第358回:流行り歌に寄せて No.163 「花はおそかった」~昭和42年(1967年)
波瀾万丈な来し方をしている、そして才気溢れる人である。美樹克彦、昭和23年10月22日生まれ、もうすぐ古稀を迎える。
5歳の時に、生まれ育った京都の劇団「ペチカ」に入団したのが、この人の芸能活動のスタートだった。小学校から中学校にかけて、子役として映画に70本ほど出演するほどの才覚を発揮した。
その他に歌のレッスンにも通い始め、中学2年生の時に上京し、四谷一中に転校した。それからまもなく、本名の目方誠名義で『トランジスター・シスター』でビクターレコードからデビューしている。(これは洋楽曲で、他にも飯田久彦がカヴァーして歌った)また並行して、役者として多くのテレビ映画にも出演していた。
その後、日大鶴ヶ丘高校2年生の時に、日本クラウンから、初めて美樹克彦名義で『俺の涙は俺がふく』で再デビューを果たす。そして『回転禁止の青春』のヒットで世の中の多くの人々に、その存在を知られるようになった。
すでに3回結婚して、3番目の奥さんともに別居中。本当にモテるタイプだと思う。あのヤンチャぶりに女性は彼を放っておかないし、ヤンチャゆえ、自分からも女性を放っておけず、追いかけるのだろう。
現在でも日焼けサロン通いを日課にしているという。いつまでも、自分に花があることを大切に守り続ける、芯からの芸能人気質の人のようだ。
「花はおそかった」 星野哲郎:作詞 米山正夫:作曲 重松岩雄:編曲 美樹克彦:歌
(台詞)
こんな悲しい窓の中を
雲は知らないんだ
どんなに雲が晴れたって
それが何になるんだ
大嫌いだ 白い雲なんて!
1.
かおるちゃん おそくなってごめんね
かおるちゃん おそくなってごめんね
花をさがして いたんだよ
君が好きだった クロッカスの花を
僕はさがして いたんだよ
かおるちゃん おそくなってごめんね
かおるちゃん おそくなってごめんね
君の好きな 花は 花は 花は おそかった
2.
かおるちゃん 君の白いその手に
かおるちゃん 君の白いその手に
花を抱かせて あげようね
君と夢みた クロッカスの想い出
花を抱かせて あげようね
かおるちゃん おそくなってごめんね
かおるちゃん おそくなってごめんね
君の好きな 花は 花は 花は おそかった
(台詞)
信じるもんか!
君がもういないなんて・・・
僕の命を返してくれ
返してくれよ!
君の好きな 花は 花は 花は おそかった
バカヤロー!
「君と夢みたクロッカスの想い出」とは、どんな意味なのだろう。
ギリシア神話の中にもクロッカスが登場する話が何通りかあって、イメージをしっかり持つことができない。話によってクロッカスに変わる前の姿が、男性のものもあり女性のものもあるという。
しかし、それらはいずれも悲恋であることは共通で、花言葉もそれに呼応するように暗く、悲しいものが多い。
クロッカスの花言葉、それは花の色によってまちまちのようだ。黄色のクロッカスの花言葉は「私を信じて」、紫色では「愛の後悔」、そして、白や赤などその他の色は「青春の喜び」「切望」「裏切らないで」「あなたを待っています」など。
『花はおそかった』が、もし花言葉を意識しているとすれば、「裏切らないで」「あなたを待っています」あたりだろうか。しかし、その花を探していたことによって臨終に立ち会えなかったというのは、悲しすぎる気がする。作詞家の星野哲郎はどこまで意識していたのだろうか。
さて、長い間テレビ出演のなかった美樹克彦が、久しぶりに元気な姿を見せてくれたのは、昭和57年、『オレたちひょうきん族』の中の“タケちゃんマン”のコーナーだった。ビートたけし演じるタケちゃんマンの、敵役である明石家さんまのブラックデビル。彼のテーマ曲『好きさブラックデビル』を山田太郎とともに歌っていた。
-…つづく
第359回:流行り歌に寄せて No.164「世界の国からこんにちは」~昭和42年(1967年)
|