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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第414回:求職活動とジョブ・フェアー

更新日2015/05/21



もうすぐ学年が終わり、卒業式の季節です。学生さんにとっても、私たち教職にある者にとっても一番忙しい季節です。学生さんが引きも切らさず私の事務所を訪れ、就職や他の大学の大学院に進学するための推薦状、奨励状を書いてくれ…と押しかけてきます。

両手を挙げて推薦できる生徒さんばかりならいいのですが、どうしようもない、とても推薦できない生徒さんも沢山いますから、そんな生徒さんには学研的なことは言わず、触らず、性格がとても良い(勉強ができない)、人間関係を上手に保つ(授業中おしゃべりばかりしていて、集中力がない)、好きなことを一生懸命こなす潜在能力がある(ゲームをやり、アニメばかり見ている)と書いたりで、私にもそれなりの苦労があるのです。

日本の大学では、就職のお世話をする専門の職員、課があり、そこへ企業も求人広告、内容を持ってきたり、教授のところへも優れた卒業生を回してもらえるよう企業がツテを求めてアイサツにきたりする…そうですが、アメリカの大学ではまず、全くと言ってよいほど就職の世話をしません。学生さんはすべて自分で勤め先を見つけ、自分で求人内容に従い応募しなければなりません。大学は卒業生の就職に関知しないのです。

小、中、高等学校の先生になるコースや看護婦さん、工学技術系などのように資格がはっきりしている生徒さんは的を絞れますが、沢山いる英文科、経済、商業の卒業生は大変です。今年卒業する英文科の女学生は、ポルノのブログ、コピーライト、宣伝を書く仕事に就きました。何でも急成長している会社で、初任給は定年間近の私よりも高額なのです。私も老後の転職を真剣に考えなければなりません。でも、そんな会社は若い新鮮な感覚を持つライターが欲しく、お婆さんは採らないのでしょうね。

秋から冬、そして早い春に、盛んにジョブ・フェアー(就職展覧会?)のような催しがキャンパス内とか町の展示場で開かれます。広大な会場に様々な会社がスタンドを設け、カラフルなカタログを積み重ね、その会社は人事課の社員を派遣し、会社を売り込むのです。その中に必ずと言っていいほど、大きなアメリカの旗を飾った、海軍、陸軍、海兵隊、空軍などのスタンドも出展します。

ジョブ・フェアーも次第に分野別に、ハイテック関係だけの展示会、医療関係のもの、教育、出版関係と分かれて開かれるようになってきました。

近年、インターネットで職探しをする学生さんがとても多くなってきました。ジョブ・フェアーに出展する会社はすべて、インターネットでも求人広告を出しているので、労働条件などを、他の会社と即座に比べることができるし、インターネットで会社に願書を出すことができます。 第一次の面接はほとんどビデオ面接です。スカイプなどのイメージが映るコンピュータ(私たちの大学にあるコンピュータ数百台、すべて小さなカメラがついていて、ビデオ会議に対応できるようになっています)で、生徒さんは身なりを整え、背景を考え、その時間に小さなレンズの前に座り、面接を受けることになります。大学の先生の求人面接もそのようにして行います。

そして、それにパスすると、本当の面接になります。これは本社まで生徒さんが出向きます。 アメリカは広いので、大きな会社では数箇所、東部、中西部、西部などの地域別に行なうこともあります。その費用、旅費、宿泊費などは会社が負担します。そして、後は結果待ちということになります。ですから、一つの企業が新卒の学生さんを広大な会場に集めて一斉に入社試験を行う光景は見られません。

求人が多い仕事はレントゲン技師、ソノグラム技師、看護婦などの医療関係で、給料も良く、初任給で年収6万ドル(700万円くらい)以上です。 コンピューターのエンジニア、WEBページのデザイナーも求人の多い分野で、しかも初任給を8万ドル以上出す会社が沢山あります。また、インターネットでの販売も急成長グループです。 常に需要はあるけど、給与の低い仕事はホテル、デパート、スーパー、ファーストフードなどのサービス業です。そのような仕事は、初任給で1万8,000ドルくらいですから、医療、ハイテック関連とは初めから大変な差があります。

大学の私の部屋に飛び込んで来て、"センセイ、私、ドコドコに就職決まったよ~"と大きなニコニコ顔で報告に来てくれる生徒さんもいます。

生徒さんが育っていき、プロの仕事に就くのを見ると、「がんばって卒業しただけのことはあったでしょう、良かったね、おめでとう!」と心からお祝いしてあげたい気持ちになります。

 

 

第415回:ジャンク・コレクターの救世主

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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