったり、友だちが立ち寄ったりして、なんだかんだと楽しいのだろう。

外に椅子を出して夕涼みなんて、「サザエさん」のマンガで見たことがあるくらいで、ニホンでそんな風に暑い日の夕方を過ごしたことはなかった。ここではそうやって人々が家の外にいつも出てるから、都会のように隣人の顔も知らないということはありえないし、近所の人たち同士の距離が近いように思う。それにゆったりしていてなんだかうらやましい。

そして週末の夜ともなれば、セントロの広場には大勢の人たちが集まってくる。縁日風の出店や屋台もたくさん登場し、屋外バーも大盛況だ。特にイベントがあるというわけでもなく、ただみんなでおしゃべりするためだけに集まってきているみたい。思い思いの場所に突っ立ったまま楽しそうに笑っている若者の集団がそこここに見られる。治安の悪いベレンの中心地ではちょっと見られない光景で、そんな姿を見ていると平和だなぁと微笑ましくなる。

というわけで、ベレンよりさらに時間がゆっくり過ぎていくこの街は木々の緑が美しい、暮らしやすいところです。


静かな道路沿いに平屋の家並みが続く。

 

 

第14回:アマゾンのオタクな人びと