第308回:アジア系だけに狭き門の大学システム
アメリカの大学は、どこでもとてもスポーツが盛んです。一番人気はアメリカンフットボールで、それに続くバスケットボール、バレーボール、野球もそれはそれはたくさんのチームの部員を抱えています。
フットボールのホームゲームともなると、町中こぞって応援に駆けつけ、一体こんなにたくさんの人がこの小さな町のどこに住んでいたのかしら…と思わせるほど、スタジアムが満杯になります。
スポーツチームはバスをチャーターしてあちらこちら遠征しますから、選手たちは授業を公式的にサボルことになります。そんな時、選手たちは、一応、これこれの試合のため欠席しますというような、そのスポーツチームの監督さんのサインが入った欠席届けを持ってきます。
そのような欠席届けをどう扱うかは、その授業を受け持つ先生個人の裁量に任されることなるのですが、先生たちの中にもスポーツファンがたくさんいて、欠席を認め、欠席している選手たちに甘い点数を付けるのが慣習になっています。
私は、普通の欠席と全く同じように扱い、かえって他の先生から変人のように思われています。半分近くの授業に出てこないで、何を学ぶことができるのか…というのが私の信念です。 欠席したスポーツ選手には、個人指導や家庭教師を学校が雇い、欠席した分の授業やら、また試験の前に特別に教えるシステムをとっています。
このように、アメリカの大学では、私の働いているような地方の大学ですら、スポーツの選手は特別扱いで、授業料、寮費、奨学金という名前の報奨金など、とても優遇されています。 というのは、スポーツが大学にとって大きな財源になっているからです。
スポーツチームを維持するのに、ユニホームや器具、移動費、そしてホテルなど、大変なお金がかかりますが、それをカバーしてもたっぷりオツリが出るくらい、大学のスポーツは儲かる、美味しい事業になっているのです。
財源として大きいのは入場料だけでなく、先輩やその町の企業からの寄付金です。そうなると、寄付金をたくさん集めるためにも、大学はスポーツに力を入れ、教授の何倍もの給料を払って、優秀な監督を呼ぶことになります。
まだ、地方の田舎の大学までは影響が及んでいませんが、学研的にもスポーツでも有名なアイビーリーグなどの大学では、かなり深刻な問題が表れてきてます。半ばプロ化したスポーツ選手が全学生の30%近く占めるようになると、選手たちの皆が皆馬鹿だとは言いませんが、大学全体のレベルが著しく下がる上、普通の学生さんが入学できる数が少なくなってしまいます。
代々、多額の大学に寄付をしている家の息子や、娘も入学させなければいけませんから、普通の学生さん、とりわけ貧乏な学生さんにはイヨイヨ狭き門になります。今、東部の有名大学の授業料は学部によって異なりますが、6万ドルから9万ドルくらいです。とても普通のサラリーマンが払える金額ではありません。
大学では優秀な生徒さんをとても欲しがってはいるのですが、彼らに与える奨学金が少なく(スポーツ選手に比べると、まさに天と地の違いがあります)、そのしわ寄せはマジメで優秀なアジア系の生徒さんに行くことになります。
『Time』誌(2013年4月15日版)の記事によりますと、同じ大学に入学するために、アジア系は普通のアングロサクソン、コーカソイド系の白人より140%以上良い点数を取らなければならないと、はっきり書いています。
日本でもなじみ深い、カリフォルニアのバークレイ校では40%がアジア系です。ニューヨークにある一種の受験予備校的なスツイヴァサント高校で、数学と読み書き(もちろん英語です)のテストを通過できる72%はアジア系です。数学、科学オリンピックで入賞する子供たちの70%はアジア系なのです。
これは優れた有名校に限った現象でしょうが、アジア系だろうが何系だろうが優秀な生徒の入学を制限して、スポーツ選手ばかり増していることが、その大学自体、自らの首を絞めていることに気がつかないのかしら。
私の大学でやっと、誰でも入学させ、その後にフルイにかけ落としていく方式から、入学時にハードルを設け、生徒さんを選んで入学させるようになりました。東部の有名校に入ることができなかった優秀なアジア系の生徒さんが、たくさん来てくれるといいのですが……。
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